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守屋光嗣 text by Koji Moriya  
[2006.06.10]

吉田都が踊った「リーズの結婚」

 昨シーズンに続いて、フレデリック・アシュトンの傑作コメディ・バレエ、『リーズの結婚』が4月から5月にかけて上演された。今回は、ロール・デビューを果たしたサラ・ラムやラウラ・モレイラの評価も高かったようだが、リーズ役は初日を飾った吉田都のもの。

  吉田が舞台に登場してから、カーテンが降りるまで舞台の上のみならず、ロイヤル・オペラ・ハウス全体が吉田から感じられる可憐な村娘、リーズの幸福感で満 ちていた。前述のテレグラフ紙の質問で、最も好きな役は『リーズ』とこたえていたように、演じているといった不自然な動きは全くなく、すべての振付、マイ ムのシーンが吉田の中に生まれながらに備わっているような踊りだった。リボン・ダンスのシーンや、最後のパ・ド・ドゥと一つ一つ挙げるより、すべてが素晴 らしい、と。

そんな中でも特に観るたびに驚くのは、彼女の表現力の豊かさ、繊細さ。例えば、第2幕、シモーネに家に閉じ込められ、寂しそうにうつむいている所から、 やがて愛する人との将来を思い描く場面。うつむき加減の顔から、本当に少しずつ、少しずつ表情が明るくなる。リーズが思い描く幸せが、観ているこちらにも 自然に伝わってくる。

「リーズの結婚」吉田都
写真は数シーズン前のもの


吉田の相手は、ロイヤル・バレエに移籍して3年目になるヴィァチェスラフ・サモドゥロフ。昨年のロール・デビュー時はかなり硬かった表情・動きだが、2 度目とあって余裕が生まれたようだ。その所為もあってか、前回は観ることがなかったワガノワ・アカデミーで培われてきたであろう彼本来の動きの美しさが自 然と前面に出てきたようだ。特に着地直後や、一つ一つの動きを決める場面での姿勢の美しさは、彼の特徴としてもっとアピールしてもいいのではないかと思 う。
吉田とサモドゥロフが踊った二日とも、シモーネ未亡人はウィリアム・タケット、アランはホセ・マーティンと、芸達者が勢ぞろい。特にマーティンの、仲間 はずれにされるものの悲哀が感じられる演技・表情には、ここにもロイヤル・バレエの伝統がきちんと受け継がれているのを感じた。


第2幕

ハーヴェストのシーン

吉田都