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守屋光嗣 text by Koji Moriya  
[2006.06.10]

エドワード・ワトソンの『ジゼル』

  4月後半の2週間に渡って計6回、ピーター・ライト版の『ジゼル』が再びロイヤル・バレエで上演された。3キャストが配されていたが、バレエ・ファンの注 目はダーシー・バッセルと、エドワード・ワトソン(相手はリアン・ベンジャミン)のロイヤルのメインステージでの古典バレエの主役デビューに集まった。
初日、バッセルの体調が万全でなかった、ということを聞いていたのだが、2日目の舞台では身体的な問題はなかったようだ。バッセルが演じるジゼルは、正 直な所、第1幕の村娘のイメージからはちょっと外れる印象は否めなかった。都会的、もしくは燦然と輝くプリンセスのイメージが強いからだろうか。技術的に は、なんの問題もなく、さらに昨秋の『マノン』のときから感じていたのだが、演技面での深みを感じた。特に、第1幕のピーク、「狂乱の場」での細やかな表 所の変化は、無垢な心と愛する人に裏切られてずたずたになった心の間の葛藤を見事に表現していた。

「ジゼル」イメージ写真
モデルはバッセル
  第2幕は、バッセルのキャリアの中でも、素晴らしい舞台の一つに数えられるのではないかと確信するほど、質の高いものだった。アルブレヒトにロベルト・ ボッレ、ミルタにセナイダ・ヤナウスキー、ヒラリオンにティアゴ・ソアレスと役者もそろい、これ以上ないくらい幽玄の美しさを湛えた舞台だった。

本拠地、ロイヤル・オペラ・ハウスのメイン・ステージで古典バレエの主役を演じないままプリンシパルに昇格したエドワード・ワトソン。今回のアルブレヒト・デビューは、本人にどんな想いを抱かせたのだろうか。

「ジゼル」2006年1月の公演から
ロホ、アコスタ、ヤナウスキー
  31歳になるまで古典バレエを踊ることがなかったのは、カンパニーの判断ミスだろう。それを踏まえて、本人にとって難しいと思われる点は、経験を通して 培ってくる役へのセンスが不足していたことだろう。第2幕、アルブレヒトのヴァリエイションの後半に差し掛かって、ワトソンの体力ががくんと落ちたように 見えた。ヴェテランのベンジャミンが相手ということもあって、失敗とまでは行かなかったが、夜明け前のシーンでのパートナリングは、一瞬動きが遅れて冷 やっとしてしまった。反面、第1幕では、腕の動かし方、ステップの運び方は大変美しかった。来シーズンは、年末に『くるみ割り人形』、2007年になって 『白鳥の湖』があるので、ワトソンが王子役を観る機会が増えることを期待している。