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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2006.01.10]

ピーター・ライト版『くるみ割り人形』

2005/06シーズン、3年ぶりにロイヤル・バレエはピーター・ライト版の『くるみ割り人形』を年末年始に持ってきた。クリスマス、と言えば矢張り『くるみ割り人形』なのだろう、クリスマス前の公演はすべて、早々と完売になる人気ぶりだった。
幕が上がり、舞台がシュタールバウム家の居間になると、ロイヤル・オペラ・ハウス全体が、これから始まる夢物語に一気に引き込まれたようだった。隅々ま で考えられたセットは、バレエファンではなくても、クリスマスの伝統と、人々がどれほどクリスマスを楽しみにしているのかが一目でわかる、素晴らしいもの だ。

第1幕では、ロイヤル・バレエ・スクールの生徒たちが舞台を元気よく、かつダンサーの卵としての気品をすでに感じさせる動きでクリスマスの賑やかな、そ して暖かな雰囲気を高めていた。後半、ねずみとおもちゃの兵隊との戦いの場面でも、彼らは大活躍。将来、彼らの中から、ロイヤル・バレエの看板になるダン サーが生まれることは間違いない。
第2幕に入ると、舞台は夢の王国。様々な踊りが繰り広げられたディヴェルティスメントでは、ロイヤル・バレエのダンサーの古典バレエへの愛情が熱く感じられた。エンターテイメントとして、芸術として素晴らしい舞台だった。

イオナ・ルーツ

 

ギャリー・エイヴィス

今回の上演では、「シュガー・プライム・フェアリー」は8人。ロイヤルの意気込みとダンサーの豊富さが判る中、その初日を飾ったのは吉田都。各新聞の ファースト・ナイト・レヴューでは、他のダンサーへの苦言はあっても、彼女へは賞賛のみ。あるレヴューでは、「吉田はまるで古典バレエのボルシェ」と。
初日は、リターン・チケットが全くでない状況で観ることが出来なかった。26日が吉田の二日目だったのだが、彼女は怪我で降板。本人が一番辛いことだろう。怪我からの回復が早いことを祈るのみ。
吉田の代わりを務めたのは、アリーナ・コジョカル。彼女とフェデリコ・ボネッリのコンビは、この夏の「インスパイアード・バイ・アシュトン」での『エン グラム』(マックグレガーがコジョカルに振付けたもの)以来だったが、観客からの期待に充分にこたえる完成度の高いものだった。
コジョカルはアダージョの場面では、ギリギリまでためる前に少しからだが動いてしまうようにも見えた。が、それ以外ではチャイコフスキーのスコアを自分 の一部にしていると思わせるほど、音楽との一体感を見せていた。また、昨シーズンは何を踊っても、「踊りは素晴らしい、でもトゥシューズの音が」と必ず書 かれてしまっていたが、26日の舞台では足音が気になることはなかった。


吉田とボネッリ

吉田都

吉田とボネッリ

プリンスを踊ったボネッリは、ノーブルな王子役として最高の笑顔を絶やすことがなかった。踊りも、コジョカルをひき立てることを忘れず、また自身のソロパートでも洗練された動きが途切れることはなかった。
さらに、シーズンが始まって以来感じていた、ファースト・ソロイストの踊りのレヴェルが格段によくなっていることを改めて確認した舞台だった。26日 は、12人中9人のファースト・ソロイストが舞台を彩った。中でもリカルド・セルヴェラ(ハンスーピーター)、ダアイドラ・チャップマン(薔薇の精)、イ ザベル・マックミーカン(アラビアン・ダンス)は舞台にいるだけで、観客の目を惹き付ける魅力を放っていたように思う。