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船引怜美 Text by Remi Funabiki  
[2005.07.10]

●ロイヤル・バレエ、野外放送公演「スターズ・オヴ・ロイヤル・バレエ」

6月8日、ロイヤル・バレエ夏恒例のイベント、野外生 中継公演が行われました。このイベントは、ロイヤル・オペラ・ハウスでの公演が野外会場に設置された大スクリーンに中継され、誰でも無料でロイヤル・バレ エ/オペラの公演を鑑賞することの出来るスペシャルイベント。今回はロンドン トラファルガー・スクエアーをはじめ6都市(リバープール、マンチェス ター、バーミンガムなど)で、「スターズ・オヴ・ロイヤル・バレエ」と題されたトリプル・プログラムが生中継されました。

幕開きを飾ったのは、アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボー主演によるアシュトン『ザ・ドリーム』。何よりも衝撃的だったのはアリーナの演技/表現力の変 化でした。5月の公演では冷たいイメージの役作りが気になったのですが、今公演では少年の肩に手をのせる、オーベロンに歩み寄るなど、どんな仕草からもタ イターニアの女性らしい温かみが感じられました。技術的な面でも落ち着いた感じが見られ、前回の上演から約1ヶ月間でこんなにも役柄解釈と表現力を発展さ せることの出来る、アリーナの無限大の才能に驚かされました。

『ザ・ドリーム』


2作品目はブルースの『スリー・ソングス、トゥ・ヴォイシィズ』。5月の初演時は完全なるアブストラクトに見えたこの作品にも、主演3組(ヤノウスキー& エイヴィス、ロッホ&ステパネク、チャップマン&セルベラ)のそれぞれ異なるドラマが見えるようになり、その男女間の関係が激しいムーブメントに濃厚に映 し出され始めました。とりわけチャップマン&セルベラのデュエットは、支配的な男と何か満たされずに苦しむ女という男女関係が鮮明に見られ非常に印象的で した。ダンサーの動きも一段と滑らかになり、改めてブルースの振付の芸術性とダンサーのムーブメントの美しさに感動を新たにしました。


『シンフォニー・イン・C』
最後を飾ったのはバランシンの『シンフォニー・イン・ C』。このスペシャルナイトをスペシャルにしたのはやはりこの作品でした。第1・3・4楽章はアレグロなのに対し唯一のアダジオである第2楽章。テクニッ クで観客を魅了する他の3つの楽章と違って、バレリーナそのものの魅力がものを言う第2楽章は『シンフォニー・イン・C』の中で最も重要な楽章と言えま す。その第2楽章、RBの象徴ダーシー・バッセルとジョナサン・コープが舞台に登場するだけで劇場全体を包み込む空気が変わったような気がしました。ダー シーの愛らしい笑顔とダイナミックでありながら気品漂うムーブメントはまさにダーシー・マジック。観ている者を完全に陶酔にさせました。続く第3楽章はラ ウラ・モレラがスパークリングなジャンプとハイスピードなピルエットで夢見心地だった観客を目覚めさせ、第4楽章サラ・ランムの独楽のようなシェネや喜び 溢れるステップに、舞台のボルテージはコーダに向けて一気に上がっていきました。オーケストラもフィナーレに近づくほどに加速されていき、4バレリーナ (ガリアッツィ、バッセル、モレラ、ランム)揃ってのクライマックスには、瞬きも出来ない緊張感と胸がはちきれそうな興奮に劇場全体が包み込まれ、一糸乱 れぬ大フィナーレで感動の舞台は幕を閉じました。
(2005年6月8日、ロイヤル・オペラ・ハウス)