ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2005.07.10]

●ジョージ・パイパー・ダンシィズ、最新作『ネイキッド Naked』

バレエ・ボーイズことマイ ケル・ナン&ウィリアム(ヴィリー)・トレビット率いる、ジョージ・パイパー・ダンシィズ(GPD)初のフルレングス作品『ネイキッド Naked』がサドラーズウェルズで上演されました。今まではマリファントやフォーサイスなどのコンテンポラリー小品を上演してきたGPDは、昨年7月に はTVシーリーズを通して振付に初挑戦し、その次なる挑戦としてフルレングス作品の発表となりました。踊りを通して物語を伝えることを常としていたバレエ ダンサー時代から一転して、アブストラクトなコンテンポラリー・バレエ、ダンスを追い求めてきたGPD。古典バレエに戻るのではなく彼らがGPDとして作 り上げてきた独自のスタイルで、ナラティブな作品をと言うコンセプトの元、3組の男女間で入り乱れる関係―裏切りと復讐―を描く『ネイキッド』を発表しま した。

『ネイキッド』、そのタイトルや公演ポスターからは濃厚な男女関係の描写が予想されましが、実際の舞台は残念ながら何か物足りない印象となってしまいまし た。それぞれの男女間の関係、3組の人間関係、ストーリー、振付スタイル、コンセプトすべてに言葉を濁したようなどこかしっくりこない印象を覚えました。
マイムやあからさまな感情表現を使って物語を展開することを避け、ピュア・ムーブメントで感情変化や人間関係やドラマを描写しようとしたことは伺えます が、それを可能にするにはあまりにもムーブメントのヴォキャブラリーが乏しいように思えます。シフォンのドレスにハイヒールの3人の女性がフェミニンな雰 囲気を醸し出して歩き回る振付、ドリス・デイやパッツィー・クラインなどのオールディーズをバックに、切なさのにじみ出るダンスを踊る点などからはピナ作 品のような印象を受け、オリジナリティーを見出すことは出来ませんでした。

しかしマイケルとヴィリーが観客を満足させないまま幕を下ろすわけはありませんでした。クライマックス、カウントダウンするデジタル時計のプロジェクショ ンの前での2人の男(マイケル&ヴィリー)の1人の女をめぐる争い(デュエット)は緊迫感と迫力に溢れ、作品の中で最もドラマティックな瞬間でした。彼ら の驚異的なコントロール力は、喧嘩のシーンをスローモーションで見るようなムーブメントを可能にさせ、力強いジャンプやスピード感あるターンからは2人の 男の闘争心が見られ、改めてマイケルとヴィリーのダンサーとして実力に興奮を覚えました。

豪華なプロダクションチーム(ボブ・クロウリーの舞台美術、パウル・コンスタブルとマイケル・ハルスの照明、写真家ヒューゴ・グレンディニングによるフィ ルムプロジェクション)と、GPD初の作品創作ということが必要以上に観る者の期待を高めてしまったために、非常に厳しい新聞批評が目立っています。しか し、マイケルとヴィリーがこれをばねに次回は期待を裏切ることのないものを創り出すに違いないと誰もが信じていることは確実です。
(2005年6月9日、サドラーズウェルズ)