ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2005.07.10]

●ネザーランド・ダンス・シアター 1 『ワン・オヴ・ア・カインド』

ネザーランド・ダンス・シ アター(NDT)1が久々のロンドン公演をサドラーズウェルズで行いました。オランダ憲法制定150周年記念に際して、オランダ政府からの創作依頼を受け たイリ・キリアン(当時NDT芸術監督)が振付けた『ワン・オヴ・ア・カインド』。3部構成のアブストラクトな作品は、どこか不気味でうまく言葉には言い 表すことの出来ない不思議な雰囲気を醸し出す舞台空間が何よりも印象的でした。

日本人建築家北川原温が手がけた舞台美術は折り紙を思い起こさせるシンプルさにもかかわらず、空間を支配するその迫力は言葉を失うほどに強烈な印象を与え ます。1幕から3幕までそれぞれ異なるデザイン(1幕:花道のような稲妻型の白い道と舞台奥の氷山のようなオブジェ、2幕:凧のような物体と空中を浮遊す る巨大な円錐、3幕:天に通じるような細く長い階段とのれん状の細かいチェーンのシャワー)には、ダンサーの身体と空間の関係が建築的に計算された精密さ が見られます。北川原の美術とミヒャエル・シモンによる照明デザインが創りだす舞台空間はこの世とは思えないほどにミステリアス。その空間に浮かび上がる ように存在するダンサーのムーブメントと彼らの身体に張り詰められた緊張感が、自分の身体に突き刺さるような感覚を覚えました。

 霧がたちこめる中、浮遊 するようなコントロールから稲妻が走るような強烈なスピードとパワーそして背骨の椎骨一つ一つの動きを強調する繊細さを要求するキリアンのムーブメント を、人間の自然な動作のようにこなすカンパニーダンサーの身体能力とテクニックの高さは圧巻でした。

振付、美術を含む作品構成、ダンサーのムーブメント、すべての点において、ここまで究極に研ぎ澄まされた完成度を持つ作品にはなかなかめぐり合うことは出 来ません。「NDT1どうだった?」という質問に対して、「amazing.....(すごかった…)」の一言しか即答としては答えることの出来ない、そ んな衝撃的な舞台でした。
(2005年6月14日、サドラーズウェルズ)