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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2005.06.10]

●マリアネラ・ニュニアスがオデット、オディール

アンソニー・ダウエル版の『白鳥の湖』が、上記の『オンディーヌ』とミックス・プログラムの上演の合間を縫うように5月7日~6月1日の間上演されました。

公演初日7日にオデット/オディールに予定されていたのはダーシー・バッセル。しかし、「怪我のため公演初日7日と10日の出演キャンセル」という発表が出され、 ダーシーの久しぶりのオデット/オディールを待っていたファンにとって非常に残念なキャスト変更となりました。

ダーシーの代わりにオデット/オディールを務めたのは、5月21日の公演でデビューが予定されていたマリアネラ・ニュニアス。 1999年の入団以来『ラ・バヤデール』のガムザッティやフォーサイスの『イン・ザ・ミドゥル・サムホワット・エレヴェイテッド』などで非常に高い技術と秘められた計り知れない可能性は常にアピールされてきたものの、 プリンシパル・ダンサーとしての彼女の存在を決定的にする舞台になかなかめぐり会えずにいました。 今シーズン、アシュトンの『シルヴィア』と『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』のタイトルロールで技術と表現力の伴った類まれなる実力を発揮し、現代のアシュトン・バレリーナとして大注目を集めました。 そのマリアネラの古典作品『白鳥の湖』デビューは、彼女の真のバレリーナとしての実力を見るべく機会として期待が寄せられました。

2日目の舞台となった5月10日の舞台では、予定よりも2週間も早いデビュー(さらに、経歴を見る限りでは今までに他のカンパニーなどで『白鳥の湖』を踊った経験のない)とは思えない安定感に非常に驚かされました。 そして何よりも衝撃だったのは完璧と言えるテクニック。 以前からマリアネラと言えば、ピルエットなどの回りものには120%の確実性と言うイメージがありましたが、その技術力の高さは、 天にすい上がるような伸びのあるピルエットや黒鳥のコーダで1回転おきにダブル・ピルエットをいれたフェッテなどで確実に実証されました。 表現力の点でも、第2幕―オデットがロットバルトの呪いで白鳥に姿を変えさせられているとジークフリードに説明するマイムは、 一言一言(ムーブメント一つ一つ)に重みがあり言葉以上に心に伝わるものを感じさせとても印象的でした。 さらに、パートナーとなったロベルト・ボッレとのパートナーシップも急なキャスト変更という事実を忘れさすほど安定していました。 独自の役柄解釈やその演劇的役作りを一つ一つのムーブメントに反映させるという点ではマリアネラのこれからの成長が大いに期待されますが、 彼女がこれからのロイヤル・バレエを代表する一バレリーナであることを多くの人が確信した舞台であったことは確かでしょう。

(5月10日、ロイヤル・オペラ・ハウス)