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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2004.12.10]

●オール・アシュトン・トリプル・ビル:『バレエの情景』、ディヴェルティスマン、『ダフニスとクロエ』

オール・アシュトン・プログラム:『バレエの情景』、『ダフニ スとクロエ』、「ディヴェルティスマン」(小作品集)が『シルヴィア』の上演と並行して11月13日~25日の間5公演行われました。RBではあまり観る ことのないガラ・コンサート形式の「ディヴェルティスマン」が最も注目されました。1939年~1976年に創作された6つのパ・ド・ドゥウは上演機会に 恵まれなかった作品が多く、貴重な体験となりました。

アシュトン版『眠れる森の美女』より「目覚めのパ・ド・ドゥ」では、ダーシー・バッセル&ジョナサン・コープの二人で寄り添いながら歩く姿からあふれ出るロマンティックな雰囲気に、劇場中がうっとりとさせられました。
『タイス パ・ド・ドゥ』ではボストン・バレエから移籍したサラ・ランムの叙情感と動きの繊細さに息を呑みました。アンソニー・ダウエルの現役時代の写真を思い起こさせるようなフェデリコ・ボネリの情熱と存在感にも感銘を受けました。


『眠れる森の美女』目覚めのパ・ド・ドゥ

『タイス』パ・ド・ドゥ

リン・シーモアによって初演された『5つのイサドラ・ダンカン風ブラームスのワルツ』をタマラ・ロッホが挑戦。類まれなる演技/表現力をもつタマラの演技 は非常に期待されましたが、重さを感じることのできないどこか表面的な踊りにがっかりしました。情熱の強さは大いに見られたものの身体の芯からこみ上げて くるようなエネルギーに欠け、イサドラの生き写しが見えてくるような強さはありませんでした。
アシュトンがバレエ・リュス・ド・モンテカルロに振付けた『悪魔の休日』は、ロンドン初公開となりました。女性の振付のように優雅で詩的なアームスと表現 が魅力の男性ヴァリエーションを、ヴィアチェスラフ・サモドゥロフが好演。ルルベからポイントを通りゆっくりと正座するという目を見張るステップでは、並 外れたコントロール力が目に焼きつきました。
花びらの舞い散る『春の声 パ・ド・ドゥ』(ヨハン・シュトラウス オペラ『こうもり』より)は、[リアン・ベンジャミン&カルロス・アコスタ] 、[アリーナ・コジョカル&ヨハン・コポー]がそれぞれ上演。リアン&アコスタ組みでは彼らの貫禄の存在感が印象的でした。まさにシュトラウスの 軽やかでありながらも荘厳なワルツを目で観るようでした。一方アリーナ&コポー組では作品が視覚的に与えるイメージそのもののまばゆさが印象的で した。花吹雪が舞うようなハイスピードのピルエット、そしてリフトの軽やかさは二人のパートナーシップの素晴らしさを象徴しました。

『5つのイサドラ・ダンカン風
ブラームスのワルツ』
『悪魔の休日』
『春の声』パ・ド・ドゥ

『バレエの情景』、『ダフニスとクロエ』では吉田都とアリーナ・コジョカルが交互に競演する興味深いキャストとなりました。ストラヴィンスキーの音楽に振 付けられたアシュトンの抽象バレエ『バレエの情景』では、吉田都の非常に軽やかで音楽的な踊りが印象的でした。抽象バレエからダンサー自身のニュアンスを かおり取ることは難しいように思いますが、彼女の1つ1つのステップには、アシュトンの振付のエッセンスを確実に残しつつもその中からふと香る彼女ならで はの表現力が見られました。私的にはずっと苦手だったこの作品の印象がまったく変わりました。一方アリーナの踊りはテクニック的な面のみ印象に残る表面的 な踊りが非常に残念でした。『ダフニスとクロエ』でも吉田都には、テクニックなどという観点を超越した表現力の豊かさが見られたものの、アリーナ演ずるク ロエはマクミラン作品となんの変わりの無い役作りにがっかりさせられました。
次々と作品が繰り広げられた今プログラムはお祭りのような華やかさがあり、アシュトン作品の幅広さを一気に見る事ができました。12月11日には BBC4(有料放送)にて11月17日の公演が放送予定されています。(2004年11月13・17・19日、ロイヤル・オペラ・ハウス、ロンドン



『バレエの情景』

『ダフニスとクロエ』