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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2004.11.10]

●「ダンス・アンブレラ2004」、黒田育世がロンドンデビュー

今 最も日本で注目される若手振付家、黒田育世率いるBATIKが『Side-B』(「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2003」受賞作品)と『SHOKU』(ソロバージョン)をザ・プレイスで上演(10月19・20日)。ダンス・アンブレラ(DU)&ロンドン・デビュー を果たしました。公演最終日は<しばし離れている日本のダンスはどうなっているのか?>という面持ちで劇場に足を運んだ日本人の観客が目立ちました。

『Side- B』 と『SHOKU』に共通するものとして、日本のホラー映画を連想させる不気味さ、おどろおどろしさ、人間の内面に潜む何かネガティブなもの、「少女・女で あること」が挙げられます。黒のワンピースにスニーカー、髪を振り乱しながらの激しい動き、スカートを捲り上げて下着姿を露出するなど、ケースマイケルの 初期作品(『ホップラ!』など)を思い起こさせます。しかしそれらが与えるイメージはケースマイケル作品からは決して感じることのできない、心にグサっと 刺さるような苦しさ・痛みを覚えさせます。それは私自身が同世代の一日本人女性として特別に感じるものなのか、それとも作品自体が訴えかけるものなのか分 かりません。取り付かれたように激しく足を踏みならしたり、身体を床に打ち付けたりの激しい断続的な動きは底知れないエネルギーと人間の持つ恐ろしさを感 じさせます。ヨーロッパの振付家作品では見ることのできない芸が細かい演出(照明、緞帳や小道具(懐中電灯など)使い)は黒田の才能を物語るものに思えま す。クラシックトレーニングの確実性を明らかに見せる黒田自身の踊りは、暴力的な動きの連続と不気味な雰囲気を漂わす作品の中でつかの間の安心感を覚えさ せます。ふと見せるアームスやラインの繊細さは少女・女の秘める美しさ・もろさの象徴なのでしょうか?

あるイギリスの新聞では厳しい評価が見られました。率直に言って、観る者の好き嫌いがはっきりと分かれる作品だと思われます。しかし黒田の作品が与える インパクトの強さは確実なものであり、今後どのように発展するか見守りたい振付家の一人と言えるでしょう。(10月20日、ザ・プレイス、ロンドン)