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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2004.11.10]

●ニューヨーク・シティー・バレエによる「ダンシィズ・コンチェルタンテ」

ニュー ヨーク・シティー・バレエ(NYCB)のダンサーによる公演「ダンシィズ・コンチェルタンテ」はNYCBレパートリーを観ることのできる機会としてここ数 年人気公演の一つです。今年はバランシン、マーティンス、ウィールドン、ミルピエの4作品がNYCBのプリンシパル、ソリスト17人によってサドラーズ・ ウェルズで上演されました(10月19~23日)。

最も深く印象に残った作品はクリストファー・ウィールドンがウェンディー・ウィーランとジョック・ソトに振付けた『リタジー Liturgy』。神秘的なアルヴォ・ペルトの『ヴァイオリンとピアノのためのフラトレス』に振付けられたパ・ド・ドゥは、まるで水の上の滑るかのような 動きの流れが印象的で、控えめでありながらも強い叙情感に満ち溢れていました。2人の調和をテーマにするパ・ド・ドゥはウィーランとソトのパートナリング の素晴らしさがすべてを物語りました。互いに溶け合うような動き、2人のムーブメント繊細さはとても心に残りました。

『リタジー』
ピエール・アンリの『扉とため息のためのヴァリエーション』に 振付けられた同タイトルの作品は、バランシン作品とは想像しがたいシュールで斬新な作品。アンリの音楽は扉がきしむ音や閉まる音と人のため息で構成されて いて、その音楽構成に基づき、扉を女性ダンサー(マリア・コロウスキー)、ため息を男性ダンサー(トム・ゴールド)として振付けられています。扉を演じた コロウスキーは舞台の上手・下手・センターの天井から釣り下げられている巨大な黒い幕をまとい(ロットバルトのようなイメージ)、バランシン特有のショー ガール的なムーブメントを繰り返します。そのイメージは『放蕩息子』のシレーンの支配的なイメージと非常に重なりました。一方ため息を演じたゴールドは獣 的に動き回り、まるで『ノートルダム・ド・パリ』のカジモドを思い起こさせます。コロウスキーの“バランシン・ボディー”とゴールドの優れた身体能力は非 常に印象に残りましたが、作品的には何かすっきりせず、奇妙な印象のみが残りました。

『扉とため息のためのヴァリエーション』
『ハレルヤ・ジャンクション』

その他、プリンシパル・ダンサーのベンジャミン・ミルピエの『サーキュラー・モーション』では、4人の男性ダンサーが高い技術を見せながらも、作品の主張 をまったく見ることが出来ませんでした。ピーター・マーティンスの『ハレルヤ・ジャンクション』はバランシンの『コンチェルトバロッコ』を連想させるほど 強いバランシンの影響が見られましたが、彼独自のスタイルを見出すことができません。
バランシン作品以外は2001年以降の新しい作品という今回のプログラムは非常に冒険的なもので、なぜこの4作品がプログラムされたか疑問に思います。ダンサーの水準の高さは明らかなものの、公演全体の完成度としてはどこか満足のいかない結果になってしまいました。
(10月21日、サドラーズ・ウェルズ、ロンドン)