ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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船引怜美 text by Remi Funabiki 
[2004.07.10]

●アンジェラン・プレルジョカージュ振付『ニアー・ライフ・エクスペリエンス』

アンジェラン・プレルジョカージュの新作『ニアー・ライフ・エクスペリエンス』(2003年9月初演)がサドラーズ・ウェルズで上演されました(5月20~22日)。 魂が身体から抜け出す感覚―体外離脱、気を失いかけて意識が遠くなっていく感覚、性的快感が頂点に達したうっとりとした状態などをテーマにした作品。 プレルジョカージュの描き出すシーンは、まさに映画などで見る“あの世とこの世の境”、天国へ導かれるような雰囲気は舞台イメージとして非常に美しく、 毛糸などを巧みに使用した演出はとても印象的でした。

しかし作品全体的には断片的に組み合わせられた視覚的なイメージのみで特に強烈な印象を与えることなく単調。 性的要素を含む演出は過去の作品と何の変わりもありません。ムーブメントは全体を通してふわふわと漂うような動きで、振付としていまひとつピンと来ません。 ダンサーには霊的な透明感や感覚を体現する表現力と繊細さがなく、作品にマイナスな影響を与えていました。
現在KENZOのデザイナー、ジル・ロズィエの衣裳はまさにフレンチ・シック、シンプルでも何気ないデザイン性の高さがとても印象的、“さすがフレンチ…”と思わせます。 フレンチ・デュオAirの音楽はうっとりするほどに穏やかで美しく、音楽/美術共にテーマを捉えているにも拘らず、振付/作品に生かされていないことがとても残念です。 観客が魂の抜けていくような感覚をエクスペリエンス(体験)できる空間/舞台を、プレルジョカージュは創り上げることはできなかったように思います。 新聞各紙でも、期待外れの新作に対する厳しい評価が目立ちました。(2004年5月21日、サドラーズ・ウェルズ劇場)