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船引怜美 text by Remi Funabiki 
[2004.07.10]

●イングリッシュ・ナショナル・バレエ、デレク・ディーン版『白鳥の湖』

イ ングリッシュ・ナショナル・バレエの人気プロダクション、デレク・ディーン版円形劇場バージョン『白鳥の湖』がロイヤル・アルバート・ホールで上演されま した(6月9~19日)。今回最も注目された話題はロベルト・ボッレとの競演による、ポリーナ・セミオノワのロンドン・デビュー。イヴニング・スタンダー ド紙で特集記事が掲載されるなど、新しいスターの誕生に注目が集まりました。

古典的な振付を常に正面を変えながら踊るこの円形劇場版では、通常の『白鳥の湖』を踊る以上にテクニックが要されることでしょう。観客に360度囲まれ、 常にすべての角度から鑑賞されていることになります。そういった特別演出でポリーナは、白鳥初挑戦とは信じがたいほどの自信とテクニックの安定感を示しま した。その驚異的才能にロンドンの観客は興奮を覚えました。ポリーナのバレエ漫画のバレリーナのような超理想的プロポーションはとても印象的です。しか し、その超完璧なプロポーションが十分に生かされていないアラベスクのラインや白鳥・オデットとしての演技力/表現力の弱さにおいては、“まだ彼女は若干 19歳である”という幼さ/若さを感じました。ある新聞批評ではポリーナの今後の成長には、非常に経験のあるコーチが必要であると指摘しています。

ロベルト演ずるジークフリートは、気品、役作り、テクニック、すべての点で素晴らしく、バレエ漫画の王子様よりも完璧なジークフリートでした。1幕のソロ はため息が出るほどに美しく、叙情的。3幕のバリエーションで見せたグラン・ジュッテは宙を滑る姿を目で確認できるほどに伸びのある跳躍。黒鳥のコーダで は、円形舞台特別演出と思われる1/8回転ずつ正面を変えていくアラスゴン・ターンを何気なくこなし、観客の興奮はピークに達しました。

作品全体として、私的には競技場のような空間に『白鳥の湖』独特の雰囲気を見出す難しさを感じましたが、アイススケートリンク大の楕円形舞台に舞う60羽 の白鳥、スケールの大きさ、古典的な振付を残したまま人数や空間構成を変えた特別演出(4組のパ・ド・トロワ、2組の4羽の白鳥など)はとても興味深く、 印象的。『白鳥の湖』を十分に知る人から、初めて観る人まで、誰もがバレエの魅力を味わうことのできるプロダクションだと思いました。(2004年6月9 日、ロイヤル・アルバート・ホール)