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船引怜美 text by Remi Funabiki 
[2004.07.10]

●テレグラフ紙、シルヴィ・ギエム インタビュー (2004年6月1日掲載)

日本発売から遅れること7ヶ月、ロンドンでは8月の公演を目前にしてDVD『マルグリットとアルマン』が発売。発売に際し、テレグラフ紙にシルヴィのインタヴューが掲載されました。“マドモワゼル・Non”と言われたシルヴィ、彼女のポリシーが語られました。

< 写真・映像>
肖像・映像権に対する硬い姿勢、その理由は… :「私は見世物じゃないわ」「ビデオに収められた舞台には味も、香りも、感動もない。できることなら存在しないほうがいいと思う」

<『マルグリットとアルマン』>

1998年当時芸術監督のダウエルはシルヴィに『マルグリットとアルマン』に再演の話を持ちかけますが、シルヴィは「Non」と言い続け、二人の我慢合戦は2年間続いたと言います… :
「1998年にマーゴとルドルフの映像を見た時に、自分をその中に置き換えることができなかった。私が演ずるものではなかった。彼(ダウエル)はしぶとかったわ」

<2004~2005シーズン>
シルヴィが出演すると思われる作品は… :(『眠れる森の美女』?)「Non」、(『シンデレラ』?)「Non, もうやったわ。やっている自分にうんざりしてしまうのがいやなの、それだったら昔を振り返らないほうがいいわ」、(『白鳥の湖』?)「白鳥の湖なんて、悪 夢だわ。ひとつひとつの動き、呼吸、何もかも完璧でなくてはならない。それを達成するなんて、不可能極まりないものよ。完璧でなくてはならないプレッ シャーに19歳から苦しめられ続けてきたの、もう十分だわ」

ジョージ・バランシン振付
『放蕩息子』
シルヴィ・ギエム(シレーン)

<活動したい振付家・今後の予定>
2000年RB『オネーギン』初演時、タチアナ役を希望したシルヴィに、“NON”と言う返事がクランコ作品の上演権保持者から返ってくると誰が予想できたでしょうか?? 彼女は今後活動したい振付家として、クランコの名前を依然として挙げます…:「今まで様々な役に魅かれてきたわ、でもその役を踊る権利を与えてくれなかった人にはお会いしたことがなかったわ…」
「でも、新たなチャレンジはいくらでもあるわ」… :そしてラッセル・マリファンとアクラム・カーンを“これから活動を共にしたい振付家”として挙げてい たシルヴィ。昨年12月にマリファンとのコラボレーションは実現し、この9月には更に2つの新作(シルヴィのソロとバレエ・ボーイズと競演作品)がサド ラーズ・ウェルズにて公演予定。カーンとのコラボレーション実現も遠い話しではないでしょう。来春にはギエムの写真集発売が予定。その写真集ではシルヴィ の素顔(シルヴィの好きなもの、夢見るもの、考えるものetc)を見ることが出来るようです。

私自身、シルヴィの映像権に対するこだわりは納得できます。なぜならビデオで観る舞台には冷凍食品を食べるような味気なさがあるような気がします。いつで もレンジで手軽に、それなりに美味しく味わうことはできるけど、新鮮な食材が料理されたものとは香りも風味もこくも異なり、その美味しさに感動を覚えるこ とはできません。それと同様に、ビデオで鑑賞する舞台と劇場で鑑賞する舞台にはそこで味わう感動の違いがあるように思います。しかしながら、「保存された ものでしか感動を味わうことのできない舞台」というものも多く存在するのも事実です。「シルヴィの超古典作品」はもう「保存されたものでしか感動を味わう ことのできない舞台」なのかもしれません…。しかし、今だから味わうことのできるシルヴィに出会う機会、自分の肌でその舞台の感動を味わうことのできる機 会は、これからのロイヤル・バレエ2004/5シーズンや日本公演であるでしょう。常に新しいものにチャレンジしていき、変わり続けるシルヴィ、過去にこ だわらないほうがいいのでしょう…。