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船引怜美 text by Remi Funabiki 
[2004.05.10]

●バランシン『セレナーデ』アシュトン『タイスのパ・ド・ドゥ』スムイン『亡き戦士への歌』

1933 年アメリカ・ニューヨークに招かれたジョージ・バランシンはスクール・オヴ・アメリカン・バレエを設立し、1934年第1回学校公演にと振付けたのが、 『セレナーデ』です。オリジナルは17人の生徒に振付けられ(上演を重ねていくうちに作品は発展され、カンパニーによって出演するダンサーの人数は異なり ます)、その人数によってマスゲーム的な構成が決められたり、ある生徒がリハーサルに遅刻してきたことやリハーサル中に転んだ動きが振付に反映されたり と、今ではごく普通の作品創作過程ですが、当時の古典バレエの創作アプローチとしては考えられませんでした。バランシンは、チャイコフスキーの『弦楽セレ ナーデ』を彼の天才的音楽解釈により、すべての音楽構成をダンスステップ一つ一つに映し出しました。バランシンの抽象バレエの原点でもあります。バレエ学 校生徒のための作品だったために、ランダーの『エチュード』のようなクラスを思わす振り、古典的なステップが多く見られます。従っていかにダンサーがチャ イコフスキーの叙情的な音楽を視覚化するか、ムーブメントの美しさ、バランシン・テクニックの確実性が最も問われる作品です。しかし残念ながらDTHの女 性ダンサーのポイントワークの洗練、上体(特に背中の)やわらかさには物足りなさを感じました。

アシュトンの生誕100年記念に際し、公演予定されていなかった『タイスのパ・ドゥ・ドゥウ』が上演されました。メリッサ・モリッシーの繊細なムーブメン トが印象的でしたが、アシュトン作品の真髄は観ることが出来ませんでした。各紙の舞踊評論家は、今までアシュトン作品をレパートリーとしていなかった DTHが、なぜ突然『タイス』を上演したのかと疑問を投げかけています。

ブロードウェイ・ミュージカルやハリウッド映画の振付も手がけるマイケル・サムイン振付『亡き戦士への歌』(1979年サンフランシスコ・バレエ初演) は、白人警官によってガールフレンドを殺害された一人のアメリカンインディアンの若者を描いています。ディズニーランドを思わせる舞台構成・美術(映像と ダンスの組み合わせや衣裳)、アクロバティックな振付を完璧にこなすDTHダンサー、民族的ダンスシーンではDTHダンサー(黒人)ならではの天才的音楽 性、情熱、力強さが印象に残りました。このような作品が最もDTHの魅力を引き出すのではないかと思われます。

バランシン、アシュトン、サムインのミュージカル的エンターテイメント作品という、全く接点の見られない3演目の組み合わせには疑問が残りました。

『亡き戦士への歌』

『亡き戦士への歌』