-----2005年にさいたま芸術劇場で上演された、中村恩惠さん振付の『A Play of A Play』は、観客から言葉をもらって即興で踊るという新鮮なアイディアが盛り込まれていて、観客と素晴らしい交流が生れた素敵な舞台でした。 中村 この作品を大阪で上演した時は、観客に何かテーマをくださいというと、わーっという反応があって、「チューリップ」とかいうのが出されて、ダンサーが一生懸命に踊ったら、「それはなってないねー、もう一回やってみて」とか言われて……。アフタートークはあまり時間もなかったので、「インプロにしますから出たい人は舞台に出てください」、と言ったら、関東なら10人くらいしか出てこないのに、大阪ではほとんどの人が出てきてしまって舞台がいっぱいになってしまいました。とにかくすごいノリでした。
舞台で上演されているダンスには、いつも特別の時間が流れています。何曜日の何時といった日常を超越した特別の時間の中で行われることで、作品が成立っています。でも、観ている自分とか踊っているダンサーは、今、居る実際の限定された時間に生きていますから、そこには同時に二つの時間が流れています。この作品では、その特別な時間に現実的な観客との会話を挿入して、二つの時間が平行して流れていることを明らかにしたかったのです。
もうひとつは、舞台があって観客がいることで、舞台が成立していますが、観ている観客をも含めてひとつの芝居と想定すると、それじゃあ、芝居の全体を観ているのは誰だろう、ということになります。たとえばそれが宇宙舞台みたいな、私たちには見えないもののために、一つの演劇が行れている、そういうことを表現したいと思って『A
Play of A Play』は創りました。
観客からテーマをもらって即興で踊るところは、ぶっつけ本番でしたから毎日違うやり方を試した<生もの>でした。
-----『A Play of A Play』はプロの舞踊家なら考えないようなテーマが客席から直接出されて、それをプロのダンサーが表現しようとして踊る。思いがけない交流が生まれるところが、たいへんに興味深かった。それで次の新作を楽しみに待っていたのですが。 中村 『A Play of A Play』を上演した後は、オランダに戻って若い人たちのためにダンスを創ったリ、自作自演のソロを創ったりしていました。