『アレグリア』 デビット・ゾペティ著
たった一人でカナダのトロントへバレエ留学した、14歳の少女、陽子の8年間の姿を描いた小説である。
何不自由なく育った陽子は、移民の街トロントでクラシック・バレエを学びながら、さまざまの出会いを重ねる。バレエ学校の寮で同室だった香港のペギーとの友情、ダンスの才能豊かな同級生のトムとの愛、日系二世のバレエ教師ヒラオカの鮮烈な過去の記憶など、彼らの人生の深部に触れ、陽子はプロのバレリーナとしての自分について思いめぐらす。そして、偶然、地下のタブラオで踊られていたフラメンコを観て深く魅了される……。
クラシック・バレエとフラメンコ。故国を離れてダンサーとして生きていこうとする
日本人、陽子の青春の愛と苦しみが、種々のルーツをもった人種が混交して生きるトロン
トの街を背景に活き活きと描かれる。とりわけ終章のクライマックスでは、フラメンコの舞
台の燃え盛るような熱気と吹雪が舞う街の寒気の感触が、まるで肌に触れるように感じられ
てたいへんに印象深い。
今日のグローバルな社会の中で、生きることを直裁に反映するダンスを通して、アイデ
ィンティティを模索する小説である。主人公が感じたことをそのまま語っていく形式で描
かれているので、ダンスを学ぶあるいは学んだ人たちにとって、共感しやすいのではない
だろうか。ちなみに、表題となっている「アレグリア」はフラメンコの曲のひとつの名称。
筆者は、ジュネーブ生れで同志社大学に学び、テレビ朝日の「ニュースステーション」
の記者を務めた。96年に「すばる文学賞」を受賞し、芥川賞の候補作となった。
(荒部 好) |
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「アレグリア」
デビット・ゾペティ
集英社1,200円(税抜)
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