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関口紘一 
[2017.11.29]

首藤康之がプレルジョカージュ監督の映画『ポリーナ、私を踊る』について語った!

アンジュラン・プレルジョカージュが共同監督・振付家として参加し、ロシアのバレエ少女がダンサーとして、アーティストとして、力強く成長していく姿を描いて話題を呼んだ『ポリーナ、私を踊る』。この映画のヒットを記念し、バレエダンサー、首藤康之を招いてトークショーがヒューマントラストシネマ有楽町 シアター1で開催された。
周知のように首藤康之は、東京バレエ団に入団し、モーリス・ベジャール作品他を踊った。その後も世界的大ヒット作のマシュー・ボーンの『白鳥の湖』で主役を踊り、シディ・ラルビ・シェルカウイ作品に積極的に参加して世界ツアーを回った。また、『くるみ割り人形』『ドン・キホーテ』『コッペリア』などの全幕作品を斬新な手法で振付けたり、映画や演劇、パントマイム作品などにも出演するなど、バレエダンサーの枠を超えた活躍で注目を集めている。日本で最も「何を踊るか」を熟慮して、舞台づくりに積極的に参加している舞踊家だ、と私は思っている。

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最初に『ポリーナ、私を踊る』というタイトルを聞いた時には、ポリーナ・セミョーノワのドキュメンタリー映画かと思った、と言った話題に始まり、ダンサー経験を踏まえた様々の興味深い話が繰り広げられたので、一部をご紹介したい。(進行/佐藤友紀)
この映画を見て「僕もバレエ出身なので共感するところがあった」として、クラシック・バレエを踊って世界的に有名だったシルヴィ・ギエムが30歳を過ぎて、自分が踊っていく作品をいろいろと悩んでいた頃に日本に来て、『眠れる森の美女』を踊った。その公演の記者会見で、「なぜ『眠れる森の美女』を踊るんですか」と聞かれて、即座に<身体のためです>と答え、<だってバレエってそれ以外ないじゃないですか>と断言したことを紹介。これには「さすがだな」と感嘆したという。バレエダンサーは毎日毎日レッスンをしていることで自信を保っている。それが自身の精神的なコントロールにもなっている。そうしたことをギエムは実に明解に理解していることを示した言葉だったのだ。その後、彼女はマッツ・エクやフォーサイスなどとも仕事をして、新たな境地を拓いていった。やはり、クラシック・バレエだけではどうしても収まりきらない、自分の中で、自分の人生を差し出すことができる作品、あるいはそれがコンテンポラリー・ダンスなのかもしれないと思っている、と首藤はいう。
そしてダンサーには、自分自身ではわからない身体の可能性を持っている。振付家は、その自分の身体の引き出しの中にある、様々な異なった色のペンを用いて描いてくれる。だから現存する振付家が必要になる。もちろん、過去の偉大な作品を守っていくのも大切なことだけれど、稽古場で振付家とともに新しい作品を作っていくことが、僕にとっては一番楽しい、そうだ。
また、バレエ出身の彼女がコンテンポラリーを練習しているときにアザだらけになって、ニー・パッドを貸してもらうシーンがあったが、そこでは「僕がラルビ(シディ・ラルビ・シェルカウィ)と仕事をしたことを思い出した。ラルビの作品をびわ湖ホールで見て、この人の作品を踊らなくては、と思って楽屋口で彼を捕まえて<何か踊りたいです>と言ってメールアドレスをもらった。ベルギーでワークショップやるからよかったら来ないか、と誘われすぐに向かった。そこではプレルジョカージュやマッツ・エクのダンサーが参加していて、3点倒立とか頭で逆立ちしたりしてウォームアップしていた。これは大変なところに来てしまったな、と思ったのだが、それからいろんな動きを一緒に作った。結局、身体中があざだらけになって、動けなくなってしまった。この時は意地になってなんとか乗り越えたけれど。」
「それからジュリエット(ビノシュ)が素敵だった。アクラム・カーンと踊った公演では、女優が頑張ってダンスを踊ったという感じだったけれど、この映画では、頬がこけて気持ちを込めてソロを踊るシーンが忘れられない。アクラムと踊った後もダンスの訓練を続けていたに違いないと思って、なぜかとても嬉しかった」とも語った。
そして、「僕もダンサーなので、俳優がダンサー役をやると粗探しじゃないけど、どうしてもそんなことはしないとか、気になってしまうことが多いのだけど、アドリアン役のシュナイダーもダンサーらしかった」と、ダンサーが見てもこの映画がリアルに描かれていることを称賛した。
バレエダンサーとして、ポリーナと同様の「旅」を経験している先輩、首藤康之の一語一語に、多くの観客が納得し、拍手を贈った。

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『ポリーナ、私を踊る』
ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国公開中

配給:ポニーキャニオン

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