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児玉初穂 
[2017.04.26]

東京バレエ団が『ラ・バヤデール』のリハーサルを公開し、シュツットガルト公演の成果を発表した

17-04_Applaus.jpg シュツットガルト公演(photo:Ulrich Beuttenmueller)

6月に開幕する東京バレエ団『ラ・バヤデール』の公開リハーサルと記者懇親会が、4月21日東京バレエ団で行われた。同団はマカロワ版(1980年 ABT)を採用、失われた「寺院崩壊の場」を復活させ、ドラマのダイナミズムを生かすべく枝葉を刈り込んだ、現代的改訂版である。2009年のバレエ団初演時にはマカロワ自身が指導に駆け付けて、「影の王国」の群舞を激賞した。以来11年、15年と再演を重ね、今年4月にはシュツットガルト公演を敢行、現地でも高い評価を受けた。今回は、斎藤友佳理芸術監督になって初めての『ラ・バヤデール』上演になる。斎藤監督の芸術性がいかに反映されるかにも、注目が集まる。
ゲストは、昨年シュツットガルト・バレエ団からオランダ国立バレエ団に移籍し、直後にマカロワ版『ラ・バヤデール』を主演したダニエル・カマルゴ。マカロワの推薦によって、プリマ上野水香との組み合わせが実現した。

公開リハーサルには、上野とカマルゴ、さらにガムザッティ役の川島麻実子、ラジャ役の木村和夫が登場。斎藤監督のソフトな語り口による細かく厳しい指導が、1時間にわたって続いた。ニキヤとソロルの一幕パ・ド・ドゥ、ガムザッティとソロルの一幕パ・ド・ドゥ、ソロルの一幕ヴァリエーション、ソロルとニキヤの二幕アダージョ、ヴェールのヴァリエーション、三幕パ・ド・カトルなど。カマルゴはジョン・クランコ・バレエ学校時代、名教師ペーストフの指導を受けており、斎藤監督とはロシア語、上野とは英語でコミュニケーションを取っていた。上野の強靭なポアントとダイナミックな跳躍、カマルゴの行儀のよいサポートと正統派ヴァリエーション、川島の引き締まった踊りが、本番への期待を膨らませる。

場所を変えての記者懇親会は、斎藤監督の挨拶で始まり、カマルゴ、上野、川島がそれぞれの抱負を述べた。

斎藤「今回、シュツットガルト劇場の幕が開いた時、自分はとんでもないことをしてしまったのではと思いました。東京バレエ団とシュツットガルト・バレエ団は、佐々木(忠次)さんとクランコさんの関係が深く、クランコさんが亡くなった年に互いの本拠地で公演を行なった歴史があるのです。実はゲネプロで、音の問題からダンサーたちが思うように動けなくて、初日の前の晩は不安で眠れませんでした。シュツットガルト・バレエ団次期芸術監督のタマシュ・デートリッヒさんとは20年来のお付き合いなのですが、そうした気持ちを漏らしましたら、『クランコのお墓に行きたい?』と訊かれ、初日の午前中、皆が練習している時に、お墓参りに行きました。墓地は広い草原の中にありました。タマシュが買ってくれた花瓶で、お花とお水を供えた時、急に風が吹いて、花瓶が真っ二つに割れてしまったのです。ひどいショックを受けました。するとタマシュが『クランコがここに来てくれているんだよ』と言って。花瓶が我々の苦しみを全部持っていってくれたような、不思議な力が働いたと思います。初日はゲネプロとは打って変わって素晴らしく、感動しました。観客にも受け入れてもらって喜びでした。大きな壁を乗り越えた後で、東京公演をしたかったのです。
マカロワ版は腑に落ちる、理に適っていると思います。3幕パ・ド・カトルは、ニキヤの心情、想いが強く残っている、ソロルの中でも残っている。私は初演時にニキヤを踊り、(上野)水香ちゃんの踊りからも刺激を受けました。今回、私は指導者に回ったのですが、水香ちゃんとは元同僚なので、他のダンサーたちとは違う接し方をしています。彼女がこれまで築いてきたことを大事にすること、その上で、こうあって欲しいと思うことは、すべて言っています。二人の約束事は『正直でいよう』。水香ちゃんは舞台上で信頼できる人です。私がゲネプロでショックを受けて、口が利けなくなった時も、『友佳理さん、大丈夫です、私が何とかしますから』と言ってくれました。」

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カマルゴ「日本に来させて頂き、ありがとうございます。『ラ・バヤデール』は2012年にオーストラリア・バレエ団で初めて踊り、マカロワ版は昨年11月にオランダ国立バレエ団で踊りました。マカロワは具体的な指導をされる方で、それぞれの役柄を明確に教えて下さいました。彼女と一緒にリハーサルができて光栄です。マカロワ版は初めから終わりまで、筋が通っていて、よく理解できる素晴らしいヴァージョンだと思います。(一緒に踊る)水香さんとは、動きの細かい所や役の解釈で、お互い正しい方向を見つけて、心地よく踊れるよう心がけました。オープンなプロセスで、問題を解決できたと思います。(東京バレエ団の)宮川新大くんとは、ジョン・クランコ・バレエ学校で4年間一緒でした。初めて会ったとき、自分はスーツケースを、新大は日本のサラダ・ドレッシングを手にしていました。すぐに仲良くなり、二人して校長先生によく怒られました。窓から枕を投げたり、子供っぽい悪戯をして。(二人とも)ペーストフ先生のクラスに入れたのですが、2年間、厳しいトレーニングを受けました。ソフトな着地、音楽性、正しいポジション、体にダメージを受けないテクニックなどです。」

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上野「ニキヤは初演から踊っています。マカロワさんは細かい指導で、最初の出の一歩からやり直しをさせられました。再演のたびに違うパートナー(高岸直樹、ゴールディング、柄本弾、カマルゴ)と踊ってきました。同じ役だからこそ、その時の自分が出るのと、パートナーが変わると視線の合わせ方やニュアンスが違うのとで、成長することができたと思います。ダニエル(カマルゴ)は、若くてパワフル、アーティストとして真っ直ぐなので、そこを大切にして踊りたいと思っています。振りは分かっているので問題はなかったです。リフトの微調整は、柄本くんがダニエルに伝えてくれて。それに対しても真摯で、真っ直ぐ。若くて才能があって、素晴らしいダンサーだと思います。(本番では)前向きでパワフルな世界を表現したいです。力を観客に感じてもらえて、その中にドラマがあるような。細やかな表現を大切に踊っていきたいです。」

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川島「初演の時はコール・ド・バレエでした。友佳理さんや水香さんの後ろで踊っていました。女性の役はすべて踊ったことになります。前回のガムザッティ(起用)は自分の中で受け止められたのですが、今回ニキヤを踊るのは想像になかったです。素敵な役なので、シュツットガルトでは少し緊張してしまいました。ただ、すべての場面を経験していることが自分の財産です。いろんな役の感情が生まれる作品なので、この経験を生かしていきたいと思います。ゲストダンサーと組むのは初めてですが、(カマルゴさんは)一週間、丁寧に教えて下さいました(ガムザッティ役)。シュツットガルト公演では、ニキヤを秋元(康臣)さんと踊り、東京では柄本さんと組みます。自分はコンパクトになりがちなので、水香さんと組まれている柄本さんの影響を受けられたらと思います。」

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東京バレエ団「ラ・バヤデール」

2017年6月30日(金)18:30
ニキヤ:上野 水香 / ソロル:ダニエル・カマルゴ / ガムザッティ:奈良 春夏
2017年7月1日(土)14:00
ニキヤ:川島 麻実子 / ソロル:柄本 弾 / ガムザッティ:伝田 陽美
2017年7月2日(日)14:00
ニキヤ:上野 水香 / ソロル:ダニエル・カマルゴ / ガムザッティ:川島 麻実子

●東京文化会館(上野)

▼公演情報はこちら
http://www.chacott-jp.com/magazine/information/stageinfo1/post-1.html