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関口 紘一 
[2017.02.10]

物語世界と現実世界が実り豊かに交歓する、サー・ピーター・ライト版『くるみ割り人形』が公開

英国ロイヤル・バレエのピーター・ライト版『くるみ割り人形』が、英国ロイヤル・オペラハウス2016/17シネマシーズンとして公開される。
物語バレエ、とりわけ『くるみ割り人形』『ジゼル』などの古典名作バレエの演出・振付に定評のある、サー・ピーター・ライト振付による『くるみ割り人形』の完全舞台映像とスタッフ、キャストのインタビューを収録した映画である。90歳の誕生日を迎えたピーター・ライトにダーシー・バッセル(元プリンシパルダンサー)がインタビューする映像もあり、カーテンコールにも元気な姿を見せて観客の歓声に応えている。ピーター・ライトの『くるみ割り人形』には複数のヴァージョンがあるが、彼は上演するごとに気がついた点に手を加えている。本人はこれを「あら探し」と言っていたが、今回も「中国の踊り」の振付を替えている。そうした意味でもこれはピーター・ライト版の最新のヴァージョンの舞台映像である。

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金平糖の精はローレン・カスバートソン、王子はフェデリコ・ボネッリ、クララはフランチェスカ・ヘイワード、ハンス・ペーター/くるみ割り人形はアレクサンダー・キャンベル、ドロッセルマイヤーがギャリー・エイヴィスというキャストだった。ほかに花のワルツのメインを崔由姫、アラビアの踊りに平野亮一、中国の踊りにアクリ瑠嘉が出演していた。
イブにクリスマスツリーにかざられた天使が登場して、クララを夢の世界へと導いて行くのがライト版の素敵な特徴である。そして天使の優しさが全編に漂っていて、観客は知らず知らずのうちに心楽しくなっていく。
一幕では、クララとハンス/くるみ割り人形は芝居するシーンが多く、ダンスシーンが少ない。しかしニ幕ではドロッセルマイヤーに促されてディヴェルティスマンに、次々と参加して踊る。最後はくるみ割り人形とともにディヴェルティスマンに加わって生き生きと踊る。この踊りに参加していく様子に、少女クララが人間として成長していく姿が映されている。この表現は実に素晴らしい、と思う。
よく言われる『くるみ割り人形』の弱点である、一幕と二幕のドラマとして関連性がない、という指摘が、従来のヴァージョンを活用しながら、見事に解決されている。人生経験豊かなサー・ピーター・ライトの暖かい眼差しが、登場人物の心の隅々にまで行き渡って、物語の世界と現実の世界が実り豊かに交歓しているのである。
エンディングも実に良かった。広間の床で目覚めたクララは、あの華やかで楽しかった世界は夢だったと知る。すると、そんなところでうたた寝をしていては風邪をひくよ、と上着をかけられ、その時、あのお菓子の国で金平糖の精に掛けてもらったネックレスが首にかかっているのに気がつく・・・・。もちろん、それは無邪気な少女から一人の女性へと成長していく心を持ったクララへの夢の世界からの、ご褒美だったことは言うまでもないだろう。

付言すれば、クララ役のフランチェスカ・ヘイワードは、くるみ割り人形役のアレクサンダー・キャンベル、高田茜、平野亮一と共に、昨年6月来日直前に、プリンシパルに昇進したばかり。そして先日発表された、2016年、英国舞踊批評家協会賞では新人アーティスト賞を受賞したわずか2年後に最優秀女性ダンサー賞を受賞した黒髪の美女。今後の活躍に大いに期待したい。

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『くるみ割り人形』
【振付】ピーター・ライト/レフ・イワノフ
【音楽】ピョートル・チャイコフスキー
【指揮】ボリス・グルージン
【出演】
フランチェスカ・ヘイワード(クララ)
ローレン・カスバートソン(こんぺいとうの妖精)
ギャリー・エイヴィス(ドロッセルマイヤー)
フェデリコ・ボネッリ(王子)
アレクサンダー・キャンベル(ハンス・ペーター/くるみ割り人形)
平野亮一(アラビアン・ダンサー)
【上演時間】2時間39分(休憩時間:約12分)
2017年2月10日より公開
▼詳細
http://tohotowa.co.jp/roh/movie/the_nutcracker.html

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