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関口紘一 
[2016.07.13]

史上最年少の若さでパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督に就任したミルピエを描いたドキュメンタリー映画『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜』公開される

パリの観光名所であるガルニエ宮という豪奢な劇場とバスティーユ・オペラという新しい劇場を拠点として活動する、パリ・オペラ座バレエ団。このカンパニーの芸術監督は、常に世界最高のバレエを上演し続ける、という重責を担っている。

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近年では、ロシア出身の世界的ダンサー、ルドルフ・ヌレエフ、フランス人の期待を星だったパトリック・デュポン、そしてモダン・ダンス界から20年近く芸術監督を務めたブリジット・ルフェーブルが、その地位に就いている。その間、監督それぞれの特徴を出して活動してきたが、基本的にクラシック・バレエを中心とする従来の方針を維持してきた。オペラ座に所属するダンサーにはカドリーユ、コリフェ、スジェ、プルミエ、エトワールという階級があり、コンクールによって選別されて昇級していく、という伝統的制度も忠実に墨守してきた。
ところが2014年秋からミルピエがパリ・オペラ座芸術監督に就任することが正式に決まると、この伝統的制度も変わるのではないか、とも噂されるようになった。
ミルピエはフランス人だが、ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル・ダンサーとして活躍し、振付も手掛けていた。その作品からみても、彼のキャリアからみても、伝統的なコンクールによりダンサーの階級を維持していく、という伝統的制度とはそぐわない、と思われたからである。
実際、ミルピエはオペラ座の芸術監督に就任すると、ダンサーの階級制度こそ維持したが、様々な改革に着手した。長年、ダンサーとして活動して来たことから、ダンサーの身体のためになる工夫を凝らした。また、クラシック・バレエのキャスティングも、階級制度にとらわれることなく積極的に若手を抜擢した。その代表例ともいうべきがオニール八菜の昇進と活躍ぶりだろう。オニールは2013年には新国立劇場で行われた「バレエ・アステラス」に出演していたが、それはオペラ座と正式契約を交わした直後だった。その後、とんとん拍子に出世して、『白鳥の湖』『パキータ』の主役を踊り、サンクトペテルブルクでモスクワでニューヨークで踊り、ついにはブノワ賞まで受賞してしまったのである。
これはミルピエ監督の抜擢によって新しい才能が飛躍的伸びた、良い例といえるだろう。

しかし、オペラ座バレエ団の芸術監督に史上最年少の37歳で就任したミルピエは、1年半後に辞任することが決まった。
350年の歴史を持つ名門バレエ団で、ミルピエはどのように活動し、どんな改革をもたらしたのか、その姿を追ったドキュメンタリー映画『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜』がロード−ショー公開される。
これは、世界一の名門バレエ団に就任した若き芸術監督の仕事を描いたドキュメンタリーであるが、そこには今日のクラシック・バレエが背負っている様々な問題を明らかにする映画でもあるだろう。

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監督:ティエリー・デメジエール/アルバン・トゥルレー
音楽:ニコ・マーリー 衣装:イリス・ファン・ヘルペン
出演:バンジャマン・ミルピエ、レオノール・ボーラック、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、アクセル・イーボほか
2015年/フランス/110分/原題:Relève(原題)、Reset(英語題)配給:トランスフォーマー
©FALABRACKS,OPERA NATIONAL DE PARIS,UPSIDE DISTRIBUTION,BLUEMIND,2016

12月、Bunkamura ル・シネマ他にて公開