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アンジェラ加瀬 
[2013.07. 4]

タマラ・ロホ率いるイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)が新シーズンのライン・アップを発表

6月10日、ロンドンのドーチェスター・ホテルで、タマラ・ロホ率いるイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)の新シーズン、主として2014年の演目発表記者会見が行われた。

新シーズンは新制作の『海賊』全幕で開幕後、毎年恒例のクリスマス・お正月のロンドン公演は『海賊』と前芸術監督ウェイン・イーグリング版『くるみ割人形』全幕を上演。
2014年4月には、ロンドンのバービカン・センターにて、アクラム・カーン、ラッセル・マリファント、リアム・スカーレット振付による第1次世界大戦100周年にちなんだ新作を上演する予定である他、同年6月には6,000人収容のロイヤル・アルバート・ホールでデレク・ディーン版『ロミオとジュリエット』を再演。ロホの相手役としてカルロス・アコスタが客演する。7月にはロンドン、コロシアム劇場でハインド版の『コッペリア』を上演予定。

130610enb01.jpg 新制作『海賊』 Photo:ENB 提供
130610enb02.jpg (C) Angela Kase

ロホによるとスペイン、マドリッドでの海外公演の予定もあるという。また質疑応答で一人の記者より、ロホがたいへん評価するセルゲイ・ポルーニンとの共演の可能性をたずねられたロホは「客演させたい意向はあり、本人とも話し合っているが、演目や時期については公演直前まで発表できない」と語った。
イギリスのバレエ団が『海賊』全幕を上演するのは初めての試み。首都ロンドンでの公演はともかく、『白鳥の湖』『ロミオとジュリエット』といった保守的な演目を好む英地方都市のバレエ・ファンをどれだけ集客できるかに、ロホ以下バレエ団と将来がかかっている。
4月に新作を上演予定のバービカン劇場は、ロンドンの金融街シティ(シティ・オヴ・ロンドン)に位置するシアター、ギャラリー、映画館、図書館、コンサート・ホールからなる施設の1つ。同バレエ団がバービカンで公演するのはこれが初めての試みとなる。
ロンドン市内でもこのエリアは紀元1世紀にローマ人がロンドンの元になるロンディニウムと呼ばれる街を作った場所。以来、常にロンドンの中心として栄えていたのだが、第2次世界大戦中はドイツ空軍による激しい爆撃をうけ、部分的に壊滅的な被害を受け、瓦礫の山になってしまった。現在バービカン・センターの建つ部分も第2次大戦中に全壊した建物の跡地を戦後再開発したものである。このように大戦にゆかりのある場所で、時代は違えど第1次世界大戦にちなんだ新作が上演されるのは興味深い。

130610enb03.jpg (C) Angela Kase

イギリスの批評家やジャーナリストは新人に対して辛辣なことで世界的に悪名高い。当日も1人の男性記者が、バレエ団の春のコロシアム・シーズン(『エクスタシーと死』http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-london/london1305a.html)の集客が悪かった事実を上げ、新芸術監督のロホに対して「ENBはコロシアムから撤退し、もっと小さな劇場を使用すべきではないのか?」と意見し、会場が静まり返る瞬間もあった。
この記者会見は、ロイヤル・バレエがコジョカル、コボーの退団を発表した1週間後に行われた。ライバルであるロイヤル・バレエから、コジョカル、コボー、ベンジャミン、ガリアッツィら多くのスター・ダンサーが退団することもあり、新シーズン以降はロホ率いるENBのほうが、ロンドンでの集客に強みを見せるのではないか? と予想するファンもいたほどである。
ENBは6月中旬6,000人収容のロイヤル・アルバート・ホールで久々に円形舞台版『白鳥の湖』を上演し、集客も良く関係者やファンの好評を博したばかり。だがこの公演中に芸術監督のロホが目をかけ『くるみ割り人形』で自らの相手役に指名した男性ダンサーのエストバン・ベルランガが、ツィッターで今シーズン限りでバレエ団を離れると発表。ロンドンのバレエ関係者やファンを嘆かせている。
バレエ界からスーパー・スターが激減した今、スター・ダンサーやスター候補の退団やそれに次ぐ移籍劇はバレエ団にとって大事件である。特に秋の『海賊』は魅力ある男性ダンサー複数の活躍にかかっているだけに、ベルランガの突然の退団はバレエ団にとって大きな損失といえよう。

ENB新シーズンの主要演目と詳細は下記の通り
◎『海賊』全幕 ホルムズ版  イギリス地方公演
2013年10月17日~11月30日
2014年2月11日~15日
◎『くるみ割り人形』イーグリング版  イギリス地方公演
2013年11月20日~23日 
◎『くるみ割り人形』イーグリング版  ロンドン コロシアム劇場

2013年12月11日~2014年1月5日
◎『Lest We Forget(レスト・ウィ・フォゲット)』『火の鳥』ウィリアムソン版 バービカン劇場

アクラム・カーン、ラッセル・マリファント、リアム・スカーレットによる第1次世界大戦にちなんだ新作世界初演とバレエ団アソシエイトのジョージ・ウィリアムソンによる『火の鳥』
2014年年4月2日~12日
◎『マイ・ファースト・コッペリア』 バレエ団アソシエイトのジョージ・ウィリアムソンによる子供向けバレエ

2014年5月5日~25日 ロンドン ピーコック劇場 
その後、イギリス国内公演
◎『ロミオとジュリエット』 ディーン版

2014年6月11日~22日  ロンドン  ロイヤル・アルバート・ホール
ロホの相手役としてカルロス・アコスタが客演
◎『コッペリア』ハインド版

2014年7月23日~27日  ロンドン コロシアム劇場