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佐々木 三重子 
[2017.03. 3]

パリ・オペラ座バレエ団が6名のダンサーとリスナー総裁ともに記者会見を行った

レオノール・ボラック、アマンディーヌ・アルビッソン、ユーゴ・マルシャン、リュドミラ・パリエロ、ジョシュア・オファルト、マチアス・エイマン
 

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バレエの殿堂、パリ・オペラ座バレエ団が3年ぶりに来日した。回を重ねて15回目の来演。それも、2015年に引退した名エトワール、オレリー・デュポンを2016年8月に芸術監督に迎えての、新たな上昇気流に乗っての日本ツアーである。公演に先立ち、パリ・オペラ座のステファン・リスナー総裁をはじめ、主な出演者6人が記者会見に臨んだ。デュポンは、2月の東京バレエ団の公演に客演後、オペラ座での『真夏の夜の夢』の準備のため一時帰国したので、会見には出席しなかった。

リスナー総裁は、パリ・オペラ座ではオペラとバレエそれぞれの部門に芸術監督を任命するが、バレエの場合は複雑な背景があるという。「オペラ座のバレエにはルイ14世時代からの350年以上の歴史があり、またカンパニーのダンサーのほとんどはオペラ座バレエ学校から輩出されるという伝統がある。重要なのは、こうしたカンパニー特有の特徴を維持することです。また、オペラ座の芸術監督には、歴史を尊重すると同時に現代性も大切にすることが求められます。そうしたオペラ座の特徴は今回の日本公演のプログラムにもよく反映されていると思う。古典の『ラ・シルフィード』と現代の振付家の作品による〈グラン・ガラ〉という組み合わせです。古典は新しいバレエに栄養を与え、新しいバレエは古典作品に刺激を与えるのです」と語った。さらに、いろいろ取り沙汰された前芸術監督のバンジャマン・ミルピエについても触れた。彼はニューヨーク・シティ・バレエなどニューヨークを拠点に活躍してきた逸材である。

「ブリジット・ルフェーブルが20年も芸術監督を務めた後だけに、一度、オペラ座を外から見てもらうことも大事と考え、ミルピエを指名しました。けれどミルピエは、振付という自身の芸術活動に集中したいということで、一年半の在任で終わった。芸術監督の職務をこなしながら創作もするというのは重荷だったのかもしれない。彼はアメリカから来たわけだが、アメリカのバレエのディレクションの伝統とフランスのカルチャーが違ったことが、辞めた要因の一つかもしれない。後任としで、私がなぜデュポンに決めたかということも、これで分かっていただけるでしょう。ただ、カンパニーにとって、ミルピエの一年半の在任は必要なことだったと思う。ミルピエの存在なしにデュポンを任命するという結論には至らなかったでしょう」。今はデュポンに全幅の信頼を置いているようだ。

1703SYLPHIDE_2012-13.jpg 「ラ・シルフィード」(c)Ann Ray / Opéra national de Paris

同席したバレエ・ミストレスのクロティルド・ヴァイエは演目について語った。「『ラ・シルフィード』はロマンティック・バレエの最高峰の作品。統制のとれたテクニックの高さを見ていただけると思います。(フィリッポ・タリオーニの原案を復元した)ピエール・ラコットは、いまだに厳しい目でリハーサルに立ち合って下さり、ミリ単位でのディテールの正確さを求めます。〈グラン・ガラ〉の3演目のうち、『テーマとヴァリエーション』はバランシンの中で一番有名な作品でしょう。『アザー・ダンス』はジェローム・ロビンズがナタリア・マカロワとミハイル・バリシニコフのために振付けた作品ですが、オリジナルのカップルに劣らないダンサーにより踊られます。ミルピエが振付けた『ダフニスとクロエ』は極めて新しい作品として楽しんでいただけると思います」

出演するダンサーの中で最も注目されたのは、新星レオノール・ボラック。昨年12月31日、『白鳥の湖』に主演した後、舞台上でエトワールに任命されたのだから。今回は『ラ・シルフィード』でエフィーを踊るほか『ダフニスとクロエ』にも出演する。「エトワールとしての第一歩を日本で踏み出せることがとても嬉しい。でも、エトワールになったことを考えすぎると緊張して怖くなるので、プルミエから継続しているのだと考えるようにしています。私が踊るエフィーの役には、ナラティヴな要素が求められると思います。ジェイムズの心がなぜエフィーから離れて妖精に奪われてしまったのか、それを伝えられるように踊らなければいけません」

アマンディーヌ・アルビッソン(2014年エトワールに任命)は、ラ・シルフィードとクロエを踊るが、ラ・シルフィードに思い入れがあるようだ。「シルフィードは現実の人間ではなく、妖精というマジカルな存在。それを伝えるには繊細なポアント・ワークが必要なので、特につま先と床の接触をいかに軽くするかという難しい練習と取り組みました。マジカルな物語として、皆様にお届けできたらいいなと思います。ジェイムズ役のユーゴ・マルシャンと組んで踊るのは初めてなので、楽しみにしています」

1703DAPHNIS.jpg 「ダフニスとクロエ」(c)Agathe Poupeney / Opéra national de Paris

『ラ・シルフィード』でアルビッソンと共演するユーゴ・マルシャンは、昨年プルミエ・ダンスールに昇格したばかりの有望な若手。「マチュー(・ガニオ)がケガをしたため、私が代役を務めることになりました。日本で主役を踊るのは初めてですが、パリ以外で主役を踊るのも初めてなので、二重の洗礼を受けることになる。とても重要な機会と思います。ジェイムズは妖精を追って異次元の世界に行ってしまうが、人間の娘にも恋をする地上的な人間でもある。そんな多面的な人物を演じるのは、とても興味深いことです」

リュドミラ・パリエロとジョシュア・オファルトは共に2012年にエトワールに任命されており、今回、二人は『ラ・シルフィード』と『アザー・ダンス』で共演する。パリエロは、『ラ・シルフィード』でラコット版の初演時に踊ったギレーヌ・テスマーと一緒に役作りをすることができて嬉しかったという。「今回は3度目の来日ですが、エトワールとしては初めてです。日本では私のキャリアをフォローして下さる方がいらっしゃるので、その方たちと同じ舞台空間をシェアしたい。録画や映像ではない、ライヴのパフォーマンスを見ていただくのが、私にとっては何より重要なのです」

一方のオファルトは5年ぶりの来日だそうだ。『ラ・シルフィード』について、「ロマンティック・バレエの代表作で、まさに一つの様式を示している。エポールマンなどのテクニックや体重のかけ方など、男性ダンサーにとってもその時代の様式的なものを、良い意味で突出して感じていただければと思う。この作品では物語が一つのキーワードとして挙げられますが、様式もまたキーワードの一つなのです」

6人のダンサーの中で最も経験豊かなのは、「かれこれ10年ほど前から来日している」というマチアス・エイマン(2009年エトワールに任命)。『ラ・シルフィード』『アザー・ダンス』『テーマとヴァリエーション』に出演するが、中でも『ラ・シルフィード』について熱く語った。「ジェイムズの役を踊るのは今度で8回目ですが、常にリサーチの余地があるし、新しいパートナーと組むたびに役を深めていくことができる。『ラ・シルフィード』はダンサーにとって感情のパレットの幅が広くて、場面ごとに様々な表現が求められます。ただ、第一次的にはテクニックの難しさが語られがちですね。パが連続するので数学的にとらえられがちですが、作品として掘り下げてみれば、難しいパが散りばめられていても、物語によって流れが誘導さている。そこにあるのは美しい音楽だったり、美しい衣裳だったりする。それらすべてが融合して、特別な雰囲気を醸し出している作品なのです。そうした作品の世界に目を向けていただければ、テクニックは二次的なものになります。パを少し間違えても分からない、そういう雰囲気を持った作品なのです」と。確かに、あまりテックニックにとらわれすぎると、作品そのものの魅力をとらえそこねる恐れもあるだろう。『ラ・シルフィード』はオペラ座ゆかりの作品だけに、それぞれの思い入れも様々だった。

1703_2015-16-OTHER.jpg 「アザー・ダンス」リュドミラ・パリエロ、マチアス・エイマン
(c)SCastien Math / Opéra national de Paris

 

パリ・オペラ座バレエ団 2017日本公演
「ラ・シルフィード」<グラン・ガラ>

●2017.3/2(木)〜5(日)、3/9(木)〜12(日)
●東京文化会館
http://www.nbs.or.jp/stages/2016/parisopera/index.html

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