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針山愛美 
[2016.10.19]

キューバのバレエコンクール「グランプリ ウラジーミル・マラーホフ」は、<バレエのお祭り>でした

16-1844-3.jpg (C) Emi Hariyama(すべて)

2016年9月24日から9月30日にかけて、第3回「グランプリ ウラジーミル・マラーホフ」が開催されました。このコンクールは、キューバの東側、カリブ海に近いオルギン(Holguin)という人口25万人くらいの自然の多い静かな町で開催されました。第1回が2014年の9月で、今年が3回目になります。私は、昨年の第2回に引き続きマラーホフのアシスタントとして参加しましたが、今回は、私もコンクールのオープニングで踊らせていただく機会がありました。
コンクールはマラーホフ自身と、ポール・シクエスト、そして現地のコーディネイトは、オルギンのダンスカンパニー「Codanza」創設者でディレクターのマリセラ・ゴドイがキューバの政府の許可を得てオルガナイズしています。

コンクールは、「振付家」「ダンサー」「カンパニー」の3部門に分けて審査されました。今回は、100人のダンサーが12のカンパニーから出場し、カンパニーとしては10団体が出場しました。出場するダンサーたちは、期間中の滞在費と交通費や食事も主催するマラーホフがすべて援助し、ワークショップも無償で受けることができます。また、クラシック・バレエの以外には、インプロビゼーションや、コンテンポラリー・ダンスのマスター・クラスも行われました。
このコンクールには、振付部門、ダンサー部門は10分以内、カンパニー部門は30分以内という時間制限以外は、特別な決まりがありません。ですから、舞台上で会話を交わしたり、自転車などを使用したり様々なアイデアが自由に使われて、通常のコクールとは異なっていてまるで「バレエのお祭り」のようで、とても楽しかったです。
24日の開会式に始まり、午前中から夕方まで3日間予選が行われました。26日からコンクール本選が始まり、毎晩夜の9時からパフォーマンスが行われました。
会場には、1年に1度のこの「バレエのお祭り」を待ちに待ったかのように、大勢の人々が開場するかなり前から集まり、連日満席の観客で興奮に包まれました。そして、すべての参加者に絶え間ない拍手と大きな声援が送られました。

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私は、26日にコンクール本選が始まる初日の最初に、自分で振付けた作品『Dream』を踊らせていただきました。この作品は、9月2日、3日にベルリンで行われたガラ公演「マラーホフとフレンド」でも踊らせていただいたのですが、キューバのこのコンクールの現地コーディネート、審査員を務めるポール・シクエストが見に来ており、その直後に舞台上でキューバで踊ることが決まりました。個人ゲストは私1人で、コンクール参加者以外で踊ったのも私1人でした。私には、キューバのダンサーたちのように身体的アクロバティックな能力はないので、自分の良さを発揮できるよう感情を込めて踊ろうと思いました。
キューバではヨーロッパや日本のステージとは違って、舞台にはリノリュームもなく、限られた舞台装置の中で踊りました。前日の夜中の24時からリハーサルが始まり環境的には決して容易ではありませんでしたが、ダンサー、スタッフ、観客の心は1つで、そのような素晴らしい雰囲気の中で踊ることができたことは光栄ですし、一生の思い出です。

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最終日30日には、本選から選ばれたファイナリストたちが踊りました。
特に、印象に残ったのはカンパニー部門で出場した作品の数々です。他のどこにも類を見ないこのコンクールの特徴でもあるカンパニー部門では、30分の作品にダンサー、振付家、デザイナーのすべての魂がこもっていました。
「グランプリ カンパニー マラーホフ賞」は二つのカンパニーに授与されました。その一つ、カンパニー「Danza Espiral」は、自転車やスケートボードを使い、スニーカーを履いて踊り、反射神経と運動神経、アイディアが混然としたスピーディーな作品でした。もう一つのカンパニー「Danza del Alma」は、シェイクスピアの有名な作品のいくつかの部分を抜粋して1つの作品とし、照明を巧みに使って内容の濃い作品を作りました。全く違う2つカンパニーが同時受賞しましたが、他のどのカンパニーが受賞してもおかしくないくらい、それぞれがユニークな作品で参加していました。
また、「マラーホフに作品を寄贈」を受賞した、カンパニーMédulaのディレクターでもあるYoel Gonzalezは、振付家としてたいへん優れていました。その才能は、26歳というまだまだ若い彼が今後どのように世に出て行くのが楽しみです。彼は来年、ダンサー、マラーホフに作品を振付け、一緒に仕事ができるというすばらしい賞を受賞したのです。
期間中は、さまざまなテレビ局、ラジオ局、新聞社が全国から取材記者を派遣し、全国放送でも何度も何度もキューバで唯一のダンスコンクールとして大きく取り上げていました。

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キューバ中から集まったダンサーたちもお互いに声援を贈りとても良い雰囲気でした。すべてのダンサーがコンクールで踊るだけではなく、舞台経験や他のダンサーとの出会いなどでも、素晴らしい機会になったことは間違いありません。
マラーホフは毎朝9時から2時間にわたりりマスター・クラスを舞台上で行い、連日大勢のダンサーがクラスを受けました。クラスの後にはマラーホフ主催のくじ引きが行われ、当選したダンサーには援助金が配当されます。ダンサーたちも観客も連日、和気あいあいと時間を過ごしていました。
私はキューバに来たのは2回目で、アメリカとの国境が開かれてから1年が経っていたのでどのように変化しているか興味津々でしたが、ほとんど何も変わっていなくて少し嬉しい気持ちになりました。キューバは本当に時が止まっている感じです。この街に来ると、人間として大切なことを思い出すことができるような気がします。
コンクールに参加したほとんどすべての作品が世界初演、全く違う作品ですべてが全く異なる強いインパクトのある振付でした。機会があれば、こうした作品すべてを世界中のたくさんの方々に見ていただきたいと心から思いました。彼らは、人生を賭けてこのコンクールのために作品を作り、リハーサルし、身体と精神と感情のすべてを出し切って踊っているのが、直接、私の胸に生き生きと伝わってきました。ダンサーたちから溢れ出る感情とエモーションが、心に深く響き、とても温かい気持ちになりました。
マラーホフは、このコンクールはキューバのダンサーたちを援助したい思いから始めた、と話していましたが、まったく本当に世界で唯一の素晴らしいコンクールでした。

2017年も9月の末から10月にかけて、このコンクールが行われる予定です。出場者はキューバの国籍を持っている人に限られています。機会があれば、ぜひまた訪れて取材したいと思いました。

審査員は、ウラジーミル・マラーホフ、ポール・シークイスト、マリセラ・ゴドイの3人で、受賞者は以下の通りです。

受賞者 (カッコ内は、所属団体名)
Grand Prix Vladimir Malakhov:「グランプリ マラーホフ賞」
- Inés María Preval Castellanos (Médula, Guantánamo)
- Leonardo Domínguez Rodríguez (Codanza)

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Inés María Preval Castellanos (Médula, Guantánamo)
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Leonardo Domínguez Rodríguez (Codanza)

Grand Prix VM for Companies「グランプリ マラーホフ カンパニー賞」
- Danza Espiral
- Danza del Alma

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Danza Espiral
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Danza del Alma

Paul Seaquist Prize「ポールシー クイスト賞」
-カンパニー研修
- Anisleydis Estéves
- Lisset Saad Godoy

09_DSC0071.jpg Paul Seaquist Prize「ポールシー クイスト賞」Anisleydis Estéves

Codanza Choreography Prize:「振付家賞」
- Osnel Delgado (Mal Paso, La Habana)

Audience Prize「観客賞」

-Jesús Arias y Lizandra Gómez(Compañía: Endedans)

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Jesús Arias y Lizandra Gómez

Malakhov special Prize「マラーホフに作品を寄贈」
- Yoel Gonzalez (Médula, Guantánamo)

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Yoel Gonzalez