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大村真理子(マダム・フィガロ・ジャポン パリ支局長) 
[2014.12.11]

接戦を繰り広げたパリ・オペラ座の昇級コンクール詳細レポート

昇級コンクールの開催は11月に定着するかと思いきや、今年は数年前に戻って12月初旬に行われた(男子が12月3日、女子が12月6日)。ガルニエ宮では『ラ・スルス(泉)』、バスチーユでは『くるみ割り人形』の公演が続く毎日だ。ダンサーたちがコンクールの準備をするのは、時間の捻出はもちろん、肉体的 かつ精神的にさぞ大変だったことだろう。

コンクール出演順は、今年は名字の頭文字がアルファベットの I からだった。
クラスごとにみていこう。コリフェを目指す男子カドリーユはプログラムによると9名だったが、アレクシ・サラミットとタケル・コストが不参加の結果、7名となった。課題曲はピエール・ラコット振付の『パキータ』より第一幕のルシアン・デルヴィリィのヴァリアシオンである。これはカドリーユには技術的に難易度が高かったと感じさせる結果だったが、その中でコンクール初参加のパブロ・ルガザは先輩たちの向こうを張って、将来を期待させるパフォーマンスをみせた。彼はブリジット・ルフェーヴル前芸術監督のアデュー公演で『オーニス』を踊った一人で、その際にすでにテクニックのみならず芸術的にも優れたダンサーであることは証明済み。目下は『くるみ割り人形』の舞台で、白い制服に身を包み、白馬にまたがる騎兵隊長(くるみ割人形)で活躍中の上、公演後半では、中国の踊りにも配役されている。若さ溢れるエネルギッシュなソーを見せてくれるに違いない。
アントニオ・コンフォルティも昇級は適わなかったが、自由曲での健闘は特筆に価するだろう。若いながら、ロビンスの『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』のブラウン・ボーイのヴァリアシオンを情緒豊かに踊り、舞台上に爽やかなメランコリーを残した。

7名の中から二席のコリフェを得たのは、アントワーヌ・キルシェール(一位)とフローラン・メラック(2位)。自由曲に前者はバランシンの『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』、後者はフォーサイスの『パ・パーツ』を選んだ。アントワーヌの自由曲では彼が踊り終わったとき、コンクール中は拍手なしというのが約束事だが、会場から一瞬拍手が聞こえたほど。ピアノ伴奏がいささか速かったにも関わらず、エレガントできれのよい足さばきが乱れることなく見事だった。フローランはすでにコリフェ並みに配役されているので、この昇級によってふさわしい場所につくことができた、といえるだろう。自身の振付にもマクレガーやフォーサイスの影響が見て取れる彼なので、この自由曲の選択は説得力のあるものだった。
コンクールの結果発表時には昇級者を含め6位までの順位が発表される。このクラスの3位はパブロ・ルガザ、4位はアントニオ・コンフォルティ、5位はシリル・ショクルン、6位はアントナン・モニエだった。


141203po03.jpg アントワーヌ・キルシェール
(C) Opera national de Paris/ Sebastien Mathe

141203po04.jpg フローラン・メラック
(C) Opera national de Paris/ Sebastien Mathe

コリフェに移ろう。課題曲はヌレエフの『白鳥の湖』第3幕のプリンスのヴァリアシオン。スジェに上がったのは、ジェルマン・ルーヴェ(1位)とユーゴ・マルシャン(2位)の2名だ。学校時代の同級生で、昨年のコンクールで共にカドリーユからコリフェにあがった二人である。現在公演中の『くるみ割人形』ではコリフェながら主役ドッセルマイヤー役に配役されたことからも明らかなように、ミルピエ新芸術監督の期待を担った二人のダンサーともいえる。ジェルマンは自由曲『白鳥の湖』第一幕からのスロー・ヴァリアシオンで、まるで舞台公演を見ているような気にさせられるほど完成度の高いパフォーマンスを見せた。来年3月の『白鳥の湖』にプリンス役で配役されていないのが、惜しまれる。ユーゴ・マルシャンの自由曲は、ランダーの『エチュード』からマズルカ。しっかりした体躯の彼は舞台上にエネルギーを迸らせ、そのダイナミックなステップに一瞬カール・パケットが重なった。この二人の昇級はコンクールを見た誰の目にも、疑問の余地がない結果だろう。タイプの異なるこの二人が今後どのようにキャリアを築いてゆくのか、なかなか興味深い。
このクラスの3位はジェレミー・ルー・ケール、4位はアドリアン・クーヴェ、5位はミカエル・ラフォン、そして6位はマチュー・コンタ。

141203po01.jpg ジェルマン・ルーヴェ
(C) Opera national de Paris/ Sebastien Mathe
141203po02.jpg ユゴー・マルシャン
(C) Opera national de Paris/ Sebastien Mathe

さて1席のプルミエ・ダンスールを目指してコンクールに参加したスジェ8名。過半数を得たダンサーがいなかったということで、昇級者なしという結果に終わった。課題曲の『チャイコフスキー・パ・ドゥ・ドゥ』、自由曲ともに全員が甲乙つけがたく、それゆえ票が割れてしまったようだ。技術的にとりわけ光っていたのはフロリモン・ロリューとマルク・モローだが、強い個性を発揮したのは昨年のコンクールでスジェにあがったアクセル・イボとセバスチャン・ベルトーの2名だろう。アクセルは自由曲『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』からブラウンボーイの2つめのヴァリアション。彼は前回のコンクールで同作品の1つめのヴァリアシオンを詩情をたたえて踊り、昇級したのだが、今回はスピーディで軽快、パワフルなソロを選んで、自身が持つ可能性の幅広さを披露した。セバスチャンが自由曲に選ぶのは毎回なかなかユニークな作品である。前回はトワイラ・サープの『プッシュ・カムズ・トウ・ショヴ』、今回はジョゼ・モンタルヴォの『竪琴の笑い』だった。これは前回のコンクールでユーゴ・ヴィリオッティも踊ったが、ユーモア溢れる振付である。彼のパーソナリティに合ったセレクション。ゴーイングマイウエイ・スタイルが好ましいダンサーだ。

女子の部に移ろう。カドリーユ18名のコンクールには、たっぷり午前中を費やした。課題曲はヌレエフ振付『白鳥の湖』のパ・ド・トロワからのヴァリアシオン。コリフェに5席の空席があり、5名の昇級が期待されていたのだが、該当者は2名のみで、六位までの順次も発表されない結果となった。一位で上がったのはイダ・ヴィキンコスキ。北欧出身のダンサーである。彼女の高い音楽性に支えられた課題曲は、見る者の目にたいそう快適であった。自由曲に選んだロビンス『フォー・シーズンズ』の春のヴァリアシオンには優美さが漂い、穏やかさで瑞々しい踊りを見せた。2位のジェニフェール・ヴィゾッキも課題曲を見事にこなし、他の候補者を大きく引き離したのはイダ同様である。自由曲はトワイラ・サープの『グラン・パ』。オペラ座のコール・ド・バレエの中でもコケティッシュな愛らしさでは群を抜く彼女であるが、今回はそれに加えて人間的にも豊かな女性であることをこのユーモラスな振付の中に感じさせた。前シーズンの公演「若いダンサーたち」でミッシェル・ケルメニス振付『Réversibilité(可逆性)』という珍しい作品をシリル・ショクルン、アントニオ・コンフォルティとトリオで踊った彼女。その光り輝くような存在感に注目をした観客も少なくなかった。この昇級をきっかけに良い配役が得られることを期待したい。なお、ルーシー・フェンウィックがフォーサイスの『イン・ザ・ミドル・サムワット・エレヴェイテイッド』を、その長身を生かしてダイナミックに踊った後、観客の間で賞賛をささやき合う声があちこちから聞こえてきた。もし予定通り5名が昇級できたなら、その中に彼女は入れたのではないだろうか。

141206po04.jpg イダ・ヴィキンコスキ
(C) Opéra national de Paris/ Sébastien Mathé
141206po05.jpg ジェニフェール・ヴィゾッキ
(C) Opéra national de Paris/ Sébastien Mathé

2席のスジェを目指し、コンクールに臨んだのは11名のコリフェたち。課題曲はヌレエフの『ラ・バヤデール』第二幕のガムザッティのヴァリアシオンだった。美しいクードピエを持つ女性にはリスクのある振付だという。オニール 八菜もそのアイロニーの犠牲となり、一瞬足を落としてしまったのだが、動じることもなく素早く姿勢を立て直したのは実にあっぱれ。その課題曲の失点を補って余りある出来映えを見せた自由曲は、バランシンの『La Nuit de Warpurgis(ワルプルギュスの夜)』。春にオペラ座の『水晶宮』でコール・ド・バレエの中にあって際立つ存在感を放っていた彼女の、今後バランシン作品での活躍がより楽しみになった。
1位でスジェにあがったのは下馬評通りレオノール・ボーラックである。前シーズン、現芸術監督ミルピエが振付けた『ダフニスとクロエ』に配役され、今シーズンに入ってからはアロップ賞も受賞し、先日はジェルマン・ルーヴェをパートナーに『くるみ割人形』を初役で踊り・・と、着実にキャリアを築いているダンサーだ。課題曲『フォー・シーズンズ』の春のヴァリアシオンは、新しい季節の躍動感、力強さを感じさせるパフォーマンスだった。

141206po02.jpg レオノール・ボーラック
(C) Opéra national de Paris/ Sébastien Mathé
141206po03.jpg オニール 八菜
(C) Opéra national de Paris/ Sébastien Mathé

このクラスの3位はレティティア・ガロニ、4位ローレーヌ・レヴィ、5位ファニー・ゴルス、6位マリオン・バルボー。目下公演中の『くるみ割人形』では雪の精を踊るレティテイアのパワフルなソーを見ることができる。なお、5位のファニーは日本ではあまり知られていないダンサーではないだろうか。課題曲の『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』のグリーンガールのヴァリアシオンではアニエス・ルテステュやオーレリー・デュポンがこの作品で示した高い格調を思わせ、さらに女性的色香を漂わせた。例えば『マノン』のレスコーの妾役などが似合いそうなダンサーだ。

141206po01.jpg ローラ・エケ
(C) Opéra national de Paris/ Sébastien Mathé

コンクールの最後に、プルミエール・ダンスーズ1席を巡りスジェ6名が大接戦を展開した(7名の予定だったが、シルヴィア・サンマルタンが欠場)。その結果、これまでの経験を支えに課題曲も自由曲も確かなテクニックで踊ったローラ・エケが昇級した。これは怪我ゆえに何度かコンクールを逃してきた彼女だけでなく、日本のバレエファンも長く待ち望んでいたことだろう。2位はエロイーズ・ブルドン、3位はセ・ウン・パーク、4位はキャロリーヌ・ロベール、5位はマリーヌ・ガニオ、そして6位がシャルリーヌ・ギゼンダネーという順位である。

エロイーズはリファールの『ミラージュ』を自由曲に選び、これまで彼女がオペラ座で見せる機会のなかったタイプの役柄にチャレンジ。マリーヌは前回のコンクールは出産のため参加していないが、そのブランクを感じさせぬ見事なパフォーマンスだった。とりわけ課題曲の黒鳥では、技術面だけでなく芸術的にも優れていることを証明。来年のコンクールでは、今回のコンクールでスジェとなったレオノールと八菜がこの彼女たちに加わって、プルミエール・ダンスーズのポストを競うわけである。何席あるかはわからないが、たいそうスリリングなコンクールとなるに違いない。

なお、今回の審査員は以下のメンバーである。オペラ座総裁ステファン・リスナー、バレエ芸術監督バンジャマン・ミルピエ、メートル・ドゥ・バレエのクロチルド・バイエール、サンフランシスコ・バレエ団プリンシパルのマリア・コシュコヴァ、NYCBおよびABTのプリンシパルダンサーだったイーサン・ステイフェル、そしてカンパニーからはオーレリー・デュポン、バンジャマン・ペッシュ、オーレリア・ベレ、ミリアム・カミオンカ、アレクサンドル・カルニアート。