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関口紘一 
[2018.01.18]

新国立劇場の2018〜19シーズのプログラムが発表された

1月11日、新国立劇場のオペラ・舞踊・演劇3部門の2018/19シーズンのプログラムの発表があった。
バレエの2018/19シーズンは、2018年11月『不思議の国アリス』(クリストファー・ウィールドン振付、2011年英国ロイヤル・バレエ世界初演)、12月『くるみ割り人形』、2019年1月「ニューイヤー・バレエ」(『レ・シルフィード』『火の鳥』『ペトルーシュカ』)、3月『ラ・バヤデール』、4〜5月『シンデレラ』、6月『アラジン』がバレエである。毎度のことなので、あまり期待もしていなかったから失望もしなかったが、私にはこの日本のオペラハウスの舞踊プログラムは他部門と比べても、何か無気力なものに見える。
単純に比較してみても、オペラ部門は計10演目を予定しているが、世界初演を含む新制作が5本、演劇は全8演目中新作2、日本初演1、新訳上演3作で、単なる再演はハロルド・ピンターの『誰もいない国』のみである。
バレエの新作は「ニューイヤー・バレエ」で上演する中村恩恵振付の『火の鳥』のみで、オペラ パレスで上演する新制作は『不思議の国のアリス』だけ。この作品が大ヒット作であることは、バレエにちょっとでも関心を持っていれば誰でも知っている常識中の常識だ。英国ロイヤル・バレエは企画時からこの作品が世界中で競って上演されるであろうことを計算済みなことも明らかだろう。日本の舞踊の芸術監督は、ロイヤル・バレエのディレクター、ケビン・オヘアに会って、これはお金が掛かる大作なので、オーストラリア・バレエとの共同製作の話しをつけたことを、記者の前で披露した。しかし、オーストラリア・バレエではとっくに上演が終わっている。2011年に世界初演され日本でも本家による日本初演済みのこの作品を、日本の観客のために、どうしても上演したいと思っていたのであろうか。客観的に見て完全に一周後れのオファーだった。(オーストラリア・バレエのディレクターのように)世界のオペラハウスの動向をしっかりとみているのであれば、もっと迅速に動かなければ、再演のためのイニシアチブすらもとれない。今頃、採り上げれば逆に日本のバレエと世界のそれとの周回遅れの距離を証明するような効果が生まれてしまっている。
そしてバレエには他に新作はおろか新制作なし! オペラ、演劇部門は新任の芸術監督だから意欲的なのだろうが、そうだとしても違いはあまりに大きすぎる。バレエ部門は新たな試みに全く無頓著すぎるのではないか。古典の伝統を守るということは、同時に新しいことに挑戦し続けることである。温故知新というではないか。新しい試みのないのは、伝統も知らないということの証明である。
『シンデレラ』はたしかに良いレパートリーではあるが、昨年12月に上演したばかり。多くの場合バランシンがあり、バレエ・リュスがあり、ビントレーの新作などが織り込まれていた過去のプログラムよりは明らかに後退している、と言わざるをえない。有料入場者数のことが常に頭にあるのであろう。しかし、たとえ有料入場者数が増えても、日本のバレエを導いていくヴィジョンが見えてこなければ、国立のオペラハウスの責任を果たしていない。
舞踊の芸術監督は「ダンサーを訓練するのが私の役目だと思っている」と毎回のように言っている。しかし、凡庸なプログラムを日々踊っていても良いダンサーは現れない。本当に優れたダンサーは優れた作品を踊ることによってしか生まれない。また、観客が入りそうな演目を漫然と並べて事足れりとしているカンパニーから生まれることはない。そう思えるのである。

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▼新国立劇場 公式サイト
http://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_011681.html