[2004.07.11]

ルジマトフが踊る笠井叡作品はモーツァルトを使う


前号の「ピックアップ・ザ・ステージ」でお知らせしたルジマトフと笠井叡のコラボレーションが、少しづつ見えてきた。このタイトルがまだ決定していない作品は、9月末から10月初めにかけて行われる「ルジマトフのすべて」公演で世界初演される。

先日、シアター・テレビジョンがルジマトフのインタビューを収録したが、その際、笠井叡のスタジオ<天使館>で行われていたルジマトフのリハーサルの模様を一部カメラに収めることが許された。私も終始立ち会っていたのでその様子をお伝えしよう。

ルジマトフの日本滞在も終わりに近づき、小品ではあるがむしろ小品である故に、ダンサーと振付家の気持が高まっているのが、近くにいると手にとるように 分かる。スタジオの中には緊迫感が漲っている。一旦、スタッフは外に出て待機し、リハーサルの進捗状況を見守ることになった。どのくらい待ったろうか、食 事をしてお茶を飲み終ったころ、「カメラOK」の連絡が入り、再びスタジオへ。

ルジマトフの身体が引き締まっている。舞台でみるあの精悍な動きの鋭い軌跡が目の前に感じられる。
パソコン操作により音楽が流れる。天使が躍動し、鋭利な刃が空気を切る感覚。音楽の中に、ルジマトフ自身の声がコラージュされている。笠井のテキストをルジマトフがロシア語で一語づつ鋭く発声しているのである。

時のクレヴァスの中……/息の結晶/誰のものでもない両手/光の風に……/咲きほこりながら……/空は墓地/荒れ果てた天/讃えられてあれ……

といった意味の言葉が、ルジマトフの呼吸で彼の身体のリズムで吹き込まれている。ルジマトフも音楽の中に自分の身体のリズムが刻まれているから、笠井の振りをシンクロさせやすかいのではないか、しっかりしたリズムで見事な動きが構成されている。

これは素晴らしい作品になるに違いない、そんな確信が生れた。今年の秋は大きな楽しみが待っている。


(関口紘一)