[2004.04.11]

SONEZAKI―曽根崎心中―」ヘレス・フェスティバルへ参加

阿木燿子 プロデュース・ 作詞 / 宇崎竜童 音楽監修・作曲
鍵田真由美・佐藤浩希 演出・振付・主演  
 フラメンコの本場アンダルシアには、数多くのフラメンコ・フェスティバルがあります。 中でも、国際的かつ大規模なフェスティバルなのが、セビージャのビエナルとヘレスのフェスティバルです。 そのフェスティバル・デ・ヘレスが、さる2月から3月にかけて2週間にわたって行なわれ、日本はもとより海外から初めて、「SONEZAKI」が参加、 3月9日、サラ・ラ・コンパニア劇場で、上演されました。総勢40名以上の出演者・スタッフが渡西、私もそのスタッフの一員として、同行しました。

演出・振付・主演の鍵田真由美と佐藤浩希は、フラメンコダンサーとしての傑出した実力とコリオグラファー・舞台人としての高いセンス・美意識を持ち、こ れまでにも数々の意欲作を発表しているフラメンコ界きっての異才。「SONRZAKI」(日本での作品タイトルは「FLAMENNCO 曽根崎心中」) は、 二人が、阿木燿子作詞、宇崎竜童作曲による楽曲を元に構成・振付し、近松門左衛門の世界をフラメンコで表現した作品です。
和楽器とフラメンコ音楽との濃密なコラボレーション、日本人の感情をフラメンコ舞踊の技で見事に表現した振付、鍵田・佐藤を中心とした踊り手たちの高い表現力、 史上初の試みだった日本語の歌詞を舞うフラメンコ舞踊劇として、日本の創作フラメンコの新地平を示したこの作品ですが、 いいかえればそれは、日本が発信するオリジナルなフラメンコでもあるわけです。いうまでもなく、フラメンコはアンダルシアの民俗芸能であり、 絶対的な様式美を誇り、伝統を重んじるこの世界では、新しい創造には、常に保守的な制約かつきまといます。しかも異国の日本人の、この大胆なトライアルを、 スペインの人々はどう、受け止めたのでしょうか?心中という極めて日本的な情念は、理解されたのでしょうか?
果たして、幕が上がり作品が始ると、会場はすぐさま、尋常ではない熱気に包まれました。 作品の途中の要所要所で、拍手が沸き起こったのです。それは、日本の公演会場でも見られなかった反応でした。 そして最後には、満場のスタンディングオーベーション。目に涙を浮かべていた観客が大勢いました。

翌日の現地の新聞、ディアリオ・デ・ヘレスでは、一面トップに大きく「SONEZAKI」の写真を掲載し「フラメンコは、国境越えた」と報じました。 「SONEZAKI」が単なるフラメンコの模倣ではなく、自分たちの創作のビジョンをはっきりと持ったものであり、 作り手・出演者ともに、自らのオリジナリティに真摯に向き合ったその姿勢こそが、称えられたのです。 更に、「鍵田と佐藤は、今まで外国人のいかなるフラメンコ・アーティストもなし得なかったことをやり遂げた」等、マスコミ各紙が絶賛といってよい記事を掲載しました。

オリンピックではありませんが、フラメンコのメッカ、ヘレスのこのフェスティバルに参加すること自体、フラメンコ的には“歴史的快挙”、といってよい出来事です。 が、公演が終わった今、この「SONEZAKI」は、それ以上の大きな反響、手応えをつかんだといっていいでしょう。 スペインから遠く離れた東方の地日本で、フラメンコは、数十年をかけて育まれてきました。その実りの旗印を今回「SONEZAKI」が担ったといってよいでしょう。

「『曽根崎』で、あえて特別なことをやっているつもりはないんです。基本的には、いつもフラメンコでやっていることと同じこと、 嘘のない衝動としての動きの積み重ねを踊っているのです」と、佐藤は、あるインタビューに答えている。 「ヘレスだからといって、特別なことはありません。これまでやってきたことを、自然体で表現したいと思っています」とは、ヘレス公演に際しての鍵田の言葉。 これらの言葉に象徴される二人の、フラメンコに対する真摯な取り組みと、創造への信念が、作品「SONEZAKI」を作り、このたびの栄誉を呼び寄せたのだと思う。

なお、「SONEZAKI」ヘレス公演の取り組みは、フジテレビの「NONFIX」というドキュメント番組(4月22日深夜26:35~)で放映されます。




「公演前日に行なわれた記者会見会場で」