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[2007.11.10]

新国立劇場『椿姫』のリハーサル速報

  新国立劇場開場10周年のシーズンを記念して制作される、牧阿佐美の振付による『椿姫』のリハーサルが盛んに行われている。
この公演は、新国立劇場バレエ団が10年間の活動を集大成し、総力をあげて制作する大作バレエであり、<開場10周年記念フェスティバル公演>として世界初演する日本のバレエの期待を担った舞台となる。
牧阿佐美は、1998年に『椿姫』をヴェルディの音楽を使用して、アザリー・プリセツキと共同で振付けている。しかし、今回の『椿姫』は、すべてベルリ オーズの音楽を使用する。これは、原作のデュマが描いた1840年代パリの濃密な空気を、同時代を生きたベルリオーズの音楽によって、舞台に甦らせようと いう試みである。
しかし、これはまた大きな挑戦と言ってもいい。エルマノ・フローリオが編曲した音楽を駆使して、当然のことながら一歩一歩振付けていかなければならず、 これが想像を越えるようなじつに膨大な作業となる。もちろん基本的なものは既にできているが、振付もまだ可変的なことが多く、主役級のリハーサルは現時点 では公開されていない。

まず、まだ休憩が終わっていいないAリハーサル室に入った。ダンサーたちがあちこちにかたまっていて、ストレッチをしたり、振りの復習をしたり、寝そ べって休んだり、バーに捕まって談笑したりしている。主役マルグリットに扮する酒井はな、本島美和、田中祐子、アルマンを踊る山本隆之、菊地研の顔も見え る。
すると一隅で、♪ハッピー・バースディ♪の歌声。伯爵役を踊るイルギス・ガリムーリン、そのほかにも二人の男性ダンサーの誕生日だったのである。一瞬にして照れくさそうな彼らに視線が集まり、スタジオの中は和やかな雰囲気に包まれた。
振付の牧阿佐美がアシスタントの大原永子とともに入場すると、ダンサーたちもいっせいに、「さあ、仕事だ」という感じになり、スタジオにも緊張が走る。
すぐに、サロンの客たちの踊りである、4組のカップルによるワルツのリハーサルが始まった。新国立劇場の研修生から入団して、ソリストに昇格した小野絢子も加わっている。
女性が男性に抱きかかえられる振りがスムーズに流れないとみると、牧阿佐美が、さっと男性に手に乗って、お手本をみせる。瞬間的な早業だったが、<バランスの天才>と讃えられたバレリーナ、牧阿佐美が彷彿とした。
こうして日々、少しずつ振付が創られていく。
  Bリハーサル室では、<プリュダンス>のサロンで踊られる女性3人のチャルダッシュのリハーサル中。指導は小林紀子だった。ダンサーは遠藤睦子、西山裕 子、丸尾孝子のトリオが元気よく踊っている。こちらはデヴェルティスマンとして踊られるもので、振りは既にできていて丁寧に細かい修正が行われていた。
新国立劇場のリハーサル室には、新しい大作のダンスを創るという活気が溢れていて、傍らで見ていてもダンサーたちの熱気が肌に伝わってくる。
クラシック・バレエのオリジナルの全幕物は、世界的にみても近年ではあまり制作されていないし、成功作もほとんど無きに等しい。それはひとつには、ス タッフ・キャストを始めとする関係者の膨大なエネルギーを必要とするからである。その想像を絶するようなエネルギーを生み出すためには、熱気あふれる創造 意欲と困難にもめげない決意がなくてはならない。10周年を記念して大きな作品創りに挑戦する新国立劇場バレエ団に、ぜひとも、気持ちのこもった芸術的意 欲に溢れる舞台を期待したい。
(関口紘一)
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●11/4(土)~11(土)
●新国立劇場オペラ劇場
●演出振付=牧阿佐美
●出演=
[マルグリット]スヴェトラーナ・ザハロワ(4・6日)/酒井はな(7日)/本島美和(10日)/田中祐子(11日)
[アルマン]デニス・マトヴィエンコ(4・6日)/山本隆之(7日)/菊地研(10日)/ロバート・テューズリー(11日)
[アルマンの父]ゲンナーディ・イリイン(4・6・10日)/森田健太郎(7・11日)
[伯爵]ロバート・テューズリー(4・6日)/冨川祐樹(7日)/イルギス・ガリムーリン(10・11日)
[プリュダンス]西川貴子(4・6日)/湯川麻美子(7・10日)/厚木三杏(11日)
●S席12,600円/A席10,500円/B席7,350円/C席4,200円/D席3,150円
●開演時間=4・10・11日14:00、6・7日19:00
●お問い合せ=新国立劇場 http://www.nntt.jac.go.jp/