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関口 紘一
[2016.04.22]

東京バレエ団が3年ぶに上演する『ラ・シルフィード』リハーサル
斎藤友佳理芸術監督と主演の渡辺理恵、沖香奈子、宮川新大、松野乃知は語る

斎藤友佳理が東京バレエ団の芸術監督に就任して以来、力強い舞台を創ったブルメイステル版『白鳥の湖』に続く、第二作目は『ラ・シルフィード』の3年ぶりの上演だ。斎藤監督が直接指導するリハーサルを見せていただき、その後の記者懇談会にも参加した。

1604tokyo_b04.jpg渡辺理恵、宮川新大 photo/Nobuhiko Hikiji

『ラ・シルフィード』のリハーサルはダブルキャストの主演者が、それぞれ第一幕と第二幕を踊った。第一幕は渡辺理恵のシルフィードと宮川新大(あらた)のジェームス、第二幕は沖香菜子のシルフィードと松野乃知のジェームスだった。
周知のように『ラ・シルフィード』は、第一幕は人間の世界、第二幕は妖精の森、と幕ごとに設定ががらりと変わる。斎藤監督は今回、敢えて渡辺と沖が得意としていないほう幕を選んでリハーサルを公開した。また、スタジオの地明かりだけで踊ることは、ダンサーにとって、たいへん難しいことなのだそうだ。こうした難しい環境で、幕を通して踊ることで、本番へさらに自信をつけてほしい、という気持ちもあったというが、それだけの自信もなければできることではない。
第一幕で渡辺理恵のシルフィードは、少し悪戯っぽい表情を活き活きと浮かべ、人間とは異なった生き物である妖精の命の不思議さを垣間見させる動きをみせた。一方、宮川新大のジェームスは安定した動きで落ち着いて、自身でも思いもよらなかった気持ちの変化を表した。宮川はユース・アメリカ・グランプリのニューヨーク決選で三位入賞、セルゲイ・フィーリン前監督のモスクワ音楽劇場バレエ団に入団、その後ヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞受賞し、ロイヤル・ニュージーランド・バレエ団に入団。昨年、東京バレエ団にソリストとして加わっている。モスクワ音楽劇場バレエに在籍したときには、ピエール・ラコットと斎藤友佳理の前で『ラ・シルフィード』のオーディションを受けた。その宮川が自分の下でジェームスを踊ることになるとは、と斎藤監督もいささかの感慨を吐露していた。

1604tokyo_b02.jpg 沖香菜子、松野乃知 photo/Nobuhiko Hikiji

第二幕の沖香菜子のシルフィードは見事に脱力した軽快な動きで、この作品にふさわしい「軽さ」を表現していた。松野乃知のジェームスはダイナミックで活力のある踊りだった。リハーサルでは演舞の最中にも、斎藤監督の鋭い指摘が次々と発せられる。それはコール・ド・バレエが踊っていても、「一人一人がこの作品に相応しい自分らしさを存分に表しなさい」また、「ボディを前がかりに保って、後ろに反り返らないように」、といった注意点が多かった。
斎藤監督は、ロシアのボリショイ劇場やマリインスキー劇場で『ラ・シルフィード』を踊り、大いに好評を博した。またこのフィリッポ・タリオーニ原案の『ラ・シルフィード』を振付けたピエール・ラコットのアシスタントとして、前述のようにモスクワ音楽劇場バレエ団を指導している。そして2013年には、東京バレエ団にこの作品を指導している。その時に主演したのが、渡辺理恵と柄本弾、沖香菜子と松野乃知だった。今回は渡辺のパートナーこそ代わっているが、三年振りの再演となり、ダンサーとしての成長振りを見せる良い機会でもある。
渡辺は、三年前はキャリア豊かな柄本弾とパートナーを組み、いろいろと学ぶことも多かったが、今回は初めて踊る宮川と組むので、「自分から発していかなければならない」と責任感をみせる。というのも今年4月、渡辺理恵はプリンシパルに昇進したからだ。斎藤監督はその渡辺を評して、「まだプリンシパルになって19日しか経っていないのに、もう風格を感じる」という。

1604tokyo_b03.jpg 渡辺理恵 photo/Nobuhiko Hikiji

やはり3年ぶりにシルフィードを踊る沖香菜子は、とても頭の良いダンサーで、一度アドヴァイスしたら、二度と同じことを言わせないダンサー。三年前からは大人になり、今回はさらにとても良い雰囲気をだしている。ダンサーが成長していくためには、彼女のように頭を使って練習していくことがとても大切です、斎藤監督はという。再び沖とパートナーを組む松野は、東京バレエ学校出身で、12年に「子どものためのバレエ『眠れる森の美女』」のデジレ王子、13年には『ラ・シルフィード』と全幕ものの主演を務めている。松野は「斎藤監督には多くのことを教えていただき感謝している。3年間で成長した、と変化を感じている。今の自分に出来るジェームスを踊りたい」。また「自分の昔のビデオを観ると、あの頃のほうがフレッシュだったかもしれないと感じた。これからもあのフレッシュさを忘れていはいけないんだ」と思った、と笑わせた。斎藤監督は「彼が毎日毎日変わっていくのが分る。かべにぶつかってからも努力している乃知を見守ってきた」と語った。
そしてラコット版『ラ・シルフィード』は、斎藤監督にとっては、初めて指導者としてスタートした記念すべき作品である。それだけに会見では、良い舞台に仕上げようという内に秘めた情熱が熱く感じられた。4月29日、30日の公演が楽しみである。

1604tokyo_b01.jpg photo/Nobuhiko Hikiji
1604tokyo_b05.jpgphoto/k.Hasegawa

東京バレエ団『ラ・シルフィード』全2幕

●2016.4/29(金・祝)・30(土)
●東京文化会館
●出演=[ラ・シルフィード/ジェイムズ]
29日 渡辺理恵/宮川新大
30日 沖香菜子/松野乃知
●開演時間=14:00
●お問い合わせ=NBSチケットセンター 03-3791-8888
(平日10:00〜18:00、土曜10:00〜13:00)
http://www.nbs.or.jp/

1604tokyo_b06.jpgphoto/k.Hasegawa