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インタビュアー 浦野 芳子
[2012.11.27]

金森穣、『中国の不思議な役人』『solo for 2』について語る!!

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近くて遠い新潟…この12月KAAT神奈川芸術劇場にNoismが初登場する。上演するのは昨年夏の「サイトウ・キネン・フェスティバル松本2011」で大喝采を浴びた『中国の不思議な役人』と、そしてこの春、NHKバレエの饗宴で上演し圧倒的な印象を残した『solo for 2』の2本。『中国の不思議な役人』は、観たくてもサイトウ・キネン・フェスティバル2011のチケットがあっという間に完売で〜と嘆く向きも多かった、幻の作品。『solo for 2』は過去“academic”というタイトルで創作されたものを再構築した作品で、こちらも一夜限りの上演だったため泣く泣く見逃したファンが多い。
どちらも、心待ちにしている人の多いこの公演。実は「新潟の皆さんに見せたくて」というチョイスだという。クールな金森氏の、ホットな一面に触れ、心がじわっ。

-『中国の不思議な役人』は、昨年の「サイトウ・キネン・フェスティバル松本2011」で上演するために振付けられた作品ですよね。あの夏は、ひと月以上の間メンバーたちと共に松本で寝起きしながら、作品を創っておられましたが、それまでの作品創りとは違う面、苦労した面などもあったと思います。

金森 作品の依頼は、その一年以上前に頂いていたので、構想については時間をかけて熟成させていった作品だと言っていいかも知れません。
けれども何より大きかったのは、小澤征爾さんという偉大な存在によって成り立っている大きなフェスティバルである、という点でしたね。例えるならば、小さな船に乗った我々Noismが、いきなり大きく立派な船に横付けされ、大きな船が起こす波に揺られに揺られた…というような経験でした。それは、金森対Noismの舞踊家、といういつもの創作のステップでは体験できない“Noismとして”貴重で、有意義な時間でした。

-はじめにオペラありき、というところが大変だったのでしょうか。それとも舞台のスケールの大きさでしょうか。

金森 作品創りのプロセスとしては、そんなに変わらなかったですね。けれども、総合的な舞台芸術としてのスケールが、圧倒的に違いました。
オペラの舞台というのは、我々が創作してきた舞踊の舞台からみたら、考えられないような大規模な予算で動いているんですね。あれだけの空間を創ることは、オペラでなければ実現できなかっただろうと思います。

―多数の人形たちを出現させていましたし、宙づりの仕掛けやきらびやかな照明もありましたが…

金森 背景に黒いドームがあったでしょう?

―黒いトンネルのようなもので、ラストシーン、その光の穴に黒衣と黒衣の人形たちが吸い込まれるようにして消えていくのが何か象徴的でした。

金森 あれは一枚の絨毯を丸めてドームにし、天井から700本のワイヤーで吊っているんです。舞台美術は建築家の田根剛氏が担当しましたが、このときは構造家の坪井氏にも参加してもらい、重量や力点などを計算してもらっています。つまり、ふつうの予算では創りえないものを、普段は使えない人件費をかけて、実現できたということなんです。
加えて、一流のオーケストラの生演奏で踊れたということはすごい経験でしたね。(井関)佐和子なんかは、ボストン交響楽団の主席クラリネット奏者の音でソロを踊っているのですが、スタジオで一対一で音と踊りを合わせたとき、ものすごく感激していました。舞踊家たちが音楽的にハイレベルなインスピレーションを得ながら踊れたということは、Noismの力だけではできないことです。

―今回は、生のオーケストラではないですが…

金森 そうです。今回はドームも生のオーケストラも使いません。ですから、空間はシンプルになり、生演奏の豊穣性は無くなります。全体としてのインパクトは薄まるかと思うかも知れませんが、だからこそ舞踊というものの力でドラマを力強く伝えるようにしたいですね。

―『中国の不思議な役人』は、「サイトウ・キネン・フェスティバル2011」では大喝采を浴び、NHK BSプレミアムで放送された折には幅広い人たちから高く評価されていましたよね。はじめてNoismを観る人たちから高い評価を得る、またとない機会でした。Noismとしてのゆるぎなさとか、作品創りにおける自信だとか、そういうものにつながったのではないでしょうか。

金森 特に、評価された作品だからどうこう、というのはありません。それよりも、その作品が自分にとって、我々Noismにとって信じられる価値を持つものかどうか、ということが肝心で、評価に対する感謝はありますが、だからといって思い入れが強くなるかと言うとそうではありません。
ただ、この『中国の不思議な役人』は、それ以前の数年間自分の中に在った“娼婦”、“生け贄”、“人形”、などといったテーマが、この作品を通して一気に自分の舞踊観として固まった作品になったと思っています。
また、サイトウ・キネン・フェスティバルの後からは、まず楽譜を入手し、音楽的背景を読み込んでから創作に向かうことが習慣になりはじめています。そうすることで作品創作の情報量が増える。若いころは直感的に作っていたものが今は勉強することで、分析や理由づけが明確になり、意味が深くなっていくのです。ですから、ありがたい経験だったと思います。

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―もうひとつの『solo for 2』は、09年に上演された『ZONE〜陽炎、稲妻、水の月』の中の“academic”を再構築したもので、今年春の「NHKバレエの饗宴2012」で上演し、こちらも大喝采を浴びたものです。ただ、作品の見え方としては“academic”の時よりもコンパクトに、そしてより抽象性が高まっている感じがします。

金森 “academic”のときは、作品性よりテクニックを前面に押し出しました。けれどもこの春、再演するに当たり、音楽的構造を理解した上でもう少し作品性を追求しました。つまり“academic”がデッサンなら、“solo for 2”は色付けされた絵画です。
“academic”のときは、ボーイズ、レディース、アンサンブル、ソロ、という構造を持たせていましたが、今回はタイトルの通り、“2のための1”。つまり二人の舞踊家で見せる構成。音楽はバッハの<無伴奏バイオリンのためのパルティ―タ>。独奏である事から、コンセプトを導き出しています。無伴奏、すなわち左手にバイオリン、右手に弓。単独では何もなさないが組み合わさった時に音楽になる。それは人間のコミュニケーションとも同じです。

-舞台に並ぶ、足を切られ斜めに傾いた椅子も何か象徴的です。

金森 これは美術の須長檀氏と、ご飯を食べながら長々と話していて生まれたアイディアなんです。椅子は座ってもらうことで椅子としての役割や価値が生まれる。ならば、誰かが座ってくれないと存在が成立しない椅子ってどんなものだろう、って。そういう椅子があったら面白くない?って。椅子としての痛みや寂しさ、そんなアイディアから、脚が一本折れていて、ひとがいないとカタッ、て傾いちゃう、そんな“誰かを必要としている椅子”が生まれました。

―舞踊家も、音楽も、そして椅子も。舞台上に現れるすべてのモノが常に他の存在を求めている、それが『solo for 2』なんですね。

金森 極論を言うと、“academic”は身体性だけを見せるものでした。そこから発展した『solo for 2』は、どういう意味を持ちそこに在るのか、存在と関係を考えていく作品です。実は、動きそのものは“academic”のときからほぼ変わらないんですが。

―最近のNoismの傾向として、ひとつが『中国の不思議な役人』のような演劇性の高い作品であり、一方で以前から金森さんが言っている“身体性”をシンプルに突き詰めたものが『solo for 2』ですよね。今回この2作品を同時に上演するというのは、意図的なことなのでしょうか。

金森 偶然です。単純に、この2作品を新潟のお客さんに見せたい、そう思ったから上演することにしたんです。新潟で見せてないのは、この2作品だけなんです。

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―同時に、神奈川芸術劇場でも2日間にわたり上演されますが、神奈川は金森さんの故郷でもありますよね。

金森 こちらも、たまたまです。が、この年齢になると生い立ちなどをかんがえるようになりますね。ですから単純に、縁を感じます。

-今後は神奈川をひとつの足場にして、関東でも積極的に公演を行っていただけると嬉しいのですが…

金森 Noismとしての力、舞踊家として日々踊りに向かっているメンバーたちの存在を見せていくためにも、これからは首都圏でも公演を行った方がいいのかなと、考えるようになりました。可能なら、定期的に公演のできる劇場と組みたいですね。
そして、新潟のNoismとして広い意味で日本の劇場文化にも貢献したいですね。最終的には、関東で公演を行うことで、わざわざ新潟まで足を運んでくださるお客さんが増えたらいいと思っているのですが。
新潟は街を少し離れると自然がいっぱい。今は“水と土の芸術祭”もやっているからそうしたスポットをめぐりながら美しい景観に触れていただけると思います。また、劇場の近くにある上古町には、若い人たちがセンスのいいお店をオープンしたりして、賑わいを見せるようになりました。

―海外公演も多かった今年ですが、来年はいかがですか。

金森 5月に新作をやります。ある意味で“再スタート”となる作品になりそうです。海外公演も予定はしており、スペインをはじめヨーロッパ方面から声をかけていただいています。

―来年の新作も楽しみですが、まずはこの12月の公演でますます研ぎ澄まされたNoismの舞踊家たちの表現に再会できることにわくわくしています。ことに首都圏のファンにとってはまたとないチャンスですからね。新潟にも行きますが…でも、定期的に関東で公演してくださるようになったら、本当に嬉しいです!!

Noism1 & Noism2『solo for 2』

●演目=

・『solo for 2』

NHKバレエの饗宴2012」招待上演作品
演出振付=金森 穣

出演=Noism1

・『中国の不思議な役人』

「サイトウ・キネン・フェスティバル松本2011」
オリジナル作品
「バルトーク・ダブルビル公演」より


演出振付=金森穣

出演=Noism1&Noism2

<新潟>
●12/20(木)、21(金)

●りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

●一般5,000円/学生2,500円(全席指定・税込)

●開演時間=19:00



<神奈川>

●12/25(火)・26(水)

●KAAT神奈川芸術劇場 ホール

●5,500円(全席指定・税込)

●開演時間=19:00
●お問い合わせ=りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521(11:00〜19:00/休館日を除く)