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インタビュー / 佐々木 三重子
[2018.05.12]

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ公演『リーズの結婚』のタイトルロールを踊る
プリンシパル、平田桃子に聞く

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)のプリンシパル、平田桃子が、3年振りの来日公演で『リーズの結婚』のタイトルロールを踊る。相手役は、パリ・オペラ座バレエ団の人気のエトワール、マチアス・エイマンである。2003年に入団し、2013年にプリンシパルに昇格して以来、充実した活躍を展開する平田に、今回の公演の抱負などについて聞いた。

『リーズの結婚』は、前に一回だけ踊ったことがあるという。農園主の一人娘のリーズが、母が強いるアランとの結婚を退け、恋仲のコーラスとの結婚を勝ち取るという物語で、多彩なダンスやコミカルな芝居が散りばめられている。
「初めて踊ったのは2014年で、今回が2度目です。リーズは本当に大変な役です。技術面だけではなく、リボンなど小道具を使いますし、マイムも多く、いろいろな要素が詰まった作品でもあるので、前回は、まだ全部が充分につかめないうちに終わってしまったという感じでした。だから今回、演じ直すことができて嬉しいです。リーズは自分に近い存在のように思います。『眠れる森の美女』のオーロラなどは別世界の人ですけれど、リーズは割りとそのまま演じられるかなという感じです。彼女はコーラスにしか目がなくて、誰が何と言おうと、他の人には全く興味がない。とても情熱ですよね」と、楽しそうに言う。

1805hirata01.jpg photo/Mizuho Hasegawa

マチアス・エイマンとはバーミンガムで既にリハーサルをしたそうだが、どのような印象を受けたのだろうか。
「リハーサルは4日間でしたが、とても貴重な4日間でした。エイマンは、オペラ座で長年エトワールとして活躍されていて、イメージ的にはいかにもプリンスという感じですが、結構、気さくな方でした。技術的にはもちろん言うことなしで、私が一緒に並んでいるのがお恥ずかしいくらい。イメージと違って、彼にはやんちゃな面もあるし、そのままで役を演じられるのではないかと思えるほどでした。完璧なコーラスではないかと思います。踊りのスタイルなど、オペラ座と若干、違いはありますが、掛け合いはすごくやりやすかったし、どんな対応もしてもらえるので有難いです。リハーサルの初日、ちょっと違う振りがあるのをバーミンガムのバレエミストレスは承知していて、自然な流れだったら止めないからと言うのでやってみたらと、すんなりできました。彼は彼なりのフランスの流儀というか伝統で、私は私なりのイギリスで培ったもので踊ったら、すごく面白い組み合わせになると思います。これは楽しくなりそうだなと思いました」と、興奮気味に語った。
「彼はオン・オフがはっきりしていて、仕事が終わったら何するのとか、じゃあ一緒に食べに行こうかと聞いてくださったりする。私はプライベートな面で一緒に過ごす時間も大切にしています。そういうのも、必ず舞台に出てくると思いますので。バレエの話しは60パーセントぐらいで、あとは、どこに行ったとか何をしたとか、ですね。彼は、ゲストで呼ばれる機会も多いので、その都度違うカンパニーに出るのは刺激になると言っていました」

リーズを演じる上で難しいのは、どんなことだろうか。
「マイムは、初めて演じた時は苦労しました。マイムだけで、どう自分の感情を表現したら良いのだろうって。指導を受けて経験を積むうちに、自分で楽しまないとマイムは伝わらないのではないかと思い、悲しい表現をしたい時は悲しい感情でというふうに、一つ一つの意味を考えながらしてみると伝わるものだと思うようになりました。踊りのテクニックよりも難しい面があるし、テクニックとはまた違う経験が大事になってきます。特に第3幕は、踊りよりも演じることのほうが多いくらいなので大変です。結婚した後の生活を想像してみる場面もそうですが、その前の母親との掛け合いにもコメディーの要素がたくさん入っています。掛け合いはタイミングが重要で、それが一つでもずれると、お笑いではなくなったりします。前回は苦労しましたが、今はそういう掛け合いもすごく楽しめる時期にきています。ラッキーなことに、今回母親を演じるのはマイケル・オヘアです。プリンシパルとして活躍された方で、この役は彼の十八番なのです。練習の時など、すごくリードして下さるので、とてもやりやすい。彼は、ロイヤル・バレエ団で芸術監督をしているケヴィン・オヘアのお兄さん。お二人、よく似てますよ、声もそっくりです」

意外なことに、平田さんが最初に『リーズの結婚』に出たのは雌鳥の役だったという。
「入団1年目でした。あれは大変でしたよ。あんなに大きな被り物を着て踊るので、いつもの倍以上動かないとお客さんには伝わらない。被り物は重いし、中は蒸し暑いし」と、当時を振り返った。作品そのものについては、いろいろな要素がいろいろな所に入っているので、見応えがあると指摘。クラシック・バレエの要素もあれば、ストーリーを語るマイムもあり、リボンのダンスや木靴の踊りなど、この作品ならではのものがたくさんあると強調した。「毎日リハーサルしていて、楽しくて仕方がない。それが見ているお客さんにも伝われば大満足です。そういう作品って、なかなか巡り会えないものですよ」と微笑んだ。

2013年にプリンシパルになって5年。その活躍ぶりが気になるところだ。
「今シーズンに踊ったのは、『アラジン』のバドルール・ブドゥール姫、『くるみ割り人形』の金平糖の精、『眠れる森の美女』のオーロラ、『ロミオとジュリエット』のジュリエットで、そして今回のリーズです。いろいろな役をやらせていただいて、本当に充実しています。これが私の求めるバレエのキャリアだと思います。バーミンガムのレパートリーはとてもバラエティーに富んでいて、それが魅力でもあります」と、誇らしげに語った。
この上なく充実した日々を送っているようだが、「毎日が挑戦」とも言う。「トップに立った責任感が、日々、重くなってきます。若いダンサーが入ってくるのを見るたびに、自分の地位をどれだけ保てるかという、葛藤もあります。いい意味で、若いダンサーにとって刺激になれる存在であればと思います。また、年齢を重ねてくると、演じるということの楽しさが芽生えてきます。技術だけで見せる作品よりも、『リーズの結婚』のようにストーリーを伝えるという楽しさが、今は私のエネルギーになっているような気がします」

1805hirata02.jpg photo/Mizuho Hasegawa

ところで、ベストな状態で踊り続けるために、どんなことに気を付けているのだろうか。
「やはり体調管理ですね。歳を重ねることで、一度ケガをすると治りにくくなるという単純なことなのですけれどね。そのために、クラス(レッスン)は毎日します。うちのカンパニーでは、クラスはオプショナルですが、私はクラスだけは必ず受けることにしています。1時間15分。やった後は気分的に違うし、ああ、今日はここが痛いなとか発見できるので、欠かしません。おかげで今までケガをせずにこられました」
では、気分転換にどんなことをしますかと聞くと、「私はオン・オフをはっきりするほうです。でも、日曜日に全く家から出ない日もあります。体がそれを要求しているのなら、それに従おうと。気分転換に出掛けるのは、買い物ですね。洋服とか靴とか。もっぱらウインドウ・ショッピングですけれど、あの服が欲しいなと思うのは、モチベーションになるんですよね。買うために頑張ろうなんてね」と、はじけるように笑った。

最後に『リーズの結婚』について、「この作品には、楽しい要素が本当にたくさん詰まっています。それなのに、他の古典作品に比べると、一般にはまだ馴染みが薄いのかも知れません」と残念そう。「是非一度見ていただいて、その楽しさ、良さを感じていただきたいと思います」と、熱っぽく語った。

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」「リーズの結婚」

●2018年5月18日(金)〜27日(日)
●東京文化会館

「眠れる森の美女」プロローグ付全3幕
5月18日(金)18:30
(オーロラ姫):アリーナ・コジョカル/(王子):マチアス・ディングマン
5月19日(土)14:00
(オーロラ姫):デリア・マシューズ/(王子):ブランドン・ローレンス
5月20日(日)14:00
(オーロラ姫):アリーナ・コジョカル/(王子):マチアス・ディングマン

「リーズの結婚」全2幕
5月25日(金)19:00
(リーズ):平田 桃子/(コーラス):マチアス・エイマン
5月26日(土)14:00
(リーズ):セリーヌ・ギッテンス/(コーラス):タイロン・シングルトン
5月27日(日)14:00
(リーズ):平田 桃子/(コーラス):マチアス・エイマン

NBSチケットセンター TEL:03-3791-8888
Webサイト:http://www.nbs.or.jp/stages/2018/brb/index.html