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(取材・文/三方玲子 写真/岡村夏林)
[2009.07.13]

新作『3D』演出・出演の服部有吉と辻本知彦に聞く

ハンブルク・バレエ団を経て、カナダ・アルバータ・バレエ団を拠点に活躍しているダンサー・振付家の服部有吉。約2年ぶりとなる新作『3D』では、バレエ、コンテンポラリー・ダンス、ストリート・ダンスの融合を試みる。稽古場へ服部有吉と、共同演出・出演する辻本知彦をたずねた。

――2007年に振付けた『ラプソディ・イン・ブルー』では、オーケストラとダンスの融合を試みて新境地を開いた服部有吉。新たな異種混合試合に共に挑むのは、ミュージカル『RENT』などで振付家としても活躍中のコンテンポラリー・ダンサー、辻本知彦と、ブレイクダンスの第一人者として知られるダンサー、群青。新作のイメージは、辻本もダンサーとして参加した『ラプソディ・イン・ブルー』の延長線上にあるという。
 

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服部:『ラプソディ・イン・ブルー』で始めたことを進化させたいと、ずっと思っていました。
例えば、僕は日本語に加えてドイツ語を学んで、英語も話せるようになった。バレエ団では、さらにフランス語やロシア語、スペイン語も飛び交っている。僕はフランス語は話せませんが、恥ずかしがらずに、知っている限りの語彙でフランス人に話しかけようとチャレンジするタイプなんですね。そうすると、相手はすごく喜んでくれる。片言でも、親近感を持ってくれる。そういう垣根を超えたコミュニケーションを、ダンスでもしていきたんです。うまく出来なくても、ストリート・ダンスの技・ウインドミルを人前でトライしたり。ストリート・ダンサーから見れば「バカだなあ」と笑いつつも、親近感は沸くと思うんです
。まずは恥ずかしくてもそこから歩み寄っていって、フランス語もロシア語も全部学んだうえで、地球語が作れたらいいなあ。ダンスで。
 

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辻本:その野望に参加できてよかった。日本では、まだそういう機会はあまりないですね。言語の話で言えば、「英語圏の私は絶対に英語しか喋らない」、「ドイツ語圏の私は、完璧にマスターするまで英語を話すのは恥ずかしい」のと同じく、彼のように他のジャンルにも強い興味を示すバレエダンサーは、日本では数少ない。今回は、お互いのジャンルへの探求心を同じように持ってる3人が集まりました。常に今が最新で、常識だったことを非常識に変え、非常識だったことを常識に変える。そのチャレンジを行動に移していくタイプなんだろうな、3人とも。
服部:例えば最初にガウディの作品を見た人は、きっと驚いたと思うんだよね。「普通、こんなことしないでしょ?」って。ただ突拍子もないことをやるんじゃなくて、まわりの考えが革新されるような新しい形を目指しています。

――一つの道を極めた3人が集まったからこそ、できる企画だ。それぞれが各ジャンルで、理屈抜きに踊りだけで観客を納得させることのできるダンサーである。まずその土台があるからこそ、その先へ行ける。コラボレーション、チャレンジである。

服部:稽古場では、3人とも対等な立場で作品作りをしています。

辻本
:それぞれが持っているムーブメントを使って体遊びをしながら、体でコミュニケーションを取り合う。その中から、相手の動きを習得することもあれば、今までにない新しい動きが出てくることもある。その作業を繰り返して、作っては壊し、作っては壊ししているところですね。

服部:ジャズピアニストの松永(貴志)さんには、舞台上でピアノと一緒に参加してもらっています。

辻本:松永さんのオリジナルアルバムの中からセレクトして使うナンバーに加えて、その場でイメージを伝えて、新たに作ってもらっている曲もあるよね。

服部:想像のつかないものを作ろうとしているので、作り方も創造がつかない。松永さんも稽古に参加して、(マリウス・)プティパとチャイコフスキーみたいな感じですよ(笑)。お互いに即興をしながら、ああでもない、こうでもないの応酬。音楽と踊りを一緒に作るという意味では、理想的だと思います。

辻本:そういう作り方が好きなんだよね。稽古場へ入る前に用意しておいたものを提示して、振付し合う作り方もある。けれど、実際に稽古場でお互いが出会ったその瞬間にしか生まれない新たな感覚を絞り出すためには、今の作業を繰り返すしかないんじゃないのかと。
 

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服部:それと、僕ひとりで作っているのではないので、“僕が作るような作品”ではないですね。今までと違うテイストの作品に挑戦できて嬉しいですよ。具体的に言うと、大技はしないんですよ。

辻本:でも、大技を感じることができると思う(笑)。

服部:(笑)。この次にアルバータ・バレエで振り付ける『七つの大罪』でも、ダンサーだけでなくオペラ歌手や映像も使ったり、キャバレー風の踊りやストリート・ダンスも入れることができればと考えているんです。そういう方向性は、今後も続けたいですね。ダンスと一緒に生きていくうえで、あらゆるジャンルの良いところをお互いに認め合って、融合できたら。僕のヴィジョンを信じて、ついてきてください。

――手招きする彼らを信じて、肩肘張らずに、まっさらな気持ちで劇場へ行こう。 8月には、それぞれのワークショップも開催する予定。服部有吉のワークショップは世界初! お見逃しなく!
 

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