フラメンコのの魅力を様々な角度からお伝えするフラメンコエッセイ「アマポーラの一撃」と、フラメンコのステージに咲き競う花々をレポートする「巷に咲き競う、フラメンコの花々の評判記」。フラメンコに関する話題をご紹介いたします。
関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
「遥かなるアンダルシア」小松原庸子とシルビア・ドゥラン
共に、ヴィクトリア・エウヘニアの下でスペイン舞踊の修行を積んだ小松原庸子と彼女のカンパニーが、シルビア・ドゥラン・カンパニーを招いて、初めて共演した。
ドゥランは南アフリカの出身だが、スペイン舞踊を学んだ後にイスラエルに移住し、この地でスペイン舞踊のパイオニアとして舞踊学校を設立したり、イスラエルのオペラ『カルメン』を振付けるなど活発な活動を続けてきた。小松原とは「芸術上の姉妹」としてお互いに敬愛の念を抱いている。
この共演に、ジュリアード・オーケストラとカーネギー・ホールで共演などのキャリアをもつイスラエルの著名なギタリストのタリ・ロス、そしてスペインでも注目を集める舞踊手のフランシスコ・ベラスコも加わった。イスラエルと日本とスペインがスペイン舞踊を介して、国境を越えて集ったのである。
「アレグリアス」
シルビア・ドゥラン
「タンゴ(アルベニス)」
タリ、シルビア
プログラムは、2部に分かれ、シルビア・ドゥラン・カンパニー、小松原庸子スペイン舞踊団、タリ・ロス、ベラスコがそれぞれと組んでコラボレーションを展開、最後は全員が参加して華やかなフィナーレを迎えた。
タリ・ロスのギターとドゥランのカスタネットが競演した「タンゴ(アルベニス)」、タリ・ロスとドゥラン、小松原庸子スペイン舞踊団が踊った「アストゥリアス」、ベラスコの鋭く感情の深淵に迫るような迫力のあるソロ「ソレア」などどれも素晴らしい圧巻の舞台だった。
「アストゥリアス」
タリ、シルビア、小松原庸子スペイン舞踊団
とりわけ、ドゥランのソロ「アレグリアス」には感銘を受けた。じつに素朴というか人間本来のありのままの姿が、踊りの中に巧まずして現れているのである。ドゥランの踊りの特徴である、スペイン舞踊にイスラエルの味が加わった、滑らかなムードラふうの手の動きに魅了された。
どのように喩えていいのか良く判らないが、子どもが無心でクレヨンを使って画用紙に絵を描くようなイノセントな雰囲気。生涯忘れることのない故郷の風景を、ぼんやりと眺めているような安堵感。そういった曰く言いがたい情感が優しく観客の心を包む舞台だった。運筆というか筆の運びが心を暖かくしてくれる滋味豊かなダンスと出会った歓びを感じさせてくれたのである。
ダンスとは、やはり、人間の原初にこそアピールするものなのである。
(3月6日、俳優座)
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