フラメンコのの魅力を様々な角度からお伝えするフラメンコエッセイ「アマポーラの一撃」と、フラメンコのステージに咲き競う花々をレポートする「巷に咲き競う、フラメンコの花々の評判記」。フラメンコに関する話題をご紹介いたします。
関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
エバ・ジェルバブエナ『A 4 Voces ア・クアトロ・ボセス』
エバ・ジェルバブエナは、今、最も輝いているフラメンコ・アーティストのひとりである。
エバは2005年に8年ぶりに来日し、06年にも『5 Mujeres 5』と『EVA』を上演して好評を博している。今回の来日公演では、『ア・クアトロ・ボセス』と『カル・イ・カント』を上演した。
『ア・クアトロ・ボセス』は2004年に初演された、4人のスペインの詩人の詩をモティーフとしその人生にもヒントを得た作品である。
4人の詩人とは、市民戦争で捕らえられて刑務所で亡くなったミゲル・エルナンデス(1910--1942)、ノーベル文学賞を受賞したビンセンテ・アレキサンドレ(1898--1984)、実存主義的な詩を書いたブラス・デ・オテロ(1916-- 1979)、市民戦争で銃殺された悲劇の国民的詩人ガルシア・ロルカ(1898--1936)である。
下手に据えられた、小さな灯りのあるタブラオの空間で歌と踊り、上手の紗幕の中でミュージシャンが演奏する。フラメンコの伝統に基づいて、演劇的なシーンを見せ、音楽と踊りを構成する舞台である。
エバはアバニコもマントンもパリージョも使わず、サパティアードと動きだけでじっくりと踊る。全身を使った豊かな表現力と優れた踊りが、隙なく一体化して深い愛を秘めた悲しみを描く。まるで巫女に導かれて黄泉の国に至るように、エバの踊りを観ているだけで、存在の深部に浸透して行き、音楽と魂が共鳴するかのような一時を過ごした。
時には、音楽をリードしているのではないか、と思えるほどエバの踊りには集中力があり圧巻だった。
エバは1970年生れで、演劇を学んだ経験もあり、15歳でプロのキャリアを始めた。1998年には、夫でギタリストのパコ・ハラマが音楽を担当し、自身が振付、出演するカンパニーを結成している。
ミュージシャンで映画『リービング・ラスベガス』などを監督し、フラメンコに深い関心をもつことでも知られるマイク・フィギスの『フラメンコ・ウーマン』に出演。2001年のやはりフィギス監督の映画『ホテル』では素晴らしい踊りを披露している。
ピナ・バウシュからは、25周年記念ガラ・コンサートを始め3回も出演招待を受けているほか、バリシニコフと共演したり、パリの市立劇場でも踊り、アメリカのアルパカーキ大学で講義するなど、様々な分野で活躍している。
多くの受賞歴をもつが、主なものとしては、1999年、02年にフラメンコ・ビエナル・フェスティバルでベスト・パフォーマー、ベスト・ダンサー賞、05年には最優秀舞踊作品、最優秀舞踊家のMax賞をダブル受賞している。
※写真は今回の公演のものではありません
Copyright チャコット株式会社 All Rights Reserved.
当サイトに掲載されている情報の無断転載、無断掲載、無断引用 はお断り致します。