関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
アイーダ・ゴメスの『カルメン』の艶やかなダンス

 アイーダ・ゴメスの『カルメン』を観た。ゴメスはもちろん、自身が芸術監督を務めるアイーダ・ゴメス スペイン舞踊団とともに主役のカルメンを踊った。

 音楽は優れたフラメンコ・ギター奏者でもあるホセ・アントニオ・ロドリゲスが、ビゼーのオペラの名曲を生かして構成したもの。モダンな曲とよく知られたメロディが渾然として独特の雰囲気を創っている。衣裳デザインはミゲル・クレスピでゴメスの意見も投影されているようだが、長い裳裾を翻した群舞がとりわけ艶やか。色彩も官能的に構成されていて見応えがあった。

 演出はエミリオ・サージで物語の構成はそつがない。ドン・ホセがスニガを殺した後のベッドシーンで、カルメンが大きな黒幕に入って黒い物体の形を様々に変えてうごめく。眠りにおちたホセが見ている抽象的な夢を描いているが、同時にカルメンの死を告げる不吉な予兆となっている。アルベルト・アロンソの『カルメン組曲』の<運命の黒い牛>を想起させるが、この作品ではリアルに実感的に主人公の人生の岐路が描かれいている。

 ダンスはドラマティックなところを強調して、無駄なく振付けられている。群舞が美しく、カスタネットやサパティアード、ピトなどダンサーたちがステージで創る音を使って、登場人物の心情を効果的に際立たせたところが印象に残った。

 アイーダ・ゴメスは98年から2001年までスペイン国立バレエ団の芸術監督を務め、バレエ団を率いて来日公演も行っている。
 彼女はスペイン国立バレエ団を辞した後、自身のカンパニーをカルロス・サウラを芸術監督に迎えて設立し、『サロメ』を製作した。この作品は各国で上演し、04年には東京・大阪でも上演している。さらにサウラ監督による映画『サロメ』にも主演し評判を呼んだ。その後ゴメスは、ミラノ・スカラ座で自作『スエニョス(夢)』を初演したり中国ツアー行うなど活発に活動し、『カルメン』の製作に着手。今年3月、スペインのヘレスのフェスティバルで初演し成功を収めている。



 

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