西脇美絵子 text by Mieko Nishiwaki
新人公演で感じたこと

若い才能が結集する登竜門として、フラメンコ界の注目を集める日本フラメンコ協会主催の新人公演が、8月27日から3日間に渡って行われた。
 今年は、バイレ・ソロ部門の募集定員がこれまでの50人から70人に増員されたが、それでも参加募集期間の1日目に定員いっぱいになったという。昨年あたりからカンテ、ギター部門のレベルも飛躍的に充実して、今年年はさらに群舞門でもいい作品が目立った。
 つまりは、新人公演が開催されて以来、常に右肩上がりに出場希望者は増えつづけ、レベルも上がってきたといえるが、今年は、とりわけバイレ・ソロ部門での、質的な変化が印象に残った。
 「コンクールではない」この新人公演だが、出場する側の熱も、見る側の注目度もなぜこれだけ高いのかといえば、それはやはり賞が出るからだろう。
ならばいっそのことコンクールといってしまったほうが、よほどすっきりすると、私は思うのだが、なかなかそうはいかないようだ。固定化したものさしでフラメンコの出来不出来を判断することに主催者はためらいがあるのだろう。
そして、今年も、7人の奨励賞と7人の努力賞が出た。はたしてこの、受賞者と受賞しなかった人、奨励賞と努力賞のボーダーはどこにあったのだろうか?


■実力伯仲のバイレ・ソロ部門

毎年、圧倒的な出場者数を誇るバイレ・ソロ部門。この部門で受賞することは、はっきりいってかなりスゴイことだ。出場者のレベルが年々高くなっていることは、誰もが認めることだが、それは、出場者の平均レベルが上がっているのであって、ずば抜けた人たちはむしろ減っている傾向にあるような気がする。そうなれば、賞の当落上に同じようなレベルで大勢の人がひしめき合うことになるが、そういった状況がここ数年続いているといっていいだろう。そんな中で、今年強烈に感じたのは、出場者たちの均質化だ。
レベルでいえば、だれもが認めるような圧倒的な位置にいる人が、3人前後、受賞のボーダー上にいる人は、少なめに見ても、数割はいる。
とにかく皆、上手いのである。しかもそのほとんどが、身体性もリズム感も、フラメンコのテクニックも、そこそこバランスよく身に付けている。

新人公演が開催されてからの最初の数年は、舞踊性とフラメンコ性のどちらを評価するのか、などという論議がかなり盛んだった。だが今や、その両方を兼ね備えた人がほとんど。もちろん両者のバランスや身に付けている能力の深度には、それぞれの違いがあるわけだが、見るほうの印象としては、やはり似てしまう。ほとんどの人が、優等生的というか、欠点もあまりないけど面白くないというバイレ。
でも、よくよく考えてみれば、フラメンコ舞踊に、フラメンコ性と舞踊性の両方が求められることは至極当然のことで、フラメンコの身体表現者としてのごく当たり前のところに、日本のフラメンコもようやくきたのだと、私は感じている。プロフェッショナルなフラメンコ舞踊手が、当然のことのように登場してくる段階に入ったといってもいい。きっとこうした流れの中から、層の厚さがつくりだされ、舞台人、フラメンコ人として傑出した才能が出てくるに違いないと期待している。

ただ、選考についていえば、何をどう評価するのかを、より明確にしていく必要があるだろう。.主観という大きなザルの目では、差がよみとれないほど、実力は伯仲しているのだから。
また、出場する人たちに、今後何がもとめられるかといえば、それは単にテクニックとしてではなく、フラメンコと向き合うことだと思う。カンテを感じ、ギターを感じるとはどういうことなのか。さらに、自分は何を表現したいのか、どう生きたいのか、自分の存在のありようをざっくりと突き詰めることが必要なのではないだろうか。同時に、フラメンコのテクニック、身体能力をさらに高めていくことだろう。踊り手にとって身体は、表現行為の器。大きな器とそこから溢れでる内面、精神性は、身体表現者にとっては、車の両輪だ。
◆バイレ・ソロ部門
奨励賞 今枝友加 井山直子 小松なつ美
後藤なほこ 三枝麻衣 篠田三枝 鈴木舞
努力賞 高須恵理子 荻村真知子 具志堅真未香

奨励賞 今枝友加

奨励賞 井山直子

■審査基準があいまいな群舞部門


小島章司フラメンコ舞踊団

スタジオ・トルニージョ
 私は、主に取材者として、時に選考する側の人間として、新人公演をずっと見てきているが、実は選考に関して、一番あいまいで問題が放置されたままになっているのは、群舞部門だと感じている。
 ひとくちに群舞といっても、パレハと数人以上の踊り手で構成されるものとでは、表現される内容も、見るべき観点も全く違う。

 今回群舞部門は、小島章司フラメンコ舞踊団のパレハとスタジオ・トルニージョの群舞が、ともに努力賞を受賞した。
 どちらも、新人公演史上、画期的な出来の演技で、これまでの受賞作品とのバランスからみても、どちらも奨励賞が与えられるべき作品だと個人的には思っている。参加数の1割前後に賞を出す、という規定が、奨励賞を2つ出すことにブレーキがかけられたと推察するが、とても残念だ。

 同時に、パレハはソロであると、痛感した。今回の受賞作2点を、同じ次元で優劣をつけることはできないし、同時に、このパレハがソロ部門に出場していたら、奨励賞をとっていたのではないだろうか。あくまで私見だが。
それにしても、この「努力賞」という賞のネーミング、なんとならないのだろうか?

◆群舞部門
努力賞 小島章司フラメンコ舞踊団
(関晴光 柳谷歩美)

スタジオ・トルニージョ
(荒川世里 大島いち子 木村ゆり
 重田かおる 高野泉 松井綾乃 吉田優子)

■どんどん楽しくなる!カンテとギター

とかくバイレ部門におされがちな、ギター部門とカンテ部門。まだまだ数では圧倒的に踊りが多いが、昨年あたりから、一気に面白い状況になった。一言で言えば、出場者全体のレベルがここにきて、一気に上がった。そしてそれぞれが個性的だ。今回は、どちらも努力賞のみで奨励賞が出なかったのが残念だが、さて来年は、またどんな新人たちと出会えるのか、今から楽しみにしている。

◆カンテ部門
努力賞 阿部真
◆ギター部門
努力賞 小倉誠司

カンテ部門 努力賞 阿部真

ギター部門 努力賞 小倉誠司

 

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