西脇美絵子 text by Mieko Nishiwaki
フラメンコビデオのヒット作品に、「フラメンコ・ウーマン」があります。 映画「リービング・イン・ラスベガス」という、かなりデカダンなハリウッド映画を撮ったフィギス監督の作品。 フラメンコ界の人気を二分するバイラオーラ、エバ・ジェルバブエナとサラ・バラスを中心にした8人の“フラメンコ・ウーマン”の本番までの6日間に密着したドキュメントです。
フィギス監督は、フラメンコに「女性的なる不思議な力を感じて、この作品を撮った」と語っています。 フィギス監督のイメージを増幅させた映像美の中でフラメンコの魅力が焼き付けられています。作品づくりにひた向きに向かうエバとサラを通して、 フラメンコに内在し放出される命のパワー、生命力と、凛とした女性美が、そこから確かに伝わってきます。
日本の「フラメンコ・ウーマン」たち
さて、日本はスペイン次いでフラメンコが盛んな国といわれています。
年間に10本前後もの大きな来日公演があり、邦人アーティストの上演活動も活発です。具体的な統計はありませんが、レッスン・スタジオやフラメンコを習っている人の数は、明らかにスペインをしのいでおり、短期・長期をあわせると、常時200人くらいの留学生がスペインへ渡っています。フラメンコの月刊専門誌があるのも日本だけ、まぁそんな具合です。
この日本のフラメンコ人気を担っているのは、フラメンコ舞踊を習う、20代から40代を主軸にした女性たちです。日本の舞踊人口全体が、戦後一貫して増加をしていますが、フラメンコ舞踊のファンはここ10年の間に飛躍的に増えました。いったいフラメンコの何が、日本の女性たちの心を捉えたのでしょうか。
「FLAMENCO WOMEN」より
「FLAMENCO WOMEN」より
女の元気とフラメンコ
フラメンコを踊る時に、まず求められるのは、その時その瞬間の感情を、率直に表現する、ということです。
クラシックからモダンやジャズダンスなどその他のダンスの場合、お人形や妖精のようなかわいらしさ、加えて肉体の美しいフォルム、が求められ、 そこから入っていくと思うのですが、フラメンコ舞踊は、肉体表現でありながら、心=精神性がとても大事にされるのです。
それも、人間が有するあらゆる感情を肯定し、その人のあるがままの心をなによりも尊びます。フラメンコは本来一人踊り(ソロ)が基本で、 群舞は舞台作品が作られるようになった最近において発達したものなのですが、「フラメンコは個の踊りである」といういわれ方するのも、その所以です。
「あるがままの人間」を良しとするフラメンコは、踊り手に「あなたのままで良いんですよ。思いっきり自分を表現しなさい」と呼びかけます。
フラメンコ舞踊の本質的な特徴であるこの“精神性”に、現代を生きる日本の女性たちは反応したのではないかと、私は感じています。
「女の時代」などともてはやすマスコミの風潮はすっと続いているし、高学歴の女性だってはいて捨てるほどいます。 でも、学校では優秀な彼女たちも、ひとたび社会に出れば、待っているのお茶くみに、コピーとり。世の中は、女たちの元気を、今も上手くつかってはくれません。
そんな、エネルギーと自己表現欲求に満ちた女たちの心のすきまに、フラメンコ舞踊はピタっとフィットしたのではないでしょうか。
舞踊というのは、エロスやジェンダーと深く結びついています。フラメンコも例外ではないでしょう。 でも、フラメンコからイメージする女性というのは、3歩下がって師ならぬ男の影を踏まず、みたいな、旧泰然とした女のあり方とはまったく違います。
フラメンコが発散する女性らしさというのは、逞しく、自分の顔を持って生きる女性、美しくも力強い女性像が浮かんできます。
ひとたび、フラメンコを好きになると、日本のフラメンコ・ウーマンたちの、フラメンコに向かうバワーは、並々ならぬものがあります。
きっと、フラメンコを踊ることは、自分を生きることと、ほとんど同じ意味をもつからです。
この連載の読者は、すでにフラメンコの魅力の虜になった“フラメンコ・ウーマン”が多いのでしょうか。それともその予備群? ここでは、私なりの勝手な意見を書きましたが、フラメンコ・ウーマン=貴方の実感、生の声をぜひお聞きしたいですね。
「FLAMENCO WOMEN」
ビデオ版/DVD版 各6,300円(税込) 一部モノクロ55分 日本解説付
発売元:(株)パセオ
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