トゥール・ドゥ・フォルス(仏/tour de force)

フランス語で「回転」のほかに、「業(わざ)、手練、芸当」といった意味のあるtourに、「力を要する」という意味のde forceがくっついて、フランス語でも「離れ業、力わざ」といった慣用句になり、英語でも同様に使われるこの用語。芸術上の力作、驚嘆するような離れ業、その手腕を指すわけですが、バレエでは、男性が見せるあの回転技のことを言うんですね。
例えば、『海賊』のメドゥーラとアリのグラン・パ・ド・ドゥ。アリがヴァリエーションの最後やコーダの最中で見せる、普通のピルエットかと思ったら、スピンしながら回転を変化させる連続業。足の位置を変えて散々回った挙句、最後のひと仕上げとばかりに跳躍を加えて回ったのち、床に寝そべったり膝をついてポーズ! 
男性が空中に飛び上がって回りながら脚を開脚した後に交差させたり、マネージュの最後に落ちてしまいそうなギリギリのところでも体を回転させたり。もー、これはできん、お手上げだと、女性だから余計にか、うなったり、ため息を漏らしたりしてしまいます。『白鳥の湖』の道化役や『ラ・バヤデール』のブロンズ像といった、出番は短いながらも妙技をこれでもか!と観客に披露する、ショーストッパー的なお役もありますね。もう、存在自体がトゥール・ドゥ・フォルスと呼びたくなります。
少しでも多く回転するのに、足の裏の筋肉が必要ですよね(回転するだけでなくバレエ全般に言えることですが...)。それは、土踏まずを作る筋肉。中でも小指側のアーチを作る筋肉を意識したいです。ドゥミ・ポワントで立ち、カマ足にならないように気をつけながら、足の小指と薬指を少し伸ばすようなことをすると、土踏まずが持ち上がって足の裏が引き上がり、さらに指をそのままポワントにすると足全体が強くなってアーチが強固になりませんか。ターン・アウトもしやすくなりますし。回転するのにがちがちに胴体を回そう!と力を入れてしまうのではなく、軸足の足裏の小指側のアーチをきちんと持ち上げるんだと足裏を意識する、そしてその上に正しくボディを乗せると意識することが基本の中の基本、なのでしょうね。

 

[解説]
文葉

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