藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第32回】 引き上げ研究会

今回は「引き上げ」について熱く語ってみたいと思います。

「引き上げとは?」


もっと引き上げて。そもそも「何のために引き上げる」のか?と考えたことはありますか?答えは「動きやすくするため」です。じゃあ「何が引き上がっていれば」?答えは「全部」です。バレエレッスンの際に「さあ引き上げよう」と思うことは、引き上がっていない部分を認識して「落ちていない状態」にするということになりますので、「引き上げる」という行動に一つ取られてしまうので、他に成長できることのための時間を損する。または「引き上げること」で日が暮れてしまいます。要は、いつも引き上がっていれば良い、ということです。

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「力学的に考えよう」

例えば、一つの重い荷物を浮かせるとして「上から引っ張り上げる」のと「下から押し上げる」のでは、どちらが合理的なのでしょう?その答えは皆さまの知識と感性にお任せするとして、ここでお伝えしたいのは、「上からも下からも同じ力で」引っ張ると押し上げるを行うと、荷物にとっては「その場に安定して浮いている」という状態になります。これを全身の骨一本一本に均等に行えれば、体は完全に「引き上がっている状態」になります。

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「まずは体幹から」

背骨で何ができる?と考えると「伸ばす」とか「真っ直ぐにする」などが思いつくでしょう。これらの考えには「浮くか沈むか?」の感性は含まれていません。今回は、もう一つ新鮮な発想を加えてほしいのです。それは「背骨を丸ごと持ち上げる」です。

背骨が関わっているパーツは骨盤、肋骨、頭の3つ。注目すべきポイントは、背骨とこれらが結びついている関節「中継点」です。
それでは早速背骨を引き上げてみましょう。グイッと。いかがでしょう?以下の写真のような力が入ったのではないでしょうか?

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これは背骨が上がろうとしたのではなく、背骨が頑張って周りのものを「引き寄せた状態」になります。もっと強く力を入れれば、さらに筋肉は縮まり「後方へ背骨を引き落とす」ことになります。
ここでも発想の転換が必要です。背骨を関節で挟んでいるパーツによって「背骨を持ち上げてもらう」のです。
骨盤は仙腸関節を境に「腸骨で仙骨を持ち上げる」、肋骨は「肋骨で胸椎を持ち上げる」。難しいのは頭ですが、人は頭を持ち上げようとする時、首に力が入ります。これはなぜか「首が這い上がろうとする」、人が起こす不思議な勘違いで、「首を縮める力」が発生します。非常に難しい感覚ですが、「後頭部で首を優しく引っ張り上げてあげる」を試してみてください。

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引き上げのまとめとして。後頭部、胸椎、仙骨が地面に垂直に並べば「真っ直ぐ立っている」状態。それら三カ所を同じ力で引き上げると、真っ直ぐ引き上げていると言えます。しかし真っ直ぐ立っているだけでは踊れません。体が「傾きを作っている時」は、それら三カ所を「動く方向へ」同じ力で送り出す&引き上げる必要があります。
なかなか広範囲で感じにくいところではありますが、集中して、自分の背骨がどこへ向かうのか?背骨とよく相談してみて下さい。

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>>> エクササイズ[ 32 ]「ゾウさんのお鼻〜Elephant Mod〜 -エクササイズ-」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。


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あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。