藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第25回】まわるまわるよ股関節は回る〜球の動き〜

アンデオールに脚を開くに当たり、よく交わされる質問として「股関節はどっちにどう回すのか?」。今回は股関節の形状とその動き。そして全身に適応する回転球の法則」で、流れるような踊りに繋げたいと思います。

「股関節の動きの良さはナンバーワン?」

股関節の形状は、割とメジャーで多くの人が知っているように思います。球の形をした大腿骨頭が骨盤の穴にすっぽりと入った形で、靱帯や筋肉の束縛を考えなければ、かなり広範囲に自由に動きを出す、体の中でもナンバーワンに近い、高性能な関節になっています。しかし「脚で体重を支える。脚自体の動きの要となる。」という重要すぎる役割を担っている為「力が入りやすい。固まりやすい。負担を受けやすい部位」とも言えます。

僕が持っている「良いカラダ作りの概念」として、一番声を大にしてお伝えしたいのが、体中すべての関節や骨、筋肉などが「均等に動かせること」を目指すこと。例えば今回の股関節が「これだけアンデオールで外向きに回っていける」ならば、全く同じ力で「それだけアンデダンで内向きに回っていける」という感覚を養うこと。「グイーっと持ち上げていける」ならば、全く同じ尺で「ギューンと下げていけること」などなど。そのバランスが整っていくことで、人の体は自然と「良い動き。良い形。」へと変わっていきます。

1705_01.jpg 股関節
1705_02.jpg 肩首まわりの色々な動き

「さてさて、本題の股関節」

股関節の「回転の動き」を感じてほしいのは大腿骨頭。位置としては股間のすぐ側で、割と「こんなに内側?」と思えるところにあります。脚を動かす際には、自然と大転子に力を入れて、大腿骨頭は「動かされる」という方向性を持ちます。この大腿骨頭が「回る」という意識に集中して、その回転方向を促していきます。

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イラストを見て、それぞれの脚の動きの方向に対して、大腿骨頭が「どの方向に回るか?」を確認して下さい。
この大腿骨頭を「球」として、「上半分」「下半分」に分けて、その回転の動きはお互いに「逆方向である」と知って下さい。脚の動きでは特に、「少し地面から持ち上げる感覚」が加わるため、人はどうしてもこの球の「上半分の動き」が先に働いてしまいます。しかしどの矢印をとって見ても、「体に向けて脚を引き込む=脚を短くする」方に向いていませんか?脚を「長く出す」という力を得るためには、「下半分」を先に意識して、「流し出す=脚を伸ばし出す」ところから始めましょう。

1705_001.png 大腿骨頭の球の回転方向
1705_04.jpg 引き込みと押し出し

「全身の球を探してみよう」

回転が掛かる球は、下半分(地面の側)の動きを意識すると、動きを出す、伸ばす方。ということを踏まえて、体の他の部位に潜む球の存在を探してみましょう。
例えば肩関節も球とすると、腕を上げる際に上半分の動きを優先してしまうと、肩が上がる、首が短くなる、腕を引いてしまう、となります。逆に下半分を先に意識して流し出すと・・・お分かりでしょうか?
また、もっと大きな規模で見てみると、骨盤や肋骨。引き上げの際には一番頂上部分を締め上げる、という感覚が自然と入ってしまいがちですが、これらも一番下の段を意識して。肋骨ならば脇下一番下の段。骨盤ならば座骨の辺りを意識して、締め上げるのではなく、左右外方向に優しく広げて、底から持ち上げてくる感じに。エポールマンなどで上体に捻れを加える際には、やはり上から絞り上げずに、底から優しく捻り上げていく、と考えてみましょう。

1705_05.jpg 肩の球
1705_002.png 肋骨骨盤の引き上げ&捻り

最後に、背骨の引き上げに関しても有用なイメージがあります。背骨も一つの大きな棒として考えず、たくさんの球が数珠状に連なったものと考えてみましょう。これら一つ一つの球にも回転方向を決めます。
後ろに反っていく方にカンブレする時。球の上側を反っていく方を優先すると、背中の筋肉は腰の方へ縮んでいく。すなわち「背中を落とす方へ」力を加えることになります。逆に下半分の回転方向を促していくと、腹筋をサポートしながら引き上げていくことになります。
前のポールドブラや、側屈する際も同じ効果がありますので、イラストを確認しながら違いを比べてみて下さい。

1705_003.png 背骨の数珠球カンブレ
1705_06.jpg 横のポール・ド・ブラ


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(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。


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あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。