【第23回】バーレッスンの心得〜バーの持ち方&肩の持ち方〜

バレエのレッスンは必ずこの「バーレッスン」に始まり、プロのダンサーでもフルで1クラスする中で、センターに向かう前に必ず通るお稽古のプロセスとなっています。

では、「バーレッスン」とは何の為にするのでしょうか?

その真意を追求すると、色々な答えが出てくるでしょうが、僕の正直な答えとしては「それがバレエのスタイルだから」「バレエを始めた時からそうだったから」。アンケートを取ってみても、そう答える人が意外と多いのではないでしょうか?

今回は「バーレッスン」の利点と欠点をよく考察して、バレエ上達に繋がるポイントを押さえましょう。

「目指すはセンター」

バーレッスンとは「片手で持った側を軸として、反対側を動かす」というのが自然な流れ。そして左右両側と、一つのパを2回ずつ行う。そこでバーを、バランスを取るために、脚を振り上げる為に「体を支える手すり」として使ってしまうと、センターに進んだときに「腕の力で立とうとする」「何もないのに手が掴もうとする」癖がついて、バーなしでは立てないボディを作るためにバーレッスンをしていることになります。

「目指すはセンター」

「バーは杖である」

バーが固定してあるものであるが故に「腕が引っ張る」という選択肢を得てしまう。ならばバーが「杖」だったとしたら? 杖は地面に着くもの。押せば支えとなって体を更に起こしてくれる。逆に引いてしまうと、杖を持ち上げてしまう、ということになります。言葉を返すと「押す=バーの上に体をキープしようとする」であり「引く=背中を落としてでもバーの下に潜ろうとする」という感じになります。

「バーは杖である」

「肩甲骨のあり方」

バーを握って何らかのアクションを起こす際に「肩甲骨が出している方向性」を考えると、体がしようとしていることが一目瞭然になります。後ろから見て、耳、肩甲骨、背骨(胸椎)の位置関係を意識して下さい。
耳と比べて肩甲骨を後ろ(背部)に引くと、首後部と肩上部に緊張が走る。背骨という柱から肩甲骨という板を後ろに引くと背中中心部、脇下に緊張が走る。
どちらも「腕 丸ごとでバーを引っ張る」であり、まっすぐ立てている姿勢から更に首や背中を引く。すなわち「わざと後ろに倒れよう」という動きを出してしまいます。
この感覚が自分に該当すると思った方は、ご心配なく!人は、手すりを持って片脚を上げると誰でも肩を引きます。これは自然現象なのです。

「肩甲骨のあり方」

耳を起こします。アンテナのように漠然と立てるというよりは「耳の頂点をおでこに寄せていく」感じがいいでしょう。そして真横から見て耳のラインに、肩甲骨で「追いついて並ぼう」と持ち出してきましょう。
肩甲骨と比べると、背骨は元々少しくぼんだ位置にいます。なので、背骨のラインに肩甲骨を乗せる=肩甲骨は前へ=背中を広げる感覚となります。
体がいかなる動きをする前に、「肩甲骨を前方に起こす」を試しましょう。「胸郭が腹筋に乗り上がる+脚(背面)が床を押している」感覚が入ればいい感じです。
ただ、肩甲骨を「前に突き出す」という程にならないように注意しましょう。耳より前に肩甲骨が行こうとしているならば、それは「首を引く」「胸を締め落とす」力を生み出すので、「耳、肩、背骨は優しく並べる」を意識しましょう。

「耳、肩、背骨は優しく並べる」

「肩甲骨を前方に起こす」

「その他注意点」

最後に、今回ご紹介した「起こす肩甲骨」を最大に生かす注意点が二つ。「バーの握り方」「バーとの距離」です。
バーの上から4本の指を、床に垂直に降ろす方向に。指の付け根に均等に圧が掛かるようにして、親指はバーの下から「ちゃんと握る」ようにしましょう。肘はリラックスさせて。手前に引くように握っていないか注意してください。体が動きを出す前にある程度しっかり握っておいて、バットマンで脚を振り上げる時など、親指と人差し指の隙間を「緩和させて広げる」感覚を作ってみましょう。親指人差し指間が「グッと閉まる感じ」、ハサミだったら「チョキン!」と切ってしまう感じは、肩が締まって引いてしまう力を生じます。
「親指は握らず、バーの上に」というのはあまりお勧めできません。4本の指が、「引っかけて引っ張る」ことしかできず、親指も「チョキン!」の力しか入らなくなるので、バーはちゃんと「握りましょう」!

「その他注意点」

バーとの距離は最終的には「腕を伸ばさないと届かない」程遠い方が良いです。基本的に世の中みんな、バーに近過ぎます。バーが近いと、元々短く畳まれている腕にもっと曲がる力が入りやすくなり、肩は「引く」か「上がる」方向に「逃げようとする力」を出してきます。「ポールに掲げた国旗」でイメージすると、国旗はすでに「ポールよりにヨレがある」状態なので、中心軸もシワを作ってバーに寄りかかっていきます。国旗としてはやはり、バーからピシッと張っていくほうを意識すると、中心軸もさらに「内腿、腹筋ラインに立つ」ことを促してくれます。

「その他注意点」

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バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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