【第22回】「進めっ!骨盤底筋!!」

「骨盤底筋とは?」

今回のテーマは、あらゆる体幹トレーニングの中で重要な鍵となる「骨盤底筋」の働き。最近では割とよく聞く言葉となりましたが、実際はどのように使うのか、まだまだ謎の多い部位。今回僕がお伝えする方法を感じられるようになれば、踊りはもちろん、私生活においてもカラダがどんどん変化していきますよ!

「骨盤底筋とは?」

骨盤底筋とは、骨盤内の底で左右の骨盤パーツを繋ぐ「網のような」筋肉の固まり。下腹部のインナーマッスルです。お尻を締める、おトイレを我慢するように股下を締める、といった感じとはまた違い、やはり「体内にある筋肉」が故に、使えているかどうかの感覚を掴むのも難しいところです。
一番シンプルにお伝えすると「左右の坐骨を寄せるように締め、股下を体内に引き込む。」こちらはとても一般的。しかしこれは体全体を中心に寄せて「動きを止める」もの。寒い日に脚も脇もギュッと締めて立ち止まる感じに似ています。
僕がお伝えしたいのは「坐骨をお互いから遠ざける。張った股下を、動きたい方向に動かす。」というのが踊りには適していると思います。

「骨盤底筋とは?」

「股下を向かう方へ」

プリエをする際に骨盤底を締めて引き上げると「座らないように」。坐骨を開いて股下を床に優先的に寄せていくと、脚全体はすごく伸びを感じて「押す状態」になります。
ルルヴェの際には股下そのものは引き上げますが、座骨間を締めるよりは開いて張るようにしてみましょう。

「股下を向かう方へ」

このプリエやルルヴェは両足を床に固定できるので「坐骨を均等に広げる感覚」が掴みやすい。しかし片足は動き、反対は軸脚となるとき、流れは複雑になります。
横タンジュで考えてみましょう。脚を横に持ち出す時に股下は「軸に寄って、乗り上がろう」とします。これは自然現象。実はこれが最初にお話した「締める&固まる」の感覚。その先にもっともっと骨盤底を締め上げると骨盤も上体も斜めに力が入り、上げる脚をもっと頑張って引っ張らなくてはならない。これは非常に「もったいないエネルギー」を消費してしまいます。
逆に軸足を押してその坐骨から動き脚へ。動き脚の坐骨を押し出して裏ももへと流し出すとどうでしょう?股下は張って上体と腹筋の土台となり、股関節はさらに広く長く。そのまま脚を上げても「すくい上げる力」が強い形になります。

「股下を向かう方へ」

「骨盤内のさざ波」

前と後ろに脚が動くときも、股下は「開いて動き脚の方へ」。動き脚の坐骨が、動き始めでグイッと持ち上がるのを防いでみましょう。前ももが強く締まって、アンデオールが維持し辛くなってしまいます。
骨盤内に液体が入っているとイメージすれば、動き脚の側に「さざ波のように」流し入れて、そのまま脚へと注ぎ込むように動かしてみると、広い股関節から脚を更に伸ばし出す力となります。
その際に注意すべきなのが「腹筋との三角関係」
おへそが頂点、横ポケットの大転子とお尻の下部、坐骨を底とした「テント」をイメージして、やはり頂点のおへそは上へと。底辺の大転子と坐骨は下へと広がる。そして、動き脚の方が下へと長く出るように動かしてみましょう。
腹筋から上体全部が「軸足の内ももと股間ライン」で更に高く伸び上がります。

「骨盤内のさざ波」

「骨盤内のさざ波」

クラシックバレエでは「片方の脚一本で立って、もう片方は高く上がっている」という「片足軸」な感覚が強く入ってしまいます。ですが、二本脚のイスを傾けてバランスを取るのは、いつも成功するとは限らず、毎度ギャンブルのような挑戦。これでは体がその「やり方、立ち方」を学習するのが難しくなります。
片脚で立っていても、どのようにすれば「両の脚に注ぐ力のバランスを均等に分配できるか」を考えることで、真ん中にできあがる軸を意識してみましょう。

「両の脚に注ぐ力のバランスを均等に分配できるか」

「両の脚に注ぐ力のバランスを均等に分配できるか」

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>>> エクササイズ[ 22 ]「Swan Dive&大腿筋のストレッチ -エクササイズ-」

バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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