藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第21回】エポールマンのために〜踊る鎖骨で心躍る〜

「皆さんの鎖骨はよく動く鎖骨ですか?」
きれいなアームスのライン作りに欠かせない「鎖骨の動き」。鎖骨を動かすことによって、エポールマン(体の表情)も変化していきます。今回はアームスの作り方から上体の流れを変えるというお話です。

「上半身の眉毛=鎖骨」

上半身を顔の形に例えると、鎖骨はなんとなく「眉毛」のように思いませんか?ふわっと浮いた眉毛を端下がりに丸くすると柔らかい表情。逆に端上がりのきつい力が入ればしかめっ面、というように、鎖骨の持つ表情で体全体の雰囲気は大きく変わっていきます。

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イラストを見てもらうと分かるように、鎖骨は首、胸、腕の筋肉と、上下からも外からも引っ張りだこな存在となっています。それぞれが鎖骨を境に違う方向を向いているため、例えば腕の筋肉が極端に鎖骨を「引っ張る」力を入れると、他のものは「引っ張り返そう」と短く締まって固まります。
今回皆さんに感じて欲しいのは、この「鎖骨が筋肉によって引っ張られる」のではなく、「鎖骨自らが行きたい方向を決め、各筋肉を誘導する」ということになります。

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「脇の光で辺りを照らす」

まずは一番手強い「腕の上げ方」から見てみましょう。
腕の半袖位置に三角筋、上腕二頭筋といった強い筋肉があります。これらの「腕っぷしの力」で腕を上げると、鎖骨という小さな釣り竿で、腕という重い魚を釣り上げるような「引っ張る力」が入ります。鎖骨には出来れば「優しく腕を押し出す力」を入れたいところ。鎖骨は端に向かって下がっていく棒として、その先にある脇がデスクライトのような照明とイメージしましょう。
アームスを動かすときは鎖骨の棒で脇のライトを操り、優しい光で辺りを照らすようにしてみましょう。

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「胸骨は整った鼻すじ」

鎖骨が眉毛なのであれば、胸骨はさながら「鼻すじ」といったところでしょう。「鼻すじ」がスッと立ってこその「眉毛」のラインが整います。
今日の生活習慣から、手元の画面に顔を落として、胸は完全に下を向いている人が多く、顔を上げても胸が下に、奥に「締まったまま」という姿勢が増えています。
胸を張るときに「前に押し出そう」とすると、胸の筋肉が中心に向けて締まり、逆に胸の骨は奥へと押し込まれてしまいます。胸の骨そのものが、少し上目使いで空を見上げる方へ。そしてそこから鎖骨の眉尻を撫でるように下げ広げていく様にしてみてください。

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「全身が顔ならば良い」

今回ご紹介した感覚は、実は顔の表情も整える。そして動きの表現力を高めるテクニックとも言えます。
ポールドブラを付ける際に、鎖骨の動きと本物の眉毛の動きを揃える感じに動いてみましょう。首に上手な力が入り、腹筋を感じて体がもっと「動く気がする」はずです。
胸骨もそのものが「目。または内蔵カメラ」と考えて、見たい方向、向きたい方向に、本物の目より先に向けてみましょう。
エポールマンは、前から見ている人に対して、決まった形に収まるように頑張ると「無表情」な力が入る。大切なのは「どこを向いているのか」を見ている人に明確にすると、自然とラインも流れるように育っていきますよ。

次回は下半身の使い方へと続きます。

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>>> エクササイズ[ 21 ]「鎖骨体操&ストレッチ -エクササイズ-」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。


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あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。