藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第18回】伸びる腕!脚!~ピケで立つ~

前回に引き続き「ポワントの先にピケで立つ」ということをより奥深く。そして今回お伝えすることが意識できるようになれば、体も踊りも必ず変わっていくことをお約束します。

肘と膝は遠ざかる」

物を持って自分に引き寄せると腕は短く、そして曲がる方向に力が入る。逆に相手に差し出すように渡せば、腕は長く伸びようとする力を得ます。つまり、肘や膝が「体から遠ければ遠いほど、腕や脚は長くなる」という原理をお伝えします。

まずはテストをしてみましょう。写真のように両手を広げて、足は股関節幅で立ち、片方の脚を持ち上げてみて下さい。肘と膝の動きに意識を向けてみましょう。肘がギュッと締まる、上がる、後ろに引ける感じがしましたか?膝も同じく締まる、上がる。そして出すというよりは体に向かって「引ける」という感じがしたのではないでしょうか?

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試された人のほとんどがいずれか、或いは全て該当する感覚があったと思います。しかしこれは自然現象であり、決して何も間違いではありません。ただ行っていたアクションが「脚を上げる」ではなく「片足で立ってバランスを取る」になっていただけであり、「動く」より「止まる」を優先したことになります。

「さあ腕や脚を長くしよう!」


先ほどの写真を見てみると、肘や膝と共に、力が入って引けているものがあります。肩甲骨と股関節です。前ももと二の腕が急激に締まると短くなるのですが、それを付け根を支点に行ってしまうと、「肘や膝を引っ張り込んでしまう」ということになります。その力をもっと強く入れると、背中や首、お尻が歪んでしまうほど、肩甲骨や股関節は引けてしまいます。

胸の筋肉を優しく下げて広げて、二の腕は肘に向かって締めて出ていく。お尻も尾底骨と後ろポケットを優しく下げ広げて、前ポケットから膝へと出ていく力。すなわち「筋肉を伸ばそうとする力=遠心的収縮」によって、長い腕と脚でしなやかな踊り。肘と膝の骨を「丸い骨」と考えると、動きの中で丸が「キュウ〜!」と縮まるより、「フワァ〜」と膨らんで、遠ざかっていくイメージを持ってみましょう。

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「ピケアラベスク」

それではピケアラベスクで立ってみましょう。
ポワントでピケアラベスクに立つと、膝が曲がってしまうという現象がありますが、これはポワントの先を着く位置を考える必要があります。立つ直前にデュバーンに出している軸足。このポワントの先は、少し浮かせているのが自然だと思いますが、そのポワントの先に「今からポワントを差し込む穴」をイメージすることが大事です。レッスンを見ていると、浮いているポワントの真下、或いは更に手前に突いてしまう人がいますが、これは「膝や体がつんのめる」状態になります。僕の感覚からすると、45度弱に上げた先を意識するのが良いでしょう。

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第1アラベスクの腕に関しては、「前の腕は前!後ろの腕は後ろ!」と向けてしまいがちですが、後ろの腕に注意しましょう。肘を後ろに遠ざけると考えて出すと、肩より全然後ろに出してしまうため、腕が肩甲骨に寄る力が強くなってしまいます。残念ながら腕は関節の都合上「肩甲骨より後ろに折り畳めない」為、肩が向きを変えて「歪む」ことになります。又、前の腕も「手先が目線の先」と考えると、内に入りすぎている為、胸筋が締まって歪んでしまいます。
 

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これはイメージですが、「耳で聞こえる範囲」というラインを設定して、その先に肘を遠ざけるように出してみて下さい。また、「胸には一つずつ目が付いている」として、その目が親指の爪を見ているとしましょう。アラベスクに上げている脚や、軸足も同じく、「お尻に付いた目」で膝のお皿と、その先は「ポワントのソール部分」を見てみましょう。これで全ての腕や脚は、二の腕、裏ももを伸ばす感覚となり、背中は広がった状態に保つことができます。

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>>> エクササイズ[ 18 ]「仰向けスプリット(開脚)-エクササイズ-」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。