藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第13回】脚はちゃんと上がる(2)〜アラベスクにも上がる〜

前回のデュバーンとアラセゴンは、股関節より前方に脚を上げたのに対して、今回は後方に向けて上げるアラベスクについて、解説したいと思います。

「股関節の屋根」

腿の骨がはまっているソケット部の骨盤の形状が、斜め前向きに口を開いているので、前と横には脚は上がりやすいのですが、後方には骨盤が「壁または屋根」のように覆い被さっているので、骨盤を傾けない限り、脚は後ろに上がりにくくなっています。

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アラベスクに脚を長く、高く上げる。そして骨盤のラインをきれいに保つには、骨盤の屋根とももの骨を、いかにケンカさせないように脚を上げるかがポイントとなっています。

前回お話したように、どの方向に脚を上げるにせよ「持ち上げる」力を入れると、股関節に向かって脚を引き込む力が入ります。アラベスク時にこの力が最初に入ると、ももが屋根の下に刺さり込み、どんなに脚を上げようとしてもお尻ばかり上がる結果に終わります。

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従って脚、特に太ももは股関節から遠ざかる方向に「押し出し」て「すくい上げる」必要があります。写真を参考にしてみてください。

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そして順調に上がり始めた脚が90度に近づくに連れて、やっぱりももやお尻がムキムキしてきて、引っかかって上がらない!或いは、お腹やお尻が下がってしまう・・・という人もいると思います。これは脚の力が足りないとか、腹筋が弱い、というよりはお尻が強すぎるという方が適切だと思います。

お尻に「Yの字」を引きます。仙骨と腸骨を分けるライン、仙腸関節ということですね。このYを境界線とするパーツが、線の方に寄ってくるとお尻は固まって、脚よりもお尻そのものが上がってこようとします。お尻ポケットは持ち上げず、脚を「押し出す」ように使ってみましょう。丸いケーキを3等分したとイメージしてみてください。今回の「脚を上げること」だけに限らず、バレエの動き全体を通して、このケーキは隙間を保ってそれぞれがそれぞれの方向に向かっていると考えるのが良いでしょう。

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僕がお伝えしている「アルデンテお尻」は、お尻の割れ目を閉じないように使うことで、その効果を最大に発揮します。割れ目を締めるとお尻の穴は「引っ込む」方に動きますね?
皮膚の余りを出すためにある割れ目を開かないように締めると、脚は上がらなくなります。
お尻の穴が引っ込むと、腰は脚から逃げて、胴体を底からどこかへ突き飛ばす方に力が入ります。
お尻の割れ目は「ゆったりと保ち」、お尻の穴は「地面、或いは出している脚に向けている」感覚で、脚を上げてみましょう。

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>>> エクササイズ[ 13 ]「Roll Over&Scissors(ロールオーバー&シザーズ)」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。