藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第12回】脚はちゃんと上がる(1)〜ドゥバーンとアラセゴン〜

バレエをする人は様々で、脚がよく上がる人もいれば上がらない人もいます。股関節の作りや可動域に多少の個人差はあるとしても、どうして脚の上がり方にこのように差が出てしまうのでしょう?「どうすれば脚が上がるようになるか」を追い求めるより、「どうして脚が上がらないのか」を明確に知り、改善することで脚はちゃんと上がると思いますよ!

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「動き始めで決まる運命」

脚が上がらない大きな理由の一つ目は「脚、特に太ももを持ち上げようとしている」ことにあります。脚の浮き始めに股関節が腿を引っ張りあげる訳ですが、脚が低いうちは良し。しかし脚が90度以上に上がるとなると、股関節が腿より低い位置から引っ張り上げる。というのは無理がありませんか?
この「脚を持ち上げるシステム」では脚が上がってくる以上に、股関節がグイと上がって骨盤は傾き、その高さを超えようと必死で固まっている前腿は、力尽きて落ちていきます。これが「脚が重い」と感じる、そのように見える最大の理由です。
パッセ、タンジュ、ルルヴェなど、いかなる動きも「前腿を引く、脚を持ち上げる」ではなく「裏腿を押し出す、脚をすくい上げる」方向性で動き始めてみましょう。

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「山折り、谷折り」

理由その2は、「お尻が強く固まっている」可能性があります。
例えば折り紙のバレリーナの脚を上げるには、紙を折る必要があります。折り線には山折り、谷折りがあって「折り曲げなくてはならない箇所」が存在します。強く力が入ると折り目部分が金属のように固まって、折り曲げにくくなると、脚を上げるのは更に困難になるということです。

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尾骨、坐骨、大転子の使い方を考えてみましょう。3つともお尻と脚の筋肉を境にした、骨の出っ張り部分。「折り曲げポイント」です。全て力が入るときに「ギュウ」っと奥へ(骨盤の中へ)入り込むように締まると、筋肉が硬く集まって、折り曲げられなくなります。特に尾骨は「お尻の割れ目を開くのか閉じるのか」その使い方で運命は変わります。
それぞれの骨は「フワー」っと外へ(骨盤の外へ)膨らんでいくように。尾骨は坐骨へ向かう「人」という字を滑らかに描けるように。緩んだところから動き始めてみましょう。

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012_10.jpg 尻締めタイプ 012_11.jpg 尻上げタイプ

ここまで各骨の広がりが整えば、あとは脚の上昇に比例して重みを増していけばいいのですが、力の入れ具合が大事なので、使いやすいイメージでお話しましょう。

しっぽのイメージ=尾骨から生きたしっぽが生えています。神経が通り、自在に動かせます。まっすぐ地面に垂らして先っぽを土に埋めて、脚の上昇に伴い更に土の奥へ潜らせます。
毛先がフワリと柔らかく保つように。強く差し込むと、お尻が締まって下がります。

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「まとめ」

骨盤は広がりを保ってふっくらパン→アルデンテお尻
前腿より裏腿のスプリングを伸ばして→上質なプリエ
つま先はぐぐっとグーではなくフワっとパーで→つま先を伸ばす
そして脚は「引っ張り上げるもの」ではなく「すくい上げるもの」として扱いましょう!

デュバーンでは特に各骨の締め付けや上昇に気をつけて。アラセゴンは「真横に上げている」というよりは「上げ脚は前。軸足は後ろ」の方向性を少し入れてみてください。

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>>> エクササイズ[ 12 ] 「Mermaid マーメイド&バーに脚乗せストレッチ」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。