藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第5回】肩の力を上手に抜こう

「先生、どうしても肩に力が入ってしまいます。」というセリフをよく聞きます。
「力が入っている」と言うくらいですから、肩に直接「力を入れて」そうなっているのではないはずです。今回は「肩に力が入って上がってしまう理由」をいくつかと、その解決方法について語ります。

「理由その1 引き上げ過ぎに注意!」

まずはイラストをご覧下さい。

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要するに、肩より下のものを頑張って持ち上げようとすると、行き場を無くした肩は上に逃げるしかなくなる、ということです。

<問題1> 肋骨(胸郭)そのものが上がっている

これは「胃袋をキューっと引き上げよう」と頑張っているのでしょう。横隔膜の下に位置する胃袋をとにかく持ち上げようとすると、息を吸う時に下がるべき横隔膜の邪魔をします。肋骨=肺が上手に広げられず、あとは肩を上げて少量の空気を肺上部に取り込む形になります。

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<解決法1> 胃袋=紐付き風船のイメージ

胃袋が紐付きの風船だとします。「引き上げ」をする上で、この風船はダラっと下に沈んでいるより、上に昇ろうとしているという感覚は、決して間違いではありません。しかし問題は、胃袋が下にある腹筋や脚、そして地面とちゃんと繋がっているか?ということです。体の中心ラインで風船の紐が骨盤の底まで垂れているとします。風船をしっかり上昇させたら、次に紐を下端でピィーっと引っぱり下げます。上手くいくと、奥の腹筋が締まるのを感じられます。これは糸電話と同じで、風船と紐の下端が遠く張っているほど感じやすいです。これで胸郭は腹筋を土台にして少しリラックスできて、肩も緩みます。バランスも取りやすくなりますよ。(【第2回】すべての基盤となる「軸」を決めよう 参照

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<問題2> シャツが脇に向かって上がっている

今度はベルトのラインそのものを持ち上げて「腹や腰を引き上げよう」と頑張っています。体の側面で肉皮を脇に向かって持ち上げる感覚が、脇下で肋骨を緊張させてしまいます。肩甲骨を下げたり広げたりする筋肉を動かせなくなるので、やはり肩は上がってしまいます。要するにシャツを裾から引っ張りあげると、脇に向かってシワが溜まる、ということですね。

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<解決法2> 脇下の羽を広げる

脇下の肋骨部に小さな天使の羽根が生えていると想像してください。強く息を吐こう、脇を引き締めようと力を入れると、この羽は脇の方に小さく折り畳まれる感じがして、肩は上がってしまいます。息を吐く時はこの羽を、優しく斜め下に広げたり、腕を横から上方に上げていく時は、脇下で羽が展開されていくように考えてみましょう。しかしこの羽も、写真のロットバルトのように力強く上方に広げていくと、それはまた肩が上がる結果となりますので、あくまで優しく斜め下に広げましょう。

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「理由その2 やはり腕や首に力が入っている」

<問題3> 腕を筋肉の力で出そうとしている

腕をより長く、遠くへ伸ばそうとすると、腕の色々な箇所にググッと力が入っていると思います。この力の感覚は「筋肉の収縮(短く締める)」による、頑張ってる感です。筋肉とは関節と関節を結ぶものであって、それを収縮させるということは関節間を引き締めてしまいますから、腕は力を込めて短くしてしまっていることになります。

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<解決法3> 肉を出さずに骨を出す

腕を上腕、下腕、手の3つのパーツに分けます。それぞれがホイップクリームを搾る袋です。手先を闇雲に突き出す感覚は、クリームが出ずに先で詰まった状態の袋を、無理やり押し出そうとしている感じです。それに対して正しい感覚は、それぞれの袋を肩側からきれいに搾ってクリームを出している感じになります。できればクリームの出口は、指先ではなく手のひらの中心辺りを感じてみましょう。筋肉と骨が競走をしているとすれば、骨の方が優位に立っている方を目指しましょう。

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今回、紹介しきれなかった項目として「足が床を上手に押せていない」「首の力の向きがおかしい」などが上げられますが、それらはまたプリエの解説をする機会にお伝えします。
最近では特に、ずっと腕を中途半端に持ち上げたまま、指を酷使して画面を見つめ続けることが多く、肩の力を抜くことが難しくなっています。肩の上手な力の抜き方を見つけて、優雅な踊りを披露できるようになってほしいと願います。

 


>>> エクササイズ[ 5 ] 「Floor Arms(フロアーアームス)」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。