藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第3回】つま先を伸ばす

バレリーナとして誰もが求める「きれいなつま先」。足首の伸びる伸びないは才能でしょうか?力いっぱい頑張って伸ばしたものが限界なのでしょうか?もっと伸びる足を手に入れることはできるのでしょうか?使い方ひとつで良くも悪くも変化していく「つま先の伸ばし方」、中でも趾(あしゆび)の使い方について、お話したいと思います。

「バレリーナの足の形を考え直す」


バレリーナの足の形といえば、やはり細くて尖った「面相筆」を想像するでしょう。反対に平たく先の広がった「平筆」は間違っていると考えてしまいます。しかし実は、この面相筆のように単純に足全体をギュッと細くする、趾(あしゆび)を強く束ねて丸める、という力は、長く使い続けるとだんだん足首まわりの皮が固くなり、やがて伸びなくなっていく足を育ててしまうので、注意が必要です。

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「趾を丸めて縮めるグーはNG」

5本の趾を持ち上げると、足の甲に5本の筋が浮かびますね。同じように足の裏にも、筋肉に埋もれていて確認し辛いですが、5本の筋があります。趾を強く折り曲げて「グー」にしてしまうと、足裏の筋はかかとの方に引っ張られて、足裏の筋肉は動けないカチカチ状態になります。実は足の甲側の筋も、それに応えるように足首に向けて萎縮してしまうのです。これでは「つま先を伸ばす」というのには程遠く、逆に「足全体を小さく丸め込もうとして縮めている」ということになります。それに加えて、趾を強く結んでグーにする力は、箒(ほうき)の形をした中足骨をお互いに寄せて束ねようとする力も入れてしまう為、更に足全体はカチカチになり、ルルヴェやプリエ時に安定感をなくしてしまいます。

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「やはり趾はパーに広げて伸ばす」

足の裏表の5本の筋とは別に、母趾(親ゆび)と小趾(小ゆび)の外側からかかとに掛けて、趾をパーに広げる母趾外転筋小趾外転筋という筋肉があります。趾を「パー」に広げることで力が入り、足の両サイドで強い柱となってくれます。これらの筋肉はくるぶしの真下で強靭な土台となるため、ルルヴェや他のどんな姿勢でも、足首を安定させてくれます。足首がグラグラで、すぐに捻挫しそうな方向に倒れやすい人は、この力が弱いからである。といっても過言ではないと思います。
先ほどの5本の筋も、この両方の外転筋を入れることで間隔を広げてくるので、更に柔軟性の高い、よく伸びる足の甲を作ってくれます。

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「さあよく伸びるつま先を手に入れよう」

それでは最後につま先の伸ばし方です。考えるべき要点は、趾を寄せ束ねずに、全開でパーでなくても広げようとしていること。足首から先の形と、力の入り具合のイメージは「毛を逆立てて背中を丸くしている猫」ではなく「獲物に飛びかかろうとしている猫」です。あとは画像を見ていただいた方が分かりやすいと思いますので、参考にしてください。

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足首から先の関節は、もともとよく伸びる、伸びないの個人差は多少あるとは思いますが、使い方や考え方を変えることで、節々が徐々に広がっていき、伸びる足へと変化していきます。現時点の自分を「体が硬いから」「やっぱり伸びない」と諦めてしまわずに、長い目で見て「変わっていける」と信じてください。僕も「足を伸ばす」ということにはコンプレックスを感じていました。そのころと比べると随分よく伸びて、更に「つま先を伸ばして」と注意を受けないようになりました。
覚えていてください。足からの立ち方ひとつで、全身の形も筋肉の質も変わってきます。

 


>>> エクササイズ[ 2 ] 「あしゆびパー」

 

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。