藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第2回】すべての基盤となる「軸」を決めよう -エクササイズ-

エクササイズ[ 1 ] 「Breathing(呼吸)」

「いい呼吸=いい踊り」

生まれた瞬間より絶やすことなく繰り返し行ってきた「呼吸」。それ故に「どのように呼吸するか」「どれくらいできているか」をあまり追求しようとしません。呼吸はそのやり方によって、その人の体の性質や、心にまで大きな影響を及ぼします。人は必ず、それぞれの呼吸法にクセや偏りを持っていて、長く続けていると修正するのが難しくなります。誰もが小学校に上がったら、国語よりもまず「呼吸法」を学ぶべきだと、僕は思います。

また、呼吸を上手にすることで肺活量が上がりスタミナは向上しますし、全身の柔軟性もよくなります体の音楽性を統合させるのにも、いい呼吸が必要になります。

「呼吸のエクササイズ」

エクササイズとは言っても、とにかく大きく深呼吸をすることです。立っていても座っていても、寝ていても構いません。肺だけでなく全身が膨らむほど大きく吸い、全身の空気を抜き切るように大きく吐きます。吸う吐くのどちらをするにしても、強く勢いよく行わずに、長く緩やかにしましょう。例えば1カウントで「吸ッ!吐ッ!」ではなく、4カウントまたは8カウントで「吸〜2〜3〜4〜、吐〜2〜3〜4〜」と安定した深呼吸を目指してください。もし歩いている時に練習するのであれば、歩数をカウントとして数えると分かりやすいでしょう。

呼吸の奥深さを説明するには、一冊の本にしても足りないくらいなので、今回は食道・胃袋・腸の軸ラインの感覚と動きを良くする、というポイントに焦点を当てます。

「鎖骨・肋骨・骨盤を締め過ぎないで」

軸の3つの玉を包んでいる体の外周を、できるだけ緩やかに保って、大きく呼吸しましょう。
食道は鎖骨=蝶ネクタイ、胃袋はみぞおち=ブラのストラップ、腸は下腹部=低めのベルトです。
力の入り過ぎた呼吸は周りの筋肉を固めてしまい、軸を強いゴムで縛り付けてしまいます。例えば息を止めて、脇を強く締めてみてください。鎖骨も肋骨もガチガチになって、中の胃袋などは「動くなっ!」と言わんばかりに固まりませんか?胃袋は体の中で、右の方に寄っている、前の方に突き出ている、背骨の方に引き寄せている、などある程度動きを感じられるようにしてみてください。

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(1)蝶ネクタイを緩める

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鎖骨中心の繋がり目を、下向き「ハの字」に広げる。特に吸う時に上がって強く締まりそうになるので注意。吐く時には「ちくわ」一本通せるぐらいの隙間を広げるイメージで。

(2)ブラのフックを緩める

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みぞおち、肋骨前部のハの字部をやはり締め付けずに、優しく広げていくイメージで呼吸してみましょう。しかしみぞおちを前に広げていってしまうと、今度はブラのフック部分が背面で締まってしまうので、こちらも「ちくわ」一本分の隙間を保つイメージで緩めましょう。

(3)ベルトを緩める

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こちらは、腰のくびれの一番大きいおへそラインではなく、前の腰骨を横線で繋いだラインを意識します。やはり吐くときに腹筋を固めていく感じを出さずに、緩めて遠ざけていくようにします。これも「腹を出していく」ということではないので、背面でベルトが締め上がっていかないように注意してください。


バレエは激しい運動を伴う芸術なので、すぐに息が上がってしまいます。踊っていて「つらい」「大変」「難しい」という思いは、ケガや故障による痛みで脚が動かないなどではない限り、その理由のほとんどは「息切れ」によるものだと思います。頑張って体を動かしても呼吸の方法を知らずに、筋肉への酸素供給が間に合わないのでは、長い踊りは体力が保ちません。しっかりと呼吸を練習して、優雅に踊れる体を作りましょう。

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(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。