荒部 好

『Bejart---愛、それはダンス---』

 モーリス・ベジャールが振付けた愛を踊ったダンスを集めた『Béjart ~愛、それはダンス ~』のDVDが刊行された。
 さすがベジャール。ベジャールが振付けた<愛に関するダンス>、ではなくて、ベジャールが振付けた<愛を踊るダンス>がつぎつぎと登場する。

 まず、冒頭は『春の祭典』。言わずと知れたベジャールがセンセーションを巻き起こした20世紀のダンスの傑作である。まさに<ラ・ムール--ラ.ダンス>。イゴール・ストラヴィンスキーの著名な曲から、カップルが愛そのものを踊るダンスを発想する、という才能。多分、これを天才というのだろう。

 そして『ロミオとジュリエット』。シェイクスピアのこの作品自体が、青春の愛と死のドラマの結晶を描いている。白い衣裳のカップルがじつに美しい~それは死に至る愛の美しさである~パ・ド・ドゥを踊る。初演は1966年、ブリュッセルのシルク・ド・ロワイヤルだが、翌年、アヴィニヨンのフェスティバルで上演され、大きな評判を呼んだ。機関銃の乱射音にかぶせて、「戦争を止めて、恋をしよう」というメッセージを流したことは有名である。音楽はベルリオーズ。

 チャドの伝統音楽を使った『へリオガバルス』、そして来日公演ではショナ・ミルクとジョルジュ・ドンが踊った『わが夢の都ウィーン』。裸のエンジェルが登場したことも思い出す。そして、聴いただけで踊り出したくなる、テオドラキスの音楽が流れる『ギリシャの踊り』である。肩を組んだ波のような踊り、カップルの衣裳のブルーはエーゲ海の色か。これは、ミッシェル・ガスカールが踊った。こうして一曲一曲辿っていくと、まるで老人の繰り言のようになってしまう。

 さらに、『カスタ・ディーヴァ』『バレエ・フォー・ライフ』ほかが踊られ、ジル・ロマンも登場する。ジョルジュ・ドンなき後、ベジャールのカンパニーを支え続けてきたジル。恐らく、ほとんどのベジャール作品を知り抜いているジル・ロマン。彼がこの天才の数々の作品を後世に伝えてくれるだろう。



「ベスト・オブ・モーリス・ベジャール~愛、それはダンス~」
発売元:
株式会社WOWOW
販売元:
株式会社ポニーキャニオン
¥5,250(本体価格¥5,000)